更年期は『うつ状態』や
『不安な気持ち』になりやすい?
原因と対処法

『関節痛』 イメージ写真

女性の生涯にとって大きなターニングポイントである更年期には、体や心に様々な変化が訪れます。憂鬱な気持ちや不安感のあらわれもその1つです。

ホルモンバランスの変化に加え、仕事の重圧や家庭の悩みといった環境要因が重なり合うことで、「これまで楽しめていた活動が心から楽しめない」「憂鬱で気分が落ち込む」「些細なことに不安を抱くようになった」など、心の不調に見舞われることがあります。

更年期の体と心の変化についての正しい知識を持ち、不安定な時期を乗り越えましょう。

※産婦人科の高尾先生に監修を依頼し、いただいたコメントを編集して記載しています。

更年期における
うつ状態(抑うつ気分)、
不安感の症状

更年期の女性は、次のようなうつ状態や不安感などの症状があらわれることがあります。

  • 憂鬱である、気分が落ち込む
  • 物事に対する思考力の低下、
    集中力の低下を感じる
  • 物事に対してほとんど興味がない、
    または楽しめない
  • 疲れやすい、または気力がない
  • 自分自身の存在に価値がない、
    自分自身が悪いと責めてしまう
  • 寝つきが悪く途中で目が覚める、
    または眠りすぎる
  • あまり食欲がない、または食べすぎる
  • 不快でもやもやする、
    些細なことに不安になる
  • 不安感で眠れない

更年期によって起こる症状「更年期症状」は、大きく分けて自律神経失調症状(ホットフラッシュや肩こり、めまいなど)、精神的症状(情緒不安定、イライラなど)、身体的症状(腰痛、消化器症状、皮膚粘膜の乾燥など)の3つに分けられます。心の不調は、更年期に伴う精神的症状の1つです。

たいていホットフラッシュなどの自律神経失調症状が出た後に、うつ状態や不安感などの心の症状が出る場合が多いといわれています。

更年期の症状が重く、「外出ができない」「仕事にいけない」など、日常生活に支障をきたす場合は医療機関で「更年期障害」と診断されます。

更年期にうつ状態
(抑うつ気分)になる、
不安を感じる原因

更年期にうつ状態になったり、不安を感じやすくなったりする主な原因として、更年期に伴うホルモンバランスの乱れが影響していると考えられています。

更年期とは閉経前の5年間と閉経後の5年間、合計で約10年間のことを指します。日本人女性の場合、平均的には45~55歳くらいの年齢が更年期にあたります。更年期は、卵巣機能の低下により、女性ホルモンが急激に減少する時期です。これに伴って、セロトニンやノルアドレナリンなどの精神伝達物質も不足し、うつ状態や不安感などの心の不調を引き起こすと考えられています。セロトニンやノルアドレナリンは、精神安定や幸福感、行動のモチベーションなどに深く関わっており、不足すると生きる気力を失ったり、憂鬱な状態に陥ったりして、社会的な活動ができなくなると考えられています。

また、女性ホルモンの減少は、自律神経の機能を乱し、不眠やホットフラッシュ、寝汗、疲労感などの体の不調のほか、イライラ、焦燥感などの症状を引き起こします。更年期にはこのような症状が続くことによって、日常生活の質が低下し、精神的なストレスが蓄積しやすくなります。

さらに女性の更年期には、子どもの独立や親の介護、夫婦関係・職場環境の変化など、ライフステージの変化が重なるタイミングでもあり、環境ストレスも相まって、うつ状態や不安感が強くなることもあります。

更年期の心の症状は、持って生まれた体質や日々のストレス、生活習慣などの背景も絡みながら発症すると考えられており、症状の出方には個人差があります。

更年期のうつ病、不安障害

更年期には、情緒が不安定になり、うつ状態や不安感を経験することがあります。しかし、更年期障害としてのうつ状態や不安感は、更年期特有の一時的なものです。ホルモンの変化に体が適応していく過程で自然と軽快する場合もあり、うつ病や不安障害などの精神疾患とは異なります。

その一方で、更年期は、うつ病や不安障害などの精神疾患を発症しやすい時期でもあります。抱えている症状が更年期障害としての症状なのか、精神疾患によるものなのかを見極める必要があります。

うつ病

うつ状態などの心の症状が強く、社会的な活動が困難になっている場合は、更年期による変化ではなく「うつ病」の可能性も考慮する必要があります。うつ病は、日本人のおよそ15人に1人が経験する比較的ありふれた病気で、更年期などにも比較的多く見られます。

とくに、これまでにうつ病を発症した経験のある方は、更年期に再びうつ病を発症するリスクが高いため、注意が必要です。

ただし、更年期のうつ状態と、うつ病との鑑別は専門医による診断が必要です。うつ状態によって生活に支障が出ている場合は医療機関で専門医の診察を受けましょう。

不安障害

不安感などの症状が強く、目前の出来事に対する恐怖や心配、漠然とした不安が過度になり、日常生活や仕事に影響が出ている状況が6か月以上続いている場合は「不安障害」の可能性もあります。

