その『関節痛』『筋肉痛』
更年期が原因かも?
原因と対処法

『関節痛』 イメージ写真

体調が不安定になりやすい更年期には、これまでに経験したことのないカラダの不調を経験することがあります。カラダの節々や筋肉が痛んだり、こわばったりする症状もその1つです。

周囲にもなかなか理解されにくく、つらい症状をがまんして、仕事や家事を何とかこなしているという方もいるかもしれません。

今回は、更年期に起こる関節痛・筋肉痛の症状や原因、対処法を解説します。

※産婦人科の高尾先生に監修を依頼し、いただいたコメントを編集して記載しています。

更年期における
関節痛・筋肉痛の症状

更年期になると、ケガや大きな病気などがないにも関わらず、関節痛や筋肉痛の症状があらわれることがあります。

たとえば、朝の起床時に手がこわばったり、指先がしびれたりといった感覚の異常が見られたり、手が握りにくいなどの手指の関節に違和感が生じる方もいます。手首や肘、肩、腰、膝、足首、かかとなど、全身に関節痛が起こることもあります。そのほか、全身に筋肉の痛みが出る場合もあります。

症状がひどくなると、「荷物が持てない」「椅子から立ち上がるときが痛い」「階段の上り下りがつらい」など、日常生活に影響が出ます。

更年期によって起こる「更年期症状」は、大きく分けて自律神経失調症状(ホットフラッシュや肩こり、めまいなど)、精神的症状(情緒不安定、イライラなど)、身体的症状(関節痛、筋肉痛、消化器症状、皮膚粘膜の乾燥など)の3つに分けられます。関節痛・筋肉痛の症状は、更年期に伴う身体的症状の1つです。

更年期症状の程度がひどく、「外出ができない」「仕事に行けない」など、日常生活に支障をきたす場合は医療機関で「更年期障害」と診断されます。

更年期症状として、関節痛や筋肉痛があらわれることは、あまり知られていませんが、更年期障害を有する人の約半数が、手のこわばりや関節痛などの症状を経験するといわれています

更年期における
関節痛・筋肉痛の原因

更年期障害は、閉経に伴う女性ホルモンの低下が主な原因といわれています。しかし、更年期の関節痛・筋肉痛の症状と、女性ホルモンの低下の関連について、すべては解明されていません

これまでの研究で、更年期の女性に女性ホルモンを補う治療をしたところ、関節痛や筋肉痛などの症状が改善するケースがあると報告されていることから、これらの症状の発生には女性ホルモンの低下が影響していると考えられています。

また、女性ホルモンの低下に伴う、関節軟骨の変化やカラダの水分の循環の滞りが関節のむくみや腫れに関係しているのではないかとも考えられています。そのほか、痛みの感覚は女性ホルモンと密接な関わりがあり、女性ホルモンの低下が痛みを誘発することで、関節痛や筋肉痛が生じやすくなっている可能性もあります。

関節痛・筋肉痛が起こる病気

関節痛や筋肉痛の症状は、更年期とは関係なく起こる場合もあります。以下の病気は、手指や膝、全身の関節痛・筋肉痛を引き起こす代表的な病気です。

表:関節痛・筋肉痛を引き起こす代表的な病気

変形性膝関節症 加齢や関節の酷使によって、膝の軟骨が減って、痛みや腫れが生じる関節の病気。高齢者に多い
へバーデン結節 指の第1関節が変形して痛む病気。中年の女性に多い
慢性関節リウマチを主とした膠原病
(こうげんびょう)
自己免疫が関節の細胞を攻撃してしまうことで炎症や痛みを引き起こす病気。中年の女性に多い

更年期は、変形性膝関節症やへバーデン結節などの関節の病気や、リウマチなどの膠原病を発症しやすい時期でもあります。医療機関を受診して、更年期障害としての症状なのか、それ以外の病気によるものなのかを鑑別し、それぞれに合った治療を行うことが大切です。

関節痛や筋肉痛の症状が続いている場合は、「更年期のせいだろう」と自己判断はせず、医療機関を受診し、医師に相談しましょう。

更年期の関節痛・
筋肉痛の対処法

適度な運動によって関節痛が和らぐという報告もあり、適度なストレッチやウォーキングなどを始めましょう。寝る前や起床時のストレッチも効果的です。首のストレッチをはじめ、肩関節のストレッチ、足の指のストレッチなどを取り入れ、血行をよくすることも大切です。

また、更年期の関節痛や筋肉痛の症状には、カラダの冷えが大敵です。38~39℃のお湯で半身浴をすることでカラダがあたたまって血流がよくなり、関節痛がおさまることもあります。お気に入りのアロマオイルでマッサージし、こわばった関節や筋肉のまわりをほぐすのもいいでしょう。

ストレッチやマッサージをしても、関節痛や筋肉痛の症状が改善しないときは、市販の鎮痛剤や漢方薬を取り入れて、セルフケアをしましょう。漢方薬には、更年期の不調など、女性特有の悩みの改善に力を発揮するものがいくつかあります。

更年期障害に対する漢方薬としては、加味逍遙散(かみしょうようさん)や桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などの漢方薬が広く用いられます。

関節痛の症状に対しては、桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)や、防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)、五積散(ごしゃくさん)などの漢方薬も広く用いられています。

表:関節痛の症状に対して用いられる漢方薬

桂枝加苓朮附湯
  • 関節痛や神経痛に用いられる
  • 体力がなく、手足が冷えやすい方に向いている
防已黄耆湯
  • 肥満に伴う関節の腫れ、痛み、むくみなどに用いられる
  • 体力が中等度以下で色白で疲れやすく、汗が多い方に向いている
五積散
  • 更年期障害や神経痛、関節痛、月経痛、頭痛、腰痛などに用いられる
  • 体力が中等度またはやや虚弱で、冷えやすい方に向いている

漢方薬を効果的に使用するためには、患者のカラダの状態や体質、病気の進行度に合ったものを選ぶことが大切です。漢方薬剤師などの専門家に相談し、自分に合った漢方薬を選びましょう。

ただし、セルフケアを行っても、症状が改善しないときや日常生活に支障をきたすほど症状がつらいときは、婦人科や整形外科などの専門の医師に相談しましょう。医師から更年期障害と診断された場合は、医療機関で薬物療法を受ける選択肢もあります。

更年期の症状を知り
ココロとカラダと
うまく付き合いましょう

更年期に生じる手指のこわばり、カラダの違和感や痛みは、更年期症状としての関節痛や筋肉痛かもしれません

「年齢のせいだから…」と放置すると症状が悪化し、痛みのために外出や運動が億劫になる可能性もあります。運動不足になると、筋力の低下はもちろんのこと、生活の質の低下にもつながります。

関節や筋肉の変化は、更年期症状の1つであることを知り、適切に対処しながら更年期とうまく付き合いましょう。