「こめかみのあたりがズキンズキンと脈打つように痛くなる」「肩が凝っていて、頭が痛い」。
このような頭痛の悩みはありませんか。頭痛は、閉経前後の更年期にあらわれやすい症状の1つです。
この記事では、更年期における頭痛の症状、頭痛が起こる原因、対処法などを解説します。
※産婦人科の高尾先生に監修を依頼し、いただいたコメントを編集して記載しています。
高尾 美穂
(たかお みほ)
日本医師会認定産業医・医学博士・婦人科スポーツドクター。女性のための統合ヘルスクリニック イーク表参道 副院長。日本医師会公認産業医として働く女性を支える傍ら、内閣府男女共同参画局・人事局の教育講演など担当している。
著書:「娘と話すからだ・こころ・性のこと」(朝日新聞出版)「人生たいていのことはどうにかなる あなたをご機嫌にする78の言葉」(扶桑社)
更年期に見られる主な頭痛として、片頭痛と緊張型頭痛が挙げられます。それぞれの症状は以下のとおりです。
片頭痛とは、くも膜下出血や脳腫瘍などの病気がないにも関わらず、頭の片側や両側が脈に合わせてズキンズキンと痛みが出る病気です。片頭痛による痛みは発作的に起こり、4~72時間以内にはおさまります。しかし、同じ症状を何度も繰り返すのが特徴です。
痛みの程度は様々ですが、吐き気などを伴うことも多く、階段の昇り降りなどの日常動作によって症状が悪化します。片頭痛が生じているときは太陽の光や大きな音などの刺激に対して過敏になり、寝込んでしまう場合もあります。そのため、片頭痛は仕事や家事などに支障をきたします。
緊張型頭痛は、頭の両側や全体に圧迫されたり、締め付けられたりするような痛みが起こります。頭痛の程度は軽度~中等度で、
30分から7日間程度続きます。片頭痛とは異なり、吐き気などを伴うことはなく、歩行や階段の昇り降りなどの日常動作によって症状が悪化することもありません。
緊張型頭痛が出ているときは、頭周囲や首まわりの筋肉の圧痛を伴うことがあります。
更年期に片頭痛や緊張型頭痛が起こる原因を解説します。
成人女性によく見られるタイプの頭痛です。すべての原因はまだ解明されていませんが、何かしらの理由で脳の血管が拡張し、その周りの神経を刺激することで頭痛が起きると考えられています。発症のきっかけとしては、特定の食物やアルコール、カフェインの摂取、ストレス、睡眠不足、女性ホルモンの変動などの要因が知られています。
片頭痛の症状は、女性ホルモンの「ゆらぎ」が大きい閉経前に一過性に悪化し、やがて閉経後に女性ホルモンが減少すると軽快します。若いころに、月経に関連して片頭痛を経験したことのある方は、更年期に片頭痛が悪化するリスクが高いと考えられています。また、抑うつや不安などの精神症状とも関連することが報告されています。
緊張型頭痛は、首やそのまわりの筋肉の緊張が原因で起こる頭痛で、男性よりも女性に多いといわれています。発症のきっかけとしては、無理な姿勢を続けて首や肩に負担をかける、目を酷使する、心配ごと・不安などの精神的ストレスによる筋肉の緊張や食いしばりなどの要因が関係しているとされています。
更年期と緊張型頭痛との関係は明らかになっていませんが、更年期の女性は肩こりを持っている方が多く、これに付随して緊張型頭痛を発症することがあります。その他、肥満、運動不足、喫煙などが発症の危険因子として報告されています。
頭痛は、片頭痛や緊張性頭痛以外にも、様々な病気によって起こります。例えば、脳腫瘍などの脳の異常、くも膜下出血などの脳血管障害、髄膜炎、脳炎などの感染症によって頭痛が起きることがあります。その他、目、鼻、耳、副鼻腔、歯、口などの病気の影響でも頭痛が起きることがあります。
これらの頭痛のなかには、大きな病気が原因になっている場合や、命に関わる緊急性の高い場合もあるため注意が必要です。経験したことのないような頭痛がある、頭痛の症状が続いているときは、更年期や年齢によるものだろうと症状を見過ごさず、医療機関を受診しましょう。
特に大きな病気がないにもかかわらず、頭痛を繰り返す場合は、更年期に関連して起こる片頭痛あるいは緊張性頭痛である可能性があります。
片頭痛の症状が出た場合は、無理をして活動を続けると症状が悪化するため、休憩を取ったり、横になったりして、カラダを休めましょう。音や光に対して過敏になる方は、静かな暗い部屋に移動し、安静にすると症状がおさまります。
片頭痛を繰り返している場合は、アルコールやカフェインの摂取、睡眠不足が発症のきっかけになっている可能性があります。アルコールやカフェインの摂取を控え、睡眠時間を十分に確保するなど、日常生活を見直しましょう。
緊張型頭痛の場合は、長時間同じ姿勢を続けたり、無理な姿勢で過ごしたりしていると発症しやすくなります。片頭痛とは異なり、気晴らしにカラダを動かすと頭痛が楽になることがあります。普段から適度にストレッチや運動を取り入れて、肩や首まわりの血行をよくすることが大切です。
頭痛の症状がつらいときは、ドラッグストアや薬局で市販されている頭痛薬や漢方薬を使用するのもおすすめです。
更年期の頭痛の治療に主に使用される漢方薬を3つ紹介します。
表:更年期の頭痛を改善する漢方薬
呉茱萸湯 (ごしゅゆとう) |
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当帰芍薬散 (とうきしゃくやくさん) |
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加味逍遙散 (かみしょうようさん) |
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これらの漢方薬は、更年期の頭痛をやわらげる効果が期待できます。
漢方薬は、使う方の体質、症状に合うものを選択することで、効果を発揮します。万が一、市販薬を使用しても頭痛が改善しないとき、症状が悪化しているときは、早めに医療機関を受診しましょう。
女性ホルモンが低下する更年期には、片頭痛や緊張性頭痛に悩まされることがあります。しかし、更年期に伴う頭痛は、たいてい一時的なものであり、閉経後に女性ホルモンが低い状態で安定すると起こりにくくなるといわれています。
女性にとっての大きなターニングポイントである更年期には、頭痛をはじめ、これまでになかったような症状やカラダとココロの変化が起きることを知り、うまく折り合いをつけていきましょう。
頭痛の症状がつらいときはガマンせずに、休息をしたり、普段の生活習慣を見直したりして、乗り越えましょう。
更年期の概要やよくある症状、原因について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。