こんな睡眠のお悩みに。
「疲れているのに、いざ布団に入ると目が冴える」「夜中に何度も目が覚めてしまい、朝起きても疲れが取れていない」といった悩みはありませんか。睡眠は脳や身体の疲労を回復させ、明日や将来の心身の健康を保つために欠かせないものです。誰でも何かをきっかけに眠れなくなる場合もありますが、その状態が常態化するのは避けたいものです。この記事では、眠れない理由と考えられる原因、対処法などを解説します。
やなぎはら まりこ柳原 万里子先生
眠りと咳のクリニック虎ノ門
https://sleep-toranomon.com/
眠りと咳のクリニック虎ノ門https://sleep-toranomon.com/
医学博士。日本睡眠学会総合専門医・指導医。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医。
2022年に「眠りと咳のクリニック虎ノ門」を開院。皆さまの睡眠と健康寿命を守る、をモットーに女性ならではの丁寧な視点で多岐にわたる睡眠障害の診療と臨床研究、啓発活動を行う。
著書
※弊社から柳原先生に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。
ミドルエイジ(中年)以降に増加するのが不眠症状です。仕事や家庭で責任のある立場になる場合も多く、家族の介護や自分の身体の変化が重なり、ストレスや睡眠の問題を抱えやすい年代です。加齢に伴う睡眠自体の変化も重なり、何かをきっかけに始まった不眠症状が慢性化しやすいケースもこの年代の特徴といえます。「眠れない」には、さまざまな要因が関係しています。思い当たるところがないか、今一度チェックしましょう。
不安やストレスを抱えていたり、または前向きな内容であっても考え事をしたりすると、脳が活性化し、自律神経は覚醒を促す「交感神経系優位」の状態になります。眠る前にこの状態になると寝付きが悪くなり、眠りが浅くなるといった「たかぶり不眠」を引き起こします。
このほか、電子機器の使用、たとえば就寝前にスマートフォンやパソコンなどでショッキングなニュースや映像を目にしたり、スリリングなゲームをしたりすることも脳を刺激し「交感神経系」を優位にしてしまうため「たかぶり不眠」につながります。
日本は夜でも明るく、通信環境の普及により深夜でも多くの活動ができるようになりました。都市部では24時間営業の店舗も増え、交通機関も深夜まで運行しています。便利になった反面、深夜までの残業や時間外の対応が可能となり、夜勤や交代勤務も増加しています。またSNSや動画配信サイトが普及し、就寝前の夜更かしの誘惑が増えたため、睡眠習慣の乱れを生じやすくなりました。
私たちの身体には、「夜になったら眠る」という体内時計と呼ばれる仕組みがあります。この仕組みは毎日規則正しい時刻に寝起きする習慣で保たれます。たとえば、就寝時刻が日によってバラバラであったり、休日は昼まで眠っていて遅起きをしたりする、といった生活に心当たりはないでしょうか。不規則な睡眠習慣は「夜になったら眠る」という体内時計の仕組みを乱し、入眠困難、中途覚醒、起床困難、日中の眠気などの不眠症状や日中の不調の原因となります。
睡眠も身体と同じように年をとります。布団の中にいる時間(就寝時間)のなかで実際に脳が眠っている時間は赤ちゃんに近いほど長く、加齢とともに減るのが正常な変化です。たとえば、25歳では就寝時間のなかの7時間近くを実際に眠れますが、45歳では6.4時間、65歳では6時間程度に減ると報告されています※。言い換えると、入眠までの時間が延び、中途覚醒や早朝覚醒が増える状態です。ぐっすりと眠る力が年齢とともに減少してしまう事実は、何かをきっかけに始まった一時的な不眠症状を慢性化させる要因の1つとなります。
加えて女性では更年期も睡眠に影響します。女性ホルモンの急激な変動は睡眠の質を悪化させる要因として知られています。月経による女性ホルモンの変動は月単位の数日間ですが、更年期では閉経前後の数年間、長い場合には約10年間にわたり女性ホルモンが大きく増減を繰り返します。そのため、不眠症状も長引きやすくなります。
出典
