のどの痛みと比べて軽く考えられがちな「のどのかゆみ」は、のどの粘膜が炎症を起こしているサインであることも。のどのかゆみ・痛みの原因と治し方について、耳鼻咽喉科の山中弘明先生にお聞きしました。
山中弘明先生
よし耳鼻咽喉科院長
東京医科大学医学部卒業。日本大学板橋病院、都立広尾病院などを経て、2020年に父親の代から続くよし耳鼻咽喉科の院長を承継。お子さんから高齢者まで幅広い患者さんに寄り添う診察を行う。HPやYouTubeで耳鼻科関連の病気に関する情報を積極的に発信。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医
※弊社から山中先生に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。
アンケート調査によると、のどがかゆいと感じた人たちは、対処法としてのど飴をなめたり、水でうがいをしたり、飲み物を飲んだりしている人が多いようです。中には、舌でなんとか掻こうとしている人も。
また、のどがかゆいときに正しい対処法がわからなくて不安に思っている人は、のどが痛いときに比べて多いようです。
のどがかゆいとき、
どんな対処をしていますか?
出典:弊社調査(2020年5月)N=1,839
(1年以内にのどのかゆみがあった20~60代男女 MA)
のどが痛いとき、
どんな対処をしていますか?
出典:弊社調査(2020年5月)N=2,851
(1年以内にのどの痛みがあった20~60代男女 MA)
のどがかゆい・痛いとき、
正しい対処法が分からない人
正しい対処法が分からない 分かる
のどがかゆいとき
のどが痛いとき
出典:弊社調査(2020年5月)
(1年以内にのどのかゆみがあり、現対処に不満がある20~60代男女 N=71 MA)
(1年以内にのどの痛みがあり、現対処に不満がある20~60代男女 N=174 MA)
山中弘明先生
のどの痛みに比べると少ないものの、のどがかゆいと訴える患者さんは割といらっしゃいます。かゆみというのは、痛みよりもつらい感覚だとも言われていて、「なんとかしたい!」というお気持ちは大変よくわかります。しかしながら対処法は分からず自己流という方が多い印象ですね。
のどのかゆみ・痛みの原因には、アレルギーや風邪の初期症状など、さまざまなものが考えられます。かゆみは何らかの刺激に反応していることを示していて、のどの粘膜が炎症を起こしているなどのサインと言えます。
日本人に今多いのは、アレルギーによるのどのかゆみ・痛みです。原因となる物質(アレルゲン)が鼻や口から侵入してのどに付着することでアレルギー反応が起きて炎症が起こります。のどのかゆみ以外にも、同時に目のかゆみやくしゃみ、鼻水、咳などの症状が出やすくなります。
人によって反応するアレルギー物質はさまざまで、花粉やハウスダスト、ダニ、ペットの毛などが代表的です。食べ物によるものもありますね。
花粉が飛び交う春先、秋の季節は要注意ですし、ハウスダストやダニであれば掃除をしたとき、また、自宅では起こらないのに、旅行や出張の宿泊先の部屋の掃除が行き届いておらず発症した、というケースもあります。食べ物でのどのかゆみ・痛みが現れる場合もあります。
ウイルスや細菌に感染することでのどの粘膜に炎症が起こり、のどにかゆみや痛みが生じます。風邪のほかに咽頭炎、喉頭炎、扁桃炎、インフルエンザなどでのどの痛みが起こる前段階に、かゆみとして表れる場合もあります。
唾液の分泌量が減少すると、口の中が乾燥してのどの粘膜がダメージを受け、かゆみ・痛みが生じる場合があります。ストレスが原因で唾液の量が減って口の中が乾燥することや、ストレスそのものの症状としてかゆみが起こることもあります。
アレルギーと同様に、原因物質がのどに付着することで炎症が起こることがあります。
胃食道逆流症(逆流性食道炎)は胃酸や食べ物が食道に逆流する病気です。逆流した際にのどへ胃酸などが付着し、かゆみや咳などをきたす場合があります。
煙やアルコール度数の高いお酒、辛い食べ物などがのどの粘膜を刺激してダメージを与え、のどのかゆみ・痛みが起こることがあります。
第一には、原因となっているものを無くす、または避けることです。
ハウスダストやダニ、花粉などのアレルギー物質を取り除くためにも部屋の掃除はこまめに行いましょう。
アレルギー物質やウイルス・細菌、PM2.5などの原因物質の体内への侵入を防ぐためにマスクをつけましょう。
また、のどの粘膜のうるおいを保ったり、保護したりすることは医学的にも正しい対処法です。
冬の時季や乾燥した場所では加湿器などを利用して乾燥を防止しましょう。湿度が高すぎてもカビや細菌が増える原因になりますので、湿度は50―60%を目安に設定してください。部屋の湿度が上げられないときや外出時には、マスクの着用ものどの乾燥対策に有効です。
のどを乾燥から守るためには、こまめな水分補給を意識しましょう。のどに刺激を感じなければ、種類は何でも構いません。胃食道逆流症の方は、カフェインは控えたほうがベターです。
うるおいによる粘膜の保護に加え、花粉やウイルスなど、のどの粘膜に付着した異物を洗い流すのに有効です。のどの奥まで届くように意識してガラガラうがいをしましょう。
唾液が分泌されてのどの粘膜を保護してくれます。
舌で掻くという方も多くいらっしゃいますが、のどの粘膜を傷つける可能性があるためおすすめしません。同様に、タバコやアルコール、辛いものの摂取、大声を出す、咳払いといった行動も、一時的にかゆみを取ることができたとしても、のどの粘膜を刺激するため控えてください。
山中弘明先生
のどの炎症を鎮める市販薬などを手元に置いておくのはよいと思います。のどの炎症を鎮めるには、抗炎症成分が入っているものを選びましょう。また、アレルギーが原因であれば抗ヒスタミンの成分が有効です。
かゆみの症状が1週間以上改善されない場合は医療機関を受診しましょう。また、かゆみ以外にも息苦しさがある場合や発熱が2〜3日続いているときは早めにいらしてください。
のどのかゆみは耳鼻咽喉科が専門になりますが、他に併発している症状によっては内科やアレルギー科が適していることもあります。発熱や咳などの風邪症状を伴うときは内科、湿疹や目のかゆみなどのアレルギー症状を伴うときはアレルギー科を受診すると良いでしょう。
のどのかゆみ・痛みは、アレルギーや感染症をはじめさまざまな原因が考えられます。「かゆみを我慢するのはつらいので、のどの粘膜を守って予防と対策をとってください。原因物質を避けたり、のどの乾燥対策を行ったうえで、即効性のある市販薬を携帯しておくのも一つの手です」と山中先生からアドバイスをいただきました。正しい対処法をとって、素早くのどのかゆみ・痛みを解消しましょう!