「指を伸ばすと引っかかりがあり、動かしにくい」「家事をすると、指の付け根が痛い」などの症状を感じることはありませんか。もしかするとその症状は、指の腱鞘炎である「ばね指」かもしれません。
今回の記事では、ばね指の症状や原因、予防法、治し方などを解説します。指を動かしたときに引っかかりや痛みがある方は、参考にしてみてください。
ばね指は、第三関節の手のひら側にある屈筋腱(くっきんけん)や腱鞘(けんしょう)に炎症が生じる病気です。指を動かす筋肉は指の骨に腱となって付着し、指を曲げたり伸ばしたりします。指を曲げるときに働くのが屈筋腱です。
腱鞘は腱にかかる摩擦を軽減するために、トンネルのように腱を包みます。指を曲げるときに働く屈筋腱や、屈筋腱をおおう腱鞘に炎症が生じる病気を腱鞘炎と呼び、ばね指は腱鞘炎の1つに含まれます。
ばね指の主な症状は、親指や中指の第三関節の手のひら側に生じる痛みや腫れと、「弾発現象(だんぱつげんしょう)」です。
痛みや腫れは、腱や腱鞘に生じる炎症が原因です。炎症のため、熱を持ったり、赤みがかったりする場合もあります。
弾発現象は、症状のある指を曲げた状態から伸ばそうとすると引っかかりが起こり、無理に伸ばすと、ばねにはじかれたように急に伸びる現象のことです。これが「ばね指」と呼ばれる理由です。腱鞘炎によって腱が肥大したり、腱鞘が厚くなったりして、腱が腱鞘をうまく通過しづらくなることで生じます。指を伸ばしたところから曲げる場合にも、弾発現象が起こります。
ばね指は、親指と中指によく見られます。また、1つの指だけではなく、複数の指に発症する場合もあります。症状は起床時に強く、日中指を動かすうちに次第に症状が軽くなる方もいます。
ばね指の症状が進行すると、関節が固まってしまい、関節の曲げ伸ばしができなくなることもあります。
ばね指は、第三関節にある屈筋腱や腱鞘に起きる腱鞘炎が原因です。
頻繁に手指を曲げ伸ばしすることによって、第三関節の屈筋腱と腱鞘に摩擦が繰り返されます。手指の使い過ぎになりやすい具体的な行動は、以下のとおりです。
上記のような行動による摩擦が刺激となって屈筋腱や腱鞘に炎症が生じ、腱鞘炎を引き起こします。さらに炎症が悪化すると、徐々に腱や腱鞘が肥大してきます。
結果として、腱が腱鞘をうまく通過しづらくなり、指を動かすときに引っかかりが生じ、動かせなくなったり、無理に伸ばすとばねのように急に伸びたりします。
ばね指は更年期の女性、妊娠・出産期の女性に多く見られる特徴から、女性ホルモンの影響も考えられています。特に更年期になるとエストロゲンが減少するため、指の関節をおおって保護する滑膜(かつまく)が腫れやすくなり、ばね指を引き起こします。
ばね指は、スポーツ、仕事、家事などで手指をよく使う方に発症することが多いです。男性より女性に多く発症し、特に更年期の女性や妊娠・出産期の女性に多く見られます。
ほかにも、糖尿病や関節リウマチ、人工透析が原因で、ばね指を発症する場合があります。
ばね指は、手指を過剰に使うことが大きな原因となるため、できるだけ手指にかかる負担を減らす必要があります。日頃からパソコンやスマホを長時間使用しない、家事をまとめて行わないなど、手指を酷使する動作はできるだけ控えましょう。また、適度な手指のストレッチもおすすめです。
ばね指の予防におすすめのストレッチを紹介します。
痛みがあると、指を動かさなくなります。また、安静にするために長時間固定すると、さらに血流が悪くなって関節も固くなる可能性があるため、適度なストレッチを取り入れ、柔軟性を保つことが大切です。
手指に負担をかけてしまった場合は、しっかりと休めることが大切です。もし、手指を使うことを控えても痛みや炎症がある場合は、早めに整形外科を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
ばね指になった場合は、正しい治療を行わなければ症状が悪化する危険性があります。ばね指の症状がある方は、以下のような行動を避けて、整形外科を受診しましょう。
ばね指の治療は手術療法のほかに、手術を行わない保存療法があります。保存療法の具体的な方法は以下のとおりです。
痛みや腫れなどの炎症が生じている場合は、できるだけ手指を使わないように意識して、炎症が治るのを待ちます。安静にする場合は、副子(添え木)やテーピングなどで関節が曲がらないように固定する方法もあります。
医療機関では、痛みや炎症を抑える外用薬や内服薬を使用する場合もあります。炎症や指のひっかかりが強いときは、腱鞘内にステロイド注射を行います。痛みや炎症が強い場合は、整形外科を受診しましょう。
炎症が落ち着いた状態では、ストレッチが有効な場合もあります。ストレッチは屈筋腱や腱鞘の柔軟性を高めて、摩擦を軽減する目的で行います。正しいストレッチ方法は、医師やリハビリの専門家の指導を受けるようにしましょう。
手指の関節に生じる炎症に対して、漢方薬も選択肢の1つです。手指の関節炎を治療する市販の漢方薬を使用するのもよいでしょう。薬局やドラッグストアで、薬剤師に症状を相談しましょう。
保存療法で改善しない場合は、手術療法になります。手術療法は、腱鞘の一部を切開して屈筋腱を通過しやすくします。整形外科を受診して、医師に相談しましょう。