※Maurice M Ohayon et al. Meta-analysis of quantitative sleep parameters from childhood to old age in healthy individuals: developing normative sleep values across the human lifespan, Sleep. 2004;27(7):1255-73
騒音や眩しさ、寝苦しい室内温度といった不適切な寝室空間も眠りを妨げる原因となります。カフェインやアルコール、たばこなどの嗜好品も摂取する時間帯によってはうまく眠れない原因になる可能性もあります。そのほか、身体の痛みやかゆみ、身体的・精神的な疾患の症状、持病に対する治療薬が不眠の原因となって眠れない場合もあります。
布団のなかで無理に眠ろうとがんばるのは、むしろ脳の興奮を高め、かえって寝付きが悪くなる「たかぶり不眠」につながります。眠れないときの対処法をチェックしてできる項目から始めましょう。
眠りに大切なのは「安心できて心地が良い」ことです。就寝前に自分をほぐすリラクゼーション法を見つけ、日々の睡眠ルーティンとして取り入れてみましょう。軽いストレッチや瞑想、腹式呼吸、心地良い音楽、アロマなど、さまざまな方法があります。自分自身に合ったリラックス方法を見つけるのが、良い眠りにつながる鍵になります。
なかなか寝付けないとき、途中で目が覚めたときに時計を見てしまいがちです。しかし、時計を見てもがっかりするか、「眠らなければ」と焦るかのどちらかです。眠れないときにはなるべく時計を見ないように心がけましょう。そしてどうにも眠れそうにないときは思い切って布団から一度離れてみるのも1つの手です。静かで少し暗い、安心できる場所でしばらく過ごし、気分が落ち着いて、眠気が訪れたら布団に戻りましょう。
「夜になったら眠る」の体内時計の仕組みを利用して、身体に寝起きの時間を覚えてもらう作戦です。就寝1時間前からは電子機器などの眩しい光を浴びるのは避け、毎日同じ時刻に就寝するよう心がけましょう。夜に上手く眠れた日もそうではない日も、朝はできるだけ毎日同じ時刻に起きるのが大切です。昼間の疲れや眠気がつらいときには午後の15時までに30分以内の仮眠をとって乗り切りましょう。日々規則正しく寝起きすることにより体内時計が整えられ、体内時計の乱れによる不眠症状が生じにくくなります。
まず、目覚めたい時刻より前に寝室が明るくなっているのが理想的です。遮光カーテンや雨戸をしている場合には工夫ができないか検討してみましょう。朝食を摂ることも、体内時計を整えるのに役立ちます。特に、朝食に必須アミノ酸の1つである「トリプトファン」を多く含む食品(大豆、チーズ・ヨーグルトなどの乳製品、トマト、バナナ、卵、魚、肉など)を摂取すると、日中は幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」に変化し、夜になると睡眠を促す「メラトニン」へと変化することが知られています。午前中のうちに30分程度の日光浴をして、体内時計を整えるのに役立てましょう。明るい場所で朝食を食べたり、出勤の道で日差しを浴びたりするのもおすすめです。
私たちの身体には「疲れたら眠る」という仕組みがあります。日中に積極的に活動し、脳と身体の疲れをバランスよく溜め、より多くの疲れをお布団まで持って行くことが良い睡眠につながります。夜の寝落ちや長過ぎる昼寝は、せっかく溜めた疲れを解消してしまうため避けましょう。日常生活にウォーキングや階段昇降などの有酸素運動の機会を多く取り入れ身体の疲れと体力をつけるよう工夫をしましょう。ただし、筋トレやジョギングなどの心拍数があがるような激しい運動は交感神経系が優位になり目が覚めてしまうため、就寝直前に行うのはやめましょう。
カフェインの覚醒作用は、若年者で4時間程度、高齢者では6時間以上続くと知られています。カフェインを多く含む飲料(コーヒー、緑茶、エナジードリンクなど)は日没以降に摂取するのは避けましょう。一般的にアルコールは寝付きを良くしますが、その後の眠りは浅くなります。飲酒は就寝3~4時間前までにとどめるのが理想的です。また、カフェインとアルコールには利尿作用もあり、夜中のトイレの回数が増える原因にもなります。たばこに含まれるニコチンにも覚醒作用があるため就寝2時間前までにとどめましょう。
