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2019年11月吉日

〜アトピー「予備軍」の方に朗報〜
AI技術活用により肌セラミド測定の迅速化・簡易化に成功!

小林製薬株式会社(本社:大阪市、社長:小林章浩)は、偏光顕微鏡の画像解析とAI技術を組み合わせることで迅速・簡易に肌のセラミド量を測定できる技術を開発いたしました。本研究成果は2019年9月30日(月)〜10月2日(水)にイタリアミラノで開催された世界最大の化粧品技術・研究発表会「国際化粧品技術者会連盟ミラノ中間大会2019」(IFSCC Conference2019)」で発表いたしました。

研究の背景

図1:肌細胞構成イメージ 図2:肌断面イメージ

セラミドは角質細胞の間を満たす角質細胞間脂質の主成分であり、水分蒸散を抑えて肌の潤いを守るバリア機能物質として非常に重要な役割を果たしています。また、セラミドが少ない肌は水分蒸散量が大きいことが知られています(図1・2)。
アトピー性皮膚炎の患者は、特にセラミド量が少なく、発症した患部はバリア機能が低下して刺激物質が皮膚内部へ侵入し、更なる湿疹や炎症が引き起こされる負のスパイラルに陥りがちです。
他方、症状が出ていない人の中にも潜在的に肌のセラミド量が少なく、バリア機能が低いというアトピー素因を持った「アトピックドライスキン」の人が存在しています。このようないわば、アトピー「予備軍」の人は、発症を防ぐために保湿やセラミドの補充、洗いすぎに注意するなど、適切なスキンケア習慣を身につけることが必要となります。
しかしその指標となる肌のセラミド量測定は高額な装置を用いた数日間の分析が必要なため、従来は大学や企業の研究用途に限られていました。今回、小林製薬はセラミドが肌(角層)中で形成している構造に着目、迅速かつ簡便にセラミド量を測定する新技術を開発いたしました。

結果の概要

1.偏光顕微鏡でテープストリッピングサンプルを観察することで、セラミド量を測定

2.AI技術(機械学習法)の利用により、測定をさらに簡便かつ効率化することに成功

本成果は、今後の小林製薬の化粧品の製品開発に活用してまいります。

測定方法

図3:測定方法イメージ

推定式を組み込んだコンピューターに、肌(角層)の偏光顕微鏡画像をインプットし、肌のセラミド量を測定。(図3)。

結果の概要

1.偏光顕微鏡でテープストリッピングサンプルを観察することで、セラミド量を測定

図4:偏光顕微鏡の観察による白く光る角層細胞

セラミドは肌(角層)中でラメラ構造を形成し、偏光顕微鏡で白く見えます。粘着力が弱い特殊なテープを皮膚に付けて、剥がして採取した角層を偏光顕微鏡で観察すると、角層細胞部分が白く光ることを確認しました。この光り方には個人差があります(図4)。

図5:肌のセラミド量推定式の算出方法

光り方をコンピューターで解析したところ、肌のセラミド量と関係があることを発見、この関係性を推定式として利用することで、迅速なセラミドの測定が可能となりました(図5)。

2.AI技術(機械学習法)の利用により、測定をさらに簡便かつ効率化することに成功

図6:AIによる肌のセラミド量推定式構築

また、同じ画像と正確なセラミド量をAIに学習させる「機械学習法」を用いることで、さらに簡単に、精度よくセラミド量の推定ができることを発見しました(図6)。

今回の技術を利用することで、今まで数日程度かかった測定が、わずか数分で完了します。また、必要な機器は偏光顕微鏡のみのため、研究機関ではない店頭などでの測定も可能となり、アトピー性皮膚炎の発症予防にも繋がるものと考えています。

【用語解説】
○アトピックドライスキン…角層の水分保持能力およびバリア機能が低下している、かさついた皮膚。
○テープストリッピング…粘着テープを皮膚に貼ってはがすことで、角層を採取すること。顕微鏡などで拡大して観察することで、角層剥離画像を得ることができる。
○ラメラ構造…薄い層状または板状の構造が規則正しく配列した構造。セラミドなどを主成分とする角層細胞間脂質はラメラ構造を形成するが、バリア機能の低下に伴って構造が乱れる。ラメラ構造は角層バリアの形成に重要と考えられている。

以上