環境方針とマネジメント体制
基本的な考え
小林製薬では、経営理念をもとに環境保全活動を一層充実させるため、2001年12月に「小林環境宣言」「環境行動指針」を策定してグループ全体で共有し、環境保全に関する意識向上に取り組んできましたが、パリ協定やSDGsなど、近年の気候変動・地球環境に関わる国際的な潮流を鑑み、2019年2月に、「小林製薬グループ 環境宣言2030」「新・環境行動指針」として改訂しました。企業としての課題解決に対する姿勢を社内外に向けて明確に示すことで、環境活動を強力に推進するための旗印とし、持続的成長に向け取り組みます。
小林製薬グループ 環境宣言2030
小林製薬グループは、人と社会に素晴らしい「快」を提供する企業です。私たちは、豊かな自然や地球環境の支えがあるからこそ、お客さまの“あったらいいな”をカタチにしてお届けできる、と考えています。
私たちは、お客さま、お取引先様、地域社会の皆様とも力を合わせ、地球温暖化防止や資源・生物多様性の保全など、世界共通の環境課題に真剣に向き合い、解決のためのアイデアを出して実行し続けます。
新・環境行動指針
1法令遵守及び主体的・積極的な課題設定とPDCA
各事業分野における環境に関連する法規制や協定を遵守するだけでなく、自ら積極的に課題を設定し、中長期での環境目標・環境基準を定めて、アイデアを出しPDCAを実行します。
2気候変動への対応
気候変動が事業を行う上での重要なリスクであることを認識し、事業の各段階において、エネルギー利用の効率化や再生可能エネルギーへの転換などを含む温室効果ガスの削減施策を実行します。
3資源・生物多様性への配慮
地下資源や生物資源、水資源などの枯渇、汚染、その他の環境負荷を低減するため、事業の各段階における省資源化、資源の代替、生物多様性への配慮を行います。
4廃棄物の削減とリサイクル、化学物質の適正管理
事業の各段階から発生する廃棄物について、積極的にリサイクルを行い、廃棄物の量的削減・リサイクルレベルの向上を行います。また、研究開発や製造に使用する化学物質を適切に管理します。
5環境配慮製品・サービスの開発と提供
製品・サービスの設計・調達・製造・使用各段階で、環境負荷を低減するための指標・基準を設け、環境配慮製品の開発を積極的に推進します。また、お客さまにとっての新しい価値と、環境価値との同時実現に努めます。
6サプライチェーン全体での取り組み
調達基準を設定し、お取引先様を含むサプライチェーン全体での取り組みを推進します。
7行動指針の共有及び環境意識の向上
この指針を経営者・全従業員で共有し、取り組みや教育・啓発活動を通じて、一人ひとりの環境保全意識の向上に努めます。またこの指針に基づく目標・取組内容と達成状況についてはステークホルダーの皆様に積極的に開示します。
気候変動への対応(TCFDフレームワークに基づく開示)
当社では、ESGテーマの中でも気候変動対応を最重要課題と捉えています。2019年に賛同したTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言を踏まえ、シナリオ分析に着手し、以下の枠組みで取り組みを進めています。
ガバナンス
当社では、専務取締役を委員長とするグループ環境委員会内に「気候変動対応タスクフォース」を設置しています。
プラスチックやGHGの削減目標の設定、削減施策の検討、進捗状況のモニタリングなどは同委員会内のCO₂排出削減ワーキンググループにて行っています。
それらの取り組み方針・計画及び進捗は会議体で審議・報告され、取締役会の指示を受けています。
戦略
2022年のシナリオ分析においては、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに1.5℃に抑える努力を追求する」というパリ協定の目標の達成と脱炭素社会の実現を見据え、1.5℃シナリオを検討しました。さらに世界的に気候変動対策が十分に進展しない場合も想定して、4℃シナリオも検討し、当社における気候変動リスク・機会を更新し、財務影響度を算定しました。結果について2022年に経済産業省が公表した「TCFDガイダンス3.0」に沿って、以下の通り整理しました。
全社
日用品事業部、ヘルスケア事業部
今後は各リスク、機会の対応策の更新、さらなる機会の創出を行っていきます。
リスク管理
気候関連リスクを含むすべてのリスクは、代表取締役社長を委員長とするリスク管理委員会にて、影響度と頻度の観点で評価しています。
経営が関与しながら低減に取り組むべき中長期的なリスクについては、「全社重点リスク」として選定し、リスク低減プランの承認や進捗管理を行うとともに、取締役会へ報告しています。
指標と目標
当社は、2030年までに、グループ全体のGHG排出量(基準年2018年)をScope1,2は51%、Scope3は15%削減する目標を設定しました。※
上記目標については、SBTイニシアティブの認定を取得済みです。
- Scope1,2,3とは
Scope1:事業者自らによる直接排出
Scope2:他社から供給された電気などの使用に伴う間接排出
Scope3:Scope2以外のすべての間接排出
ライフサイクル全体で環境負荷を低減
