急に暑くなるのは更年期のせい?
『ホットフラッシュ』の
原因と対処法

『イライラ』 イメージ写真

「涼しい部屋にいるはずなのに、顏が急にカーッと熱くなって、汗が止まらない」「カラダが熱くなったと思ったら、急に寒気がすることがある」。このような症状に悩んでいませんか。

女性ホルモンが低下する更年期には、「ホットフラッシュ」と呼ばれる、ほてりやのぼせ、発汗などの症状があらわれることがよくあります。

今回は、ホットフラッシュに悩む更年期の女性のために、症状の特徴や、ホットフラッシュが起きる原因、症状を緩和するための対処法を解説します。

※産婦人科の高尾先生に監修を依頼し、いただいたコメントを編集して記載しています。

監修者プロフィール

高尾 美穂(たかお みほ)

高尾 美穂
たかお みほ)

日本医師会認定産業医・医学博士・婦人科スポーツドクター。女性のための統合ヘルスクリニック イーク表参道 副院長。日本医師会公認産業医として働く女性を支える傍ら、内閣府男女共同参画局・人事局の教育講演など担当している。

著書:「娘と話すからだ・こころ・性のこと」(朝日新聞出版)「人生たいていのことはどうにかなる あなたをご機嫌にする78の言葉」(扶桑社)

更年期における
ホットフラッシュの症状

ホットフラッシュとは、ほてりやのぼせ、発汗などが突然起こる症状のことをいい、更年期に見られる代表的な症状(更年期症状)の1つです。

  • 部屋が暑いわけではないのに、顏や頭部がカーッと熱くなって赤くなる
  • 頭を中心に上半身から汗が噴き出る
  • 汗が出たと思ったら、急に寒気を感じる

上記のような症状があらわれます。平均的なホットフラッシュは4分間ほど続き、1日に数回繰り返す場合もあります。また、更年期の女性の約2/3がホットフラッシュを経験しているとされています。ホットフラッシュの症状によって日常生活に支障をきたす場合は、更年期障害の可能性があります。

更年期にホットフラッシュが
起こる原因

更年期のホットフラッシュは、閉経に伴う女性ホルモンの減少が大きく関わっていると考えられています。

人間のカラダには、周囲の環境変化に合わせて、体温を一定に保つためのしくみが備わっています。このしくみに欠かせないものが「自律神経」です。自律神経のコントロールは、脳の視床下部が担っています。通常は視床下部からの司令により自律神経が活動し、寒い日にはカラダを温め、暑い日には発汗を促すなどして、体温を一定に保っています。

しかし、視床下部は自律神経の働きだけでなく、女性ホルモンのバランスをコントロールする役割も兼ねています。しかし、更年期には卵巣の加齢によって女性ホルモンが乱高下しながら低下するため、この視床下部が混乱し、その機能が低下します。視床下部の機能が低下することにより、自律神経の働きにも混乱が生じることで、ほてりや発汗、寒気などの症状があらわれるといわれています。

生理が順調な頃

更年期になる前 イメージ図
  • 1脳(視床下部)から女性ホルモン分泌を指令する
  • 2卵巣から女性ホルモンが分泌される
  • 3女性ホルモンの血中濃度が高まると指令が止まる

更年期

更年期になると イメージ図
  • 1脳(視床下部)から女性ホルモン
    分泌を指令するが、卵巣から十分な
    女性ホルモンが分泌されない
  • 2脳(視床下部)から女性ホルモンを出す指令が
    出続ける
  • 3自律神経中枢に影響を及ぼす/ホルモンバランス・
    自律神経のバランスが乱れる
  • 4自律神経に異常発生!

ほてりやのぼせなどが
起こる病気

更年期以外にも、甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)や自律神経失調症など、ほてりやのぼせの症状が出る病気があります

ほてりやのぼせの症状が続いている場合は、「更年期だろう」と、自己判断はしないで、医療機関を受診し、医師に相談しましょう。

表1:更年期のホットフラッシュが起こる病気と主な症状

甲状腺機能亢進症 甲状腺という内分泌器官の異常によって、カラダ全体の代謝が盛んになる病気です。多汗、疲れやすい、動悸がする、手が震える、食欲が増える、やせるなどの症状が出ます。
自律神経失調症 女性ホルモンの低下とは関係なく、自律神経そのもののバランスが乱れる病気です。自律神経のバランスが乱れることで、顏のほてりやのぼせ、手足が冷える、動悸がする、眠れない、下痢、便秘などの症状があらわれます。

更年期の
ホットフラッシュの対処法

ホットフラッシュの症状は、更年期における女性ホルモンの減少によって自律神経のバランスが崩れているサインです。ほてりやのぼせ、発汗、寒気などの症状があらわれたときは、深呼吸をしてリラックスするようにしましょう。鼻からゆっくり息を吸って、おなかをふくらませ、吐く息でおなかをへこませる「腹式呼吸」を意識的に行うことで、自律神経のバランスを整えることができます。

また、ホットフラッシュを含め、更年期のつらい症状を緩和するためには、普段の生活習慣を見直すことが大切です。栄養バランスの取れた食事を取る、適度な運動を行う、十分な睡眠を取るなど、できるだけストレスの少ない生活を心がけましょう。

ただし、ホットフラッシュの症状が強く、仕事や家事などの日常生活に支障が出ている場合は、更年期障害と診断され、治療が必要です。医療機関を受診し、医師に相談しましょう。

更年期障害の症状は、女性ホルモンを薬剤で補うホルモン補充療法や、漢方薬を使って緩和することができます。漢方薬は、更年期のつらい症状を改善するための市販薬も販売されています。そのため、薬局やドラッグストアで購入し、セルフケアをすることも可能です。東洋医学では、更年期の心身のトラブルを「気」「血」「水」のバランスが崩れている状態と捉えます。生薬の薬効によってこれらのバランスを整え、更年期の症状を軽減します。

更年期によるホットフラッシュに対しては、加味逍遙散(かみしょうようさん)や桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などの漢方薬が広く用いられます。

表2:更年期のホットフラッシュを改善する漢方薬

加味逍遙散
  • 更年期障害や月経不順、月経困難、冷え症に用いられる
  • 体力があまりなく、イライラする、不安感があるといったココロの不調を感じる方に向いている
  • のぼせ感以外にも、肩こりや便秘の傾向がある方に向いている
桂枝茯苓丸
  • 更年期障害や月経不順、月経異常、月経痛、肩こり、めまいなどに用いられる
  • のぼせているのに足は冷えているような方に向いている

漢方薬は、使う人の体質や症状に合ったものを選択することでその効果を発揮します。どの漢方薬を選べばよいかわからないときは、医師や漢方薬剤師に相談しましょう。

更年期の症状を知り
ココロとカラダと
うまく付き合いましょう

閉経前後の更年期には、ホットフラッシュをはじめ、これまでになかったココロとカラダの様々な不調が起こることがあります。更年期によるホットフラッシュの症状については、多くが時間とともに軽くなっていくといわれています。のぼせやほてり、発汗などの症状は継続するものではなく、一時的な症状であることを知り、女性にとってのターニングポイントをうまく乗り越えていきましょう。

ホットフラッシュの症状は、生活習慣を見直し、ココロとカラダを整えたり、漢方薬でセルフケアを行ったりすることで改善が期待できます。

ただし、ホットフラッシュの症状がつらく、仕事や家事などに支障が出るような場合は、医療機関を受診しましょう。

更年期の概要やよくある症状、原因について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。