不安障害には、主に以下のような種類があります。

表:不安障害の種類

パニック障害 突然強い不安に襲われ、動悸・めまいなどの症状を伴ったパニック発作を繰り返します。
社会不安障害 人と話すことや、大勢の人と一緒に行動することに強い苦痛を感じ、社会的な活動に支障が出ます。
強迫性障害 心配事に駆り立てられ、何度も繰り返し、同じ考えや行動を止められなくなります。
全般性不安障害 理由もないのに、様々なことに不安を感じ、そわそわと落ち着かなくなります。

うつ状態や不安感などの症状が続いている場合は、「更年期のせいだろう」と、自己判断せず、医療機関を受診し、医師に相談しましょう。

更年期のうつ状態(抑うつ気分)
不安感の対処法

更年期症状としての心の症状は、ホルモンバランスの変化だけでなく、家庭や職場環境などの要因も大きく関わっています。うつ状態や不安感に気付いたら、自分自身に向き合うきっかけと捉え、気持ちや環境の整理に取組みましょう

家事、育児、介護、仕事の量については、無理のない範囲かどうかを見直し、まずは睡眠時間を確保しましょう。家庭内や職場での人間関係においても、更年期は様々な悩みや役割の変化を経験することがあります。気持ちをがまんしすぎたり、1人で抱え込んだりしないように、周囲の協力を得ながら乗り越えていきましょう。

また、うっすらと汗をかくような適度な運動は、ストレス解消に効果的で、気持ちを前向きにする効果があることが報告されています。日々の生活にウォーキングや水中歩行、ヨガなどを取り入れて、リフレッシュしましょう。

そのほか、薬局やドラッグストアなどで市販されている 漢方薬を試すことも可能です。

表:更年期障害の精神症状がある場合に用いられる漢方薬

加味逍遙散
(かみしょうようさん)
  • 更年期障害や月経不順、月経困難、冷え性、虚弱体質などに用いられる
  • 体力中等度以下で疲れやすく、肩こりや便秘、精神不安などの傾向がある方に向いている
柴胡加竜骨牡蛎湯
(さいこかりゅうこつぼれいとう)
  • 更年期障害や神経症、高血圧に伴う動悸、不安、不眠症状などに用いられる
  • 体力が中等度以上で精神不安がある方に向いている

漢方薬を効果的に使用するためには、1人ひとりの体質や状態に合わせて選ぶことが大切です。医師または漢方薬剤師などの専門家に相談し、自分に合った漢方薬を使用しましょう。

ただし、これらのセルフケアを行っても、改善がみられない場合は、医療機関を受診しましょう。

よくあるご質問(FAQ)

Q.更年期になると気分が落ち込んだり不安になったりするのはなぜ?
A.

更年期のうつ状態や不安感は、主に女性ホルモンの急激な減少によって引き起こされると考えられています。

  • 女性ホルモンが減少すると、精神安定や幸福感に関わるセロトニンやノルアドレナリンなども不足し、うつ状態や不安感が引き起こされると考えられています。
  • 女性ホルモンの減少は自律神経の機能も乱し、不眠やホットフラッシュ、疲労感などの体の不調が重なることで、精神的なストレスが蓄積しやすくなります。
  • 子どもの独立、親の介護、夫婦関係・職場環境の変化など、更年期と重なるライフステージの変化によるストレスも、うつ状態や不安感を強める要因となります。
Q.更年期のうつ状態とうつ病は違う?
A.

更年期によるうつ状態は更年期特有の一時的なものですが、うつ病は精神疾患であり、区別が必要です。

  • 更年期のうつ状態:ホルモンの変化に体が適応する過渡期に一時的にあらわれるもので、更年期を過ぎると自然と軽快する場合もあります。
  • うつ病:日本人のおよそ15人に1人が経験する精神疾患であり、更年期にも発症しやすい時期です。とくにこれまでにうつ病を発症した経験のある方は再発リスクが高いため注意が必要です。

更年期のうつ状態とうつ病の鑑別は専門医による診断が必要です。うつ状態によって生活に支障が出ている場合は、医療機関で専門医の診察を受けましょう。

Q.更年期の不安感やうつ状態をやわらげるには何をすればよい?
A.

更年期の不安感やうつ状態には、生活習慣の見直しとセルフケアが有効です。
生活習慣の整備:家事・育児・介護・仕事の量を無理のない範囲で見直し、まず睡眠時間を確保しましょう。周囲の協力を得ながら乗り越えることが大切です。

  • 適度な運動:うっすらと汗をかく程度のウォーキング、水中歩行、ヨガなどは、ストレス解消におすすめで、気持ちを前向きにする効果が報告されています。
  • 漢方薬によるセルフケア:市販の漢方薬(加味逍遙散や柴胡加竜骨牡蛎湯など)を活用することも可能です。自分の体質や状態に合った漢方薬を選ぶために医師または漢方薬剤師などの専門家に相談しましょう。

セルフケアを行っても症状が改善しない場合や、日常生活に支障をきたすほど症状が強い場合は、婦人科や更年期外来などの医療機関を受診しましょう。

更年期の症状を知り
ココロとカラダと
うまく付き合いましょう

更年期には、これまでにあまり経験したことのないような心と体の不調を経験することがあります。更年期の症状のほとんどは一過性のもので、更年期をすぎれば次第に落ち着く場合もあります。

更年期は、体がホルモンの変化に適応しようとしている過渡期であることを理解し、自分の心と体とうまく付き合うようにしましょう。生活環境や職場環境、人間関係などを見直し、楽に過ごすことを心がけてみてください