事業活動全体を通した、環境負荷低減
企業活動においては環境への負荷が避けて通れません。
これを最小限に抑えるために、小林製薬グループでは開発から製造、販売、廃棄に至るライフサイクルの各段階でどのような環境負荷があるかを特定し、それぞれの段階で資源の有効活用やエネルギー削減、廃棄物削減などに取り組んでいます。
内部環境監査を徹底
環境マネジメントシステムにおけるチェック機能の要として、内部監査体制を整えています。各工場においては半年に1回、内部環境監査員による監査を実施しています。
また各部門の担当者による監査も定期的に実施し、問題が見つかれば速やかに対策を講じ改善しています。
マネジメント体制
環境マネジメント体制を強化し、小林製薬グループ全体として中長期的なあるべき姿や環境課題の見直しなどを検討すべく、2018年にグループ環境委員会を充実させ、議論を開始しました。2024年からはサステナビリティ委員会を設置し、環境に関しては、その中の下部組織の一つとして「環境推進会議」として活動を行っています。 サステナビリティ戦略推進部が環境推進会議の事務局として、PDCAの強化やワーキンググループの支援を行っています。
環境管理体制図
サステナビリティ経営を推進し、社会と当社のサステナビリティの同期化を追求
サステナビリティ戦略推進室は、2023年1月に新設されました。過去2年間は経営企画部の中の一部門でしたが、サステナビリティ経営をより強力に推進し実行するために専務取締役直轄部門として権限を拡大し始動しています。
当社は、ESGのうち「E(環境)」から先行して取り組み、2018年に「グループ環境委員会」を設置してサステナビリティ経営を推進してきました。
当社全体のGHG排出量の算定、SBTに基づいたCO2排出量の長期削減目標の設定と認定の取得、環境配慮資材への切り替え、オリジナルエコマーク制度「小林製薬 製品開発エコ基準」の運用開始、生物多様性の保全の方針、化学物質管理ポリシー、水資源の管理に関する定性目標の策定と開示、CDPへの情報開示等の活動を進めてきました。
一方で、新中期経営計画(2023-25年)で掲げている「未来の小林製薬の基盤をつくる」ためには、サステナビリティ経営のさらなるステップアップが必要です。2023年に刷新した「マテリアリティ」に基づき取り組みを加速させるには、社会のサステナビリティと小林製薬のサステナビリティの「同期化」※を意識した戦略を企画立案していくことが重要だと考えています。
今後、マテリアリティに基づく各施策をグループ全体に展開し、PDCAを強化、統一させることを目的に、2024年に「サステナビリティ委員会」を設置することを目指して準備を進めています。
今後もサステナビリティ経営を推進するために、社会と当社のサステナビリティの同期化を追求していきます。
サステナビリティ経営本部
サステナビリティ戦略推進部
部長 中村 仁弥
イニシアティブへの参画
他企業・団体と協働して気候変動問題に取り組むことを目的として、2018年10月に「気候変動イニシアティブ(JCI)※1」に、2019年9月に「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)」に加盟しました。2018年11月には、「SBTイニシアティブ(Science Based Targets Initiative)※2」に対して、長期削減目標を設定することを宣言しました。2022年SBTイニシアティブの認定を取得済です。
小林製薬では、「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)※3」の提言へ賛同表明し、2019年に「TCFDコンソーシアム」に参画しました。同年に、気候変動リスク・機会に対応する管理を目的に、グループ環境委員会内に「気候変動対応タスクフォース」を設置し、複数の気候変動シナリオをもとに当社における気候変動リスク・機会の精査を実施しました。その結果、温室効果ガス関連規制、一部製品群における需要減少、原材料価格の高騰がリスクとなることが判明しました。一方、天然原料の収量増加、暑さ対策製品の需要増などの機会を特定しました。
今後、各リスク・機会への対応を適切に実行していきます。
外部からの評価
CDPは世界的な環境情報開示システムを運営する国際環境非営利団体で、企業に対して環境情報の開示を求めています。当社は、2019年より「気候変動」「水セキュリティ」、2021年より「フォレスト」の回答を開始しました。
2022年は、「気候変動」においてスコア「B-」(2021年)から「B」に向上しました。「水セキュリティ」は「B」、「フォレスト」は木材、パームともに「C」となりました。
今後も環境情報の積極的な開示を行い、CDPのスコアレポートをもとに自社の課題を見える化し、改善に向けてのPDCAを回していきます。
気候変動 | 水セキュリティ | フォレスト | |
---|---|---|---|
2019年 | C | B | — |
2020年 | C | B | — |
2021年 | B- | B | 簡易回答 |
2022年 | B | B | 木材C パームC |