セルフケアを試みても眠れない状態が続いているときは一般用医薬品(市販薬)の睡眠改善薬や漢方薬を試すのも可能です。ただし、一般用医薬品(市販薬)の使用により不眠症状や日中の具合の改善がない場合、効果があっても長期の使用が必要になりそうな場合には、医療機関を受診し適切な診断や治療を受けましょう。
睡眠改善薬は花粉症などの治療に用いられる「抗ヒスタミン剤」と同類で、花粉症の薬の副作用の眠気を利用して入眠に役立つよう開発されたものになります。医師の処方箋が必要な、いわゆる「睡眠薬」と異なり、入眠の手助けはしてくれますが眠りを深くする効果は期待できません。睡眠改善薬は使用を避けるべき場合や、他の薬と併用できない場合、副作用を生じる場合もあります。薬剤師または医師に相談してから使用しましょう。
漢方薬も、眠れない状態を改善する一般用医薬品(市販薬)の選択肢の1つです。仕事のイライラやストレス、不安によって神経がたかぶって眠れない場合、更年期の症状がある場合など自分の状態や体質に合った漢方薬を選ぶ事も大切です。また、漢方薬だからといって副作用がないわけではありません。薬剤師または漢方薬剤師などの専門家に相談し、自分に合った漢方薬を安全に使用しましょう。
眠れない状態に使用される主な漢方薬※
※下記1)2)より引用改変
1)吉永 亮, 漢方薬による不眠治療, 成人病と生活習慣病 48巻 8 号, P886-889
2)山田和男, 抑うつ・不安・不眠の漢方治療, ファルマシア47巻9号2011, P844-848
生活習慣や睡眠習慣を整え、リラクゼーションや一般用医薬品(市販薬)の睡眠改善薬や漢方薬などを試みても眠れない状態が続く場合は睡眠外来へ相談しましょう。受診の目安は上手く眠れない日が週に3日以上あり、2週間以上続いていて日中の不具合を感じている場合です。ただし、眠れないことによる日中の心身への支障が大きい場合は、2週間を待たずに早めに受診してください。
眠れないという症状の背景には、内科的な病気や精神的な病気、不眠障害以外の睡眠障害が隠れている可能性もあります。何らかの原因により不眠になることは誰にでもありますが、原因が思い当たらない場合もあります。ミドルエイジ(中年)やそれ以上の年代は一時的な不眠が常態化し、慢性不眠障害へと発展しやすい傾向があります。困っている場合には「このくらいなら我慢しよう」と思わずに、気軽に睡眠外来や専門医へ相談してみるのも大切です。
Q1:眠りたいのに眠れない理由は?
A1:悩み事や考え事、就寝前に見たスマホやパソコンの刺激的な情報などにより、脳が活性化し、目が冴えてしまう「たかぶり不眠」が原因の1つとしてあげられます。不規則な睡眠習慣、加齢による睡眠の変化、不適切な生活習慣や寝室環境、嗜好品なども、眠れない原因となります。ほかにも、身体の痛みやかゆみ、身体的・精神的な疾患の症状、持病に対する治療薬が不眠の原因となる場合もあります。
Q2:眠りたいのに眠れないときの対処法は?
A2:「たかぶり不眠」への対策としては、無理に眠ろうとしてがんばらないことです。まずは心身をリラックスさせて、眠気が訪れるまで安静にして過ごしましょう。規則正しく寝起きし、適度な運動をする、嗜好品などの生活習慣に気を付けることも対処法としてあげられます。一般用医薬品(市販薬)の使用も可能ですが、眠れないことによる日中への支障が大きい場合、もしくは長期化しそうな場合には無理をせず早めに睡眠外来を受診し、医師に相談しましょう。
「眠りたいのに眠れない」「疲れているのに眠れない」の原因には、ストレスや不規則な睡眠習慣、不適切な生活習慣・寝室環境、加齢による睡眠の変化など複数の要因が挙げられます。就寝前のリラクゼーションを心がけ、睡眠習慣や生活習慣を整えるのは良い睡眠に役立ちます。
それでも改善しない場合には一般用医薬品(市販薬)の睡眠改善薬や漢方薬を試すのも可能です。ただし、これらの一般医薬品(市販薬)をご使用の際は、用法・用量を厳守し、持病や他の薬を服用している方は薬剤師または登録販売者に必ずご相談ください。
これらの対処法を行っても眠れない状態が解消されない場合は、不眠症状を慢性化させないために、また原因となる他の疾患を鑑別するためにも、無理をせず早めに医療機関を受診しましょう。
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