肩こりは更年期の女性に多い体の不調です。日々の忙しさに追われ、肩こりがあってもがまんして過ごしている方もいるのではないでしょうか。肩こりを放置すると、頭痛や全身の疲労感につながったり、日常生活にも支障をきたしたりすることがあります。
今回は、更年期の肩こりの症状をはじめ、原因や対処法、セルフケアを解説します。
※弊社から石原先生に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。
肩こりとは、首すじや首のつけ根から、肩・背中にかけて張ったり、こったりするなどの症状が出る状態のことを指します。肩こりは男女問わず起こるとされており、男性よりも女性に多く、とくに中高年の女性によくみられます。
また、肩こりは更年期に伴ってあらわれる更年期の症状としても知られており、ホットフラッシュやのぼせなどの症状とともに、もっともよくみられる症状の1つです。
主な症状として首や肩甲骨、肩周辺に「重だるさ」を感じたり、「つまる」ような不快感があらわれたりすることもあります。また、ときには、頭痛や吐き気を伴う場合もあります。
更年期に肩こりになる原因は1つだけではなく、様々な要因が複雑に絡み合って生じると考えられています。まず、一般的な肩こりの原因としては、長時間にわたって同じ姿勢で首や背中に負担をかけ続けることや、猫背やストレートネックなどの姿勢不良、運動不足などが挙げられます。
これらの原因によって、首・肩まわりにある僧帽筋(そうぼうきん)・肩甲挙筋(けんこうきょきん)などの筋肉の血行が滞ることで、酸素や栄養が行き届かなくなり、疲労感や重だるさを感じるようになります。デスクワークや家事に加え、パソコンやスマホの使い過ぎもきっかけになります。また、精神的な緊張やストレス、過労、冷えなどがきっかけで肩こりになることもあります。
更年期以降の女性の場合、これらに加えて、卵巣の老化によって、本来卵巣から分泌される女性ホルモンが乱高下しながら減少していくことが、肩こりの発症や悪化に関係していると考えられています。女性ホルモンの減少に伴い、自律神経の働きが乱れ、それによって血液循環が滞りやすくなり、肩こりなどの不快な症状があらわれます。
また、女性ホルモンの減少自体が、「頭痛」や「関節痛」などの体の痛みを誘発することも知られており、このような要因も絡み合って、肩こりなどの不快な症状があらわれると考えられます。
肩こりは更年期に関連するものだけでなく、ほかの病気のサインとしてあらわれる場合もあります。
表:肩こりを引き起こす病気
| 四十肩・五十肩(肩関節周囲炎) | 加齢に伴う肩関節の骨・軟骨・筋肉の衰えによって、肩関節周囲に炎症が起きて、肩に痛みと動かしにくさなどの症状があらわれます。「痛みのために着替えなどの動作が難しい」などの症状がある場合は、肩こりではなく、四十肩・五十肩が原因になっていることがあります |
|---|---|
| 眼精疲労 | 目を使いすぎることで、目に疲れを感じる状態のことです。目の痛みや重さ、目の疲労感などの症状と共に、肩こり、全身の疲労感、めまい、頭痛、吐き気などの症状が出ることがあります |
| 高血圧 | 高血圧の多くは自覚症状がありません。ただし、血圧が高い状態が続くと、肩こりの症状が出ることがあります |
上記の病気以外にも、肩こりの症状を伴う病気はいくつかあります。もし、単なる肩こりではないなと感じる場合や、症状がつらい場合や不安があるときには、医療機関を受診し、医師に相談しましょう。
肩こりは普段の姿勢や生活習慣を見直すことで、症状の緩和が期待できます。まずは予防の観点から、同じ姿勢を長時間続けないように意識し、定期的に休憩をとりましょう。また、体を動かしてリフレッシュしたり、温水シャワーや湯船につかって体を温めたりすることで、筋肉の血行がよくなり、肩こりの症状が和らぐ効果が期待できます。
日ごろの姿勢をチェックし、正しい姿勢を意識しましょう。とくにデスクワーク中やスマートフォンを使用している際に、前のめりの姿勢になっているようであれば、首・肩まわりの筋肉に負担がかかっていて、肩こりの原因になります。軽くあごを引いて、背筋を伸ばして、首・肩まわりへの負担を軽減しましょう。
更年期障害に伴う肩こりには、漢方薬も広く用いられます。主に用いられる漢方薬には、加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)などがあります。
表:更年期の肩こりに用いられる主な漢方薬
| 桂枝茯苓丸 (けいしぶくりょうがん) |
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|---|---|
| 当帰芍薬散 (とうきしゃくやくさん) |
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| 桃核承気湯 (とうかくじょうきとう) |
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漢方薬は1人ひとりの体質や症状に合ったものを用いることで、より効果を発揮します。自分に合う漢方薬がわからない場合は、漢方専門薬剤師や医師などの専門家へ相談しましょう。
日ごろの姿勢と生活習慣を見直すことで、対処・予防ができます。長時間同じ姿勢を続けるのを避け、ストレッチや温浴で血行促進を図り、筋肉の緊張をほぐすことが大切です。デスクワークやスマートフォンを使用する際は、猫背にならないように気をつけ、あごを引き背筋を伸ばしたり、こまめな休憩を取り入れたりすることを心がけましょう。
閉経に伴う女性ホルモンの減少によって自律神経が乱れ、血行不良から肩こりが起こりやすくなります。また、女性ホルモンの減少自体が痛みを誘発し、肩こりを悪化させる場合もあります。
更年期の肩こりは、女性ホルモンの減少やストレス、自律神経の乱れ、血行不良といった様々な要因が重なって起こります。放置すると頭痛や全身の疲労感につながるため、早めの対処が必要です。
肩こりは、生活習慣や姿勢を見直すことで、改善が期待できます。長時間同じ姿勢を避け、正しい姿勢を意識して、首・肩まわりの筋肉への負担を軽減しましょう。また、適度な運動やストレッチなどを取り入れて、肩こりを改善・予防しましょう。
ただし、症状が重く日常生活に支障がある、ほかの病気が疑われる場合には、医療機関を受診しましょう。