女性の生涯においてターニングポイントである更年期には、これまで感じたことのない心の変化に直面し、戸惑うことがあります。気分の浮き沈みや突然の不安感といった心の不調の背景には、更年期に伴うホルモンバランスの変化が深く関係している可能性があります。
今記事では、更年期の心と体の変化に関する正しい知識や対処法を解説します。自分の努力ではどうにもならない更年期を、自分のペースで乗り越えていきましょう。
※弊社から石原先生に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。
更年期の女性には、次のような心の症状があらわれることがあります。
更年期によって起こる症状は、自律神経失調症状(ホットフラッシュや肩こり、めまいなど)、精神的症状(情緒不安定、イライラなど)、身体的症状(腰痛、消化器症状、皮膚粘膜の乾燥など)の3つに分けられます。
大きな病気や理由がないのに情緒不安定な状態が続くのは、更年期に伴う精神的症状の1つとしてあらわれている可能性があります。
更年期の症状が重く、「外出が難しい」「仕事に支障がある」など、日常生活に影響が及ぶ場合は、医療機関で「更年期障害」と診断されます。
更年期には、閉経に伴う女性ホルモンの急激な減少によりホルモンのバランスが崩れ、心や体に様々な不調、つまり更年期の症状が引き起こされると考えられています。
とくに女性ホルモンは、脳内の神経伝達物質を正常にコントロールする働きを担っています。しかし、女性ホルモンが減少すると、神経伝達物質が正常に働かなくなり、情緒不安定や不安感などをはじめとする心の不調が起こりやすくなるといわれています。
また、更年期の時期に重なる環境・社会的要因も、心の不調に深く関わっているとされています。
たとえば、親の介護や死別、夫・パートナーとのすれ違い、子どもの不登校・反抗期などによる家庭内での役割の変化による戸惑い、職場での社会的立場の変化や対人関係などは、更年期の女性のストレス要因になりやすいと言われています。これらの要因が重なり合うことで更年期の不調を発症しやすくなります。
情緒不安定は更年期によるものだけでなく、別の病気が原因になっていることもあるため、注意が必要です。情緒不安定になる病気はいくつかあり、代表的な病気を解説します。
表:情緒不安定になる病気
| 月経前症候群(PMS) | 月経前に周期的にあらわれる心身の不調のことです。情緒不安定やイライラ、抑うつ、不安、不眠などの心の症状やのぼせ、偏食・過食、めまい、倦怠感、頭痛、腰痛、腹痛、むくみ、便秘、おなかや乳房の張りなどの体の症状が、月経前に3~10日間くらい続く病気です。しかし、月経が始まると症状が軽快・消失するという特徴があります。更年期前半の月経がある時期の女性でも発症する可能性もあります。 |
|---|---|
| 月経前不快気分障害(PMDD) | 上記のPMS症状のうち、とくに心の症状が重く日常生活に支障をきたしている場合はPMDDと診断されます。 |
| パニック障害/パニック症 | パニック障害とは、体に異常がないにもかかわらず、パニック発作(動悸、呼吸困難、死の恐怖など)が繰り返し起こる病気です。次のパニック発作の出現に不安を感じ、外出などの日常生活に支障をきたします。 |
更年期には、ホルモンの急激な変化によって一時的に情緒不安定になることがあります。しかし、症状が重い場合は別の病気の可能性もあります。それぞれ専門的な治療が必要になるため、「更年期のせい」と自己判断せずに医療機関を受診し、医師に相談するようにしましょう。
更年期の情緒不安定に対しては、まず更年期に伴う心と体の変化を理解し、自分自身をいたわることが大切です。更年期以降の人生を自分らしく、前向きに生きていくためにも、今一度立ち止まって、生活リズムを整え、無理をしすぎないように環境を整えましょう。家族やパートナーなど、信頼できる周囲の人の理解と協力を得ることも大切です。
日常生活では、十分な休息と睡眠を取るよう心がけ、疲れた心と体をいたわりましょう。
ウォーキングや軽いジョギングなどの運動でリフレッシュすることも、心の不調を改善する効果が期待できます。無理のない範囲で取り入れましょう。
更年期の不調には漢方薬を試すのもおすすめです。漢方薬のなかには、更年期障害をはじめ、女性特有の心身の不調に効果が期待できるものがあります。
漢方医学では、更年期障害は「気・血・水」のバランスが崩れることで起こると考えられています。「気」とは体と精神の活動に必要なエネルギー、「血」とは体をめぐり、栄養や老廃物を運ぶ血液、「水」とは不要なものを排出する体内の水分のことを指します。漢方薬は、この「気・血・水」のバランスを整えることで、症状にアプローチします。
表:更年期の情緒不安定な心の不調に用いられる漢方薬
| 加味逍遙散 (かみしょうようさん) |
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|---|---|
| 半夏厚朴湯 (はんげこうぼくとう) |
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| 抑肝散 (よくかんさん) |
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漢方薬を効果的に使うためには、自分の体質や状態に合わせて選ぶことが大切です。漢方薬剤師などの専門家に相談し、自分に合った漢方薬を選びましょう。ただし、これらのセルフケアを行っても症状が改善しない場合や悪化している場合は、医療機関を受診しましょう。
更年期に悲しくなるのは、女性ホルモンの急激な減少が主な原因です。これにより脳の神経伝達物質の働きが乱れ、情緒が不安定になります。また、親の介護や子どもの独立といった環境の変化によるストレスが重なることも影響します。
更年期の心と体の変化を受け入れ、自分をいたわることが大切です。症状を落ち着かせるためには、生活リズムを整え、十分な休息と睡眠、適度な運動を心がけましょう。1人で抱え込まず、周囲の理解を得たり、漢方薬でセルフケアをしたりすることも有効な対処法です。
更年期は、女性ホルモンの急激な変動と、生活環境の変化によるストレスが重なり、気分の浮き沈みや不安感など心の不調があらわれやすい時期です。この変化の時期には、症状を受け入れ、自分をいたわることが大切です。
不調を感じたときは、生活習慣を見直し、十分な休息と適度な運動を取り入れたり、漢方薬でセルフケアを行ったりすることで改善が期待できます。ただし、別の病気が隠れている可能性もあるため注意が必要です。セルフケアで改善が見られない場合、日常生活に支障をきたすほど症状が強い場合は専門の医療機関を受診してください。