歯科医療関係者向け情報

歯間ブラシの素材違いによる
定着率研究

辻中歯科医院 副院長
池田貴久子先生
国際歯周内科認定歯科衛生士

※小林製薬から池田先生に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。

歯周病の発症・進行を予防するにはプラークコントロールが最も大切です。私たちが歯科で行う処置だけでなく、患者様が日々ご自身で行うセルフケアも重要な位置付けです。しかし、令和4年歯科実態調査(厚労省)によると、デンタルフロスや歯間ブラシを用いた歯間部清掃を行っている者は全体の50.9%と、まだまだ歯間部や隣接部歯肉、叢生部の歯肉や側面へのセルフケア行動の習慣化には予防の更にワンランク上へのセルフケアとして歯科衛生士から患者教育をしていく必要があると考えられます。

ワイヤ―タイプの歯間ブラシとゴムタイプの歯間ブラシについて、歯間ブラシを使用したことのない方に試用してもらった後に実際にどちらの歯間ブラシを使用しているか、つまりどちらの歯間ブラシが続けやすいかについての研究報告があります。

この研究によると、ワイヤータイプとゴムタイプそれぞれの歯間ブラシサンプルを各2週間ずつ試用した後にサンプルを回収して、その1ヶ月と3ヶ月後に実使用している歯間ブラシの種類を調査したところ、ゴムタイプの歯間ブラシを使用している人がワイヤータイプを使用している人よりも多いという結果で、使いやすさや歯ぐきの傷つけにくさなどが理由に上がっていました。患者様の歯間部清掃を習慣化するには、ゴムタイプの歯間ブラシは効果的と考えられます。また、刷掃部がゴム素材でできていることから軟組織である歯ぐきに対してやさしく使用できることから患者様へも安心して勧められると感じます。

PRESENTATION DATA

発表データ

歯間ブラシ未使用者を2群に分け、2週間毎に違うタイプの歯間ブラシを試用してもらい、試用終了1ヶ月後、3ヶ月後の継続状況を調査した。

歯間ブラシの試用調査と継続状況追跡調査のフローチャート。未使用者54名をA群(ワイヤータイプ)とB群(ゴムタイプ)に分け、それぞれ2週間試用後にアンケートを実施し、試用品回収と1ヶ月後・3ヶ月後の追跡調査を行う流れを示している。

1ヶ月後、3ヶ月後、ともにゴムタイプの歯間ブラシの方がワイヤータイプの歯間ブラシよりも使用率が高かった。

歯間ブラシ試用後の使用率を示す帯グラフ。1ヶ月後ではゴムタイプ27.8%、ワイヤータイプ16.7%、非使用55.6%。3ヶ月後ではゴムタイプ29.6%、ワイヤータイプ18.5%、併用3.7%、非使用48.1%となり、1ヶ月後、3ヶ月後、ともにゴムタイプの歯間ブラシの方がワイヤータイプの歯間ブラシよりも使用率が高居ことが示されている。

【対象】調査会社(関西ビジネスインフォメーション株式会社)が保有する消費者パネルのうち同意取得時の年齢が40歳以上69歳以下の歯間ブラシ未使用者(N=54)
【被験品】ワイヤータイプ歯間ブラシ(I字型、某社製)、ゴムタイプ歯間ブラシ(I字型、小林製薬製)
【調査方法】 試用開始前に被験者に対して「歯間清掃の重要性」と「被験品の使用方法」、について歯科衛生士が十分な説明を行った。サイズ選定については、予め配布したサイズ選定用サンプル(各被験品全サイズ)を用い、無理なく、複数箇所への挿入ができるサイズを被験者毎に選定させ、各被験品に対し14日間ずつの試用機会を提供した。被験品の試用順で被験者を2群に分けて実施し、各被験品の試用終了後に使用後アンケートに記入させた。また試用終了後に被験品を回収した。試用終了1ヶ月後と3ヶ月後に歯間ブラシの使用状況を確認するために実購買者調査(アンケート)を実施した。
【倫理的配慮】芝パレスクリニック倫理審査委員会承認済(承認番号149291_rn-32316)
グラフは出典を参考に作成。
出典:歯間ブラシ未使用者を対象とした刷掃部の異なる歯間ブラシの使用状況に関する調査研究 歯科衛生学会第18回学術大会(2023年9月)ポスター発表(小林製薬)