足がつる(こむら返り)を治す
フルマラソンを走るランナーにとって、避けたいトラブルのひとつが「足つり(こむら返り)」です。
レース中、「ピキッ」ときてしまうと、楽しく走れないだけでなく、思い描いていた目標を達成することが難しくなってしまいます。フルマラソンで2時間28分のベストタイムを持ち、ランニングドクターとしても様々な大会で医療支援を行っている八潮中央総合病院の諏訪通久先生に、「足つり(こむら返り)」撃退法について、聞いてきました。
弊社から諏訪先生に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。
私たちの身体は、脳からの指令によって筋肉を収縮させることで、生活やスポーツに必要な動作を実行することができます。この脳の指令は、電気信号という形で神経を通じて、筋肉に届けられます。この電気信号が筋肉にうまく伝わらず、異常収縮、すなわち脳の命令に反して筋肉が収縮してしまうと、けいれんが起きます。では電気信号の伝達を妨げる要因とは何なのでしょうか。ランニングという状況下で起こりやすいのは、下記の2点
この2点を防いでいくのが、下記に紹介する4つのポイントなのです。
それでは具体的に解説していきましょう。
医師として体力をつけるために走り始める。初マラソンでいきなりサブスリーを達成すると、ぐんぐん記録を伸ばし、2017年2月の別大マラソンでは、2時間28分57秒。現在は埼玉県にある八潮中央総合病院に整形外科医として勤務。(2024年現在)
ゆっくり長く走るトレーニングを、LSD(Long Slow Distance)と呼びます。このトレーニングの目的は、体内で使われていなかった末梢毛細血管を発達させることにあります。これにより血流が良くなることで、血中の疲労物質を除去しやすくなります。目安は「不快」に感じるくらいゆっくり、最低でも90分以上は走り続けましょう。
足がつりやすいのは、大きな筋肉がついている太ももよりも、筋肉の小さなふくらはぎです。地面を蹴るような走り方をしている人は、ふくらはぎに負担がかかりやすい走り方をしていると言えます。私は大きな筋肉であるお尻とハムストリングス(太ももの裏)を意識して走っています。
脳からの電気信号を伝えるには、体内で電解質と水分のバランスがとれていなければなりません。これを乱す要因が、発汗です。汗には水分だけでなく、電解質(ナトリウムやカリウムなど)も含まれているため、水だけ摂っていると、このバランスが崩れ(体内で水分の比率が通常よりも高くなる)てしまいます。多くのスポーツドリンクには、糖質だけでなく電解質も含まれています。レース前、そしてレース中も、なるべくスポーツドリンクを摂るようにしましょう。
これまで3つポイントを紹介してきましたが、これを実施したからといって、必ず「足つり(こむら返り)」が防げるわけではありません。足のつりやすさは、体質やその日のコンディション、加齢によっても変わってきます。大事なレースで、もしも足がつりそうになったら……。そんなときに備えて、レースには芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)を持って走ることをおすすめします。芍薬甘草湯には即効性があり、レースの備えにピッタリです。 芍薬甘草湯とは、その名のとおり、芍薬(しゃくやく)と甘草(かんぞう)の2つの生薬で作られた漢方処方です。芍薬に含まれるペオニフロリン、甘草に含まれるグリチルリチン酸などの成分が筋肉を弛緩させることで、「足つり(こむら返り)」の痛みとこわばりを治してくれるといわれています。摂り方のポイントは3点。
足のけいれんが
ひどくなる前に摂る
飲むのは、筋肉がピクピクしたり、疲労とは明らかに異なる違和感を覚えるなど、「足つり(こむら返り)」の前兆が出始めた時。完全に足がつってしまう前に摂るようにしましょう。
止まらないで
摂る
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)を摂る際は、ペースを落としても、完全には止まらないこと。一度止まってしまうと、筋肉もメンタル的にも、もう一度レースペースで走るのが難しくなります。(もちろん完全につってしまったときは、この限りではありませんが)。
タブレットタイプで
摂る
持って行く芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)は、持ち運びしやすいタブレットタイプを選びましょう。
粉末タイプだととても飲み込み難く、味も苦いです。
またそれを解消しようと水分を多く摂りすぎると、走りにも悪影響が出ます。私は自分のレースでは、タブレットタイプをよくナンバーカードの裏に貼って持っていきます。
皆さんはレース中、「ドクター」のビブスを着て走っているランナーを見たことがありませんか?
私が所属している「日医ジョガーズ」は、ランニング好きな医師たちが集まった団体で、全国でランニング大会の医療支援活動を行っています。
そのひとつがランニングドクターです。その名の通り、自ら走りながら、大会中に何らかのトラブルに見舞われたランナーに対して初期対応を行っています。その多くのランニングドクターが、芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)を持って走っています。
緊急の医療対応が求められるときに、自分の足がつっていては、十分に対応ができない場合があります。
そのため、万が一足がつっても、すぐそれを回復させる必要があるからです。
芍薬甘草湯は、そのくらいドクターにも信頼されている漢方なのです。
※専門家のコメントは商品の推奨及び、商品の効果効能を保証するものではありません。