ニュースリリース

レポート

お腹の脂肪を落とす漢方薬“防風通(ぼうふうつう)聖散(しょうさん)”に
余分な脂質を便と一緒に押し出す効果を新発見

小林製薬株式会社(本社:大阪市、社長:小林章浩)は、名古屋市立大学薬学部(牧野利明 教授)および愛知学院大学薬学部(井上 誠 教授)との共同研究で、肥満症に用いられる漢方薬“防風通聖散”に、余分な脂質を便と一緒に押し出す効果を発見いたしました。本研究成果は英国科学誌『Journal of Ethnopharmacology』に掲載されました(3月24日付オンライン掲載)。
本成果は、小林製薬の内服医薬品に活用してまいります。

研究の概要

年齢とともにお腹の脂肪は落ちにくくなります。現在、中年男性の3人に1人が肥満といわれており、特にメタボリックシンドロームの原因となる内臓脂肪型肥満への関心は、今なお高い状態が続いています。肥満の改善は食事や運動が基本となりますが、これらを継続して取り組むのは難しく、なかなか効果が上がらないのが実情です。
防風通聖散は18種類の生薬からなる漢方薬であり、お腹の脂肪を落として肥満症を改善する医薬品として利用されています。その作用メカニズムは、脂肪細胞を活性化することで、お腹についてしまった脂肪を分解・燃焼する事が明らかとなっています。また、防風通聖散には便秘改善作用もあり、便通が良くなる効果が期待できます。
今回の研究では、防風通聖散を摂取した時の“便”に着目し、脂質やコレステロールの排出量が増加していることを初めて発見しました。

図1 防風通聖散の肥満症改善メカニズム

?脂肪細胞を活性化し、お腹についた脂肪を分解・燃焼する。
?食事によって体内に取り込まれた脂質の吸収を抑制する。
?便通促進作用で脂質を便と一緒に押し出す。

防風通聖散の肥満症改善メカニズム

今回の発見により、防風通聖散は脂肪を分解・燃焼するだけでなく、食事から取り込まれた脂質を便と一緒に押し出すことで、お腹の脂肪を落としていくことが分かりました(図1)。防風通聖散の便通改善効果は効き目のサインにもなり、体重管理に取り組むきっかけに繋がるものと考えられます。

研究の方法

高脂肪食で飼育した肥満マウスに防風通聖散を4%配合した飼料を与えると、体重および内臓脂肪の減少が認められます(図2)。本研究ではこの肥満マウスの糞便を採取し、脂質排泄量およびコレステロール排泄量について評価しました。

防風通聖散による抗肥満効果

図2 防風通聖散による抗肥満効果

試験方法:
肥満マウスを防風通聖散を配合した飼料で4週間飼育し、体重を記録した。内臓脂肪はCT撮影にて測定した。
グラフは平均値±標準誤差で示した。

研究結果

1.防風通聖散は糞便量を増やす
採取した糞便を乾燥し、重量を測定しました。飼育期間中に食べた餌の量に対する糞便量を算出したところ、防風通聖散を投与したマウスで糞便量が増加していることが分かりました(図3)。
漢方医学において肥満は「食毒」が体内に停滞している状態と考えられており、防風通聖散はその毒を排出するものと考えられています。
肥満状態において停滞する栄養素は脂質やコレステロールと考えられるため、次に糞便中のこれらの量について測定しました。

防風通聖散による糞便量の増加

図3 防風通聖散による糞便量の増加

試験方法:
採取した糞便を乾燥後、重量を測定した(摂餌量で重量を補正)。グラフは平均値±標準誤差で示した。

2.防風通聖散は便中への脂質およびコレステロールの排泄量を増やす
糞便より脂質を抽出し、脂質量およびコレステロール量を測定しました。その結果、防風通聖散を投与したマウスでは糞便中の脂質量が最大で146%、コレステロール量が159%に増加していました(図4)。また、この効果について詳しく調べたところ、腸管からの脂質の吸収阻害によるものと考えられました。

防風通聖散による便中への脂質排泄促進効果

図4 防風通聖散による便中への脂質排泄促進効果

試験方法:
採取した糞便を乾燥後、脂質を抽出し、脂質量およびコレステロール量を測定した。
平均値±標準誤差で示した。

以上の結果から、防風通聖散がお腹の脂肪を落としていく効果には、食事によって取り込まれた脂質を便と一緒に押し出す作用も関与することが明らかとなりました。

用語解説

防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
防風通聖散は、トウキ、シャクヤク、センキュウ、サンシシ、レンギョウ、ショウキョウ、ボウフウ、マオウ、ダイオウなど、18種類の生薬から構成される漢方薬である。主に肥満症の改善を目的に処方され、医療用医薬品のみならず一般用医薬品としても広く用いられている。

○メタボリックシンドローム
ウエストサイズが男性85cm、女性90cmで、高血圧、高血糖、脂質代謝異常の3つのうち2つ以上に当てはまるとメタボリックシンドロームと診断される。メタボリックシンドロームでは、糖尿病や動脈硬化による循環器疾患や脳血管疾患などのリスクが高まることが明らかとなっている。

以上

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