虫歯や歯周病の予防には、いつもの歯みがきだけでは不十分。歯と歯の間をお掃除する「歯間ケア」が大切です。面倒くさそう…やってみたけど続かなかった…という方は、自分に合ったアイテムが選べてなかったからかも。
歯は一度失うと元には戻せません。しかも、単に歯がなくなるだけでなく、歯周病菌は、血液から全身に回って、脳卒中や心筋梗塞のような病気の原因になることも…。
そうならないために!今回は歯科衛生士さんに、初心者でも続けやすいアイテムの選び方を教えてもらいました!
歯科衛生士
重野悠(しげの はるか)
2010年 山梨県歯科衛生専門学校卒業。地元山梨県と都内歯科医院にて勤務。2013年にエイチエムズコレクション入社。育休を経て、現在は学会活動や論文の執筆、企業との臨床研究、歯科衛生士学校での講演、現役歯科衛生士への教育などに携わっている。
ちゃんと毎日ハミガキしてる!という方は多いかもしれませんが、歯と歯の間のお掃除「歯間ケア」までやっていますか?
もし、歯医者さんに行く日が近づいて、慌ててデンタルフロスを使っているなら、実は、それバレています。歯と歯の間の歯垢の状態や歯ぐきの腫れを見ると、毎日丁寧にやっていたのか?一夜漬けなのか?は、歯科医や歯科衛生士が見ると、一目瞭然なんです。
特に、分かりやすいのが歯間の汚れです。密着した歯の間に汚れなんてたまるの?って思っていませんか?実は、歯ブラシだけでは、歯のすき間まで届かず、落とせる歯垢(しこう)はせいぜい6割くらいなんです。ですが、さらに歯間ケアも一緒に行うことで、8~9割まで汚れが落とせます。
ただ、患者さんからは、「歯医者さんで言われて使ってみたけど、難しくて続かなかった」「忙しくて、面倒で続かなかった」という声をよく聞きます。
「歯ぐきを傷つけてしまったので怖い…」という方も。もしかすると、たまたま試したアイテムが、自分に合っていなかったということもあるかもしれません。
歯間ケアにおいて、私が1番大事だと思うのは、1日1回で良いのでとにかく毎日やることです。
だから、私が考える歯間ケアのアイテム選びのポイントは
の2つ。
歯に残った磨き残しは、約24時間で歯垢になり、さらに48時間ほどで徐々に硬い「歯石」(しせき)に変わってしまいます。歯石になると、歯科でのクリーニングじゃないと落とせないので、固まってしまう前に効果的な歯間ケアを毎日続けることが大切です。
お気に入りの歯ブラシや歯磨き粉のように、自分にとって使いやすくて続けやすいアイテムをみつけて、歯みがきと一緒に、毎日の習慣にしてほしいですね。
歯間ケアで使うのは「デンタルフロス」と「歯間ブラシ」。どちらも歯と歯の間をお掃除するものですが、それぞれ使い方や使う場所が違います。
まずデンタルフロスは、ナイロン製などの糸を歯と歯の間に通して汚れをかき出すもの。歯と歯が密着しているところや歯ぐきの溝(歯周ポケット)など、ブラシが入らない部分の歯垢をしっかり除去できます。使っていない方は、年齢問わず、今すぐ使い始めてほしいです。
歯間ブラシは、小さなブラシみたいな形をしています。歯の根もと部分のすき間(三角スポット)のお掃除に最適。年齢とともに歯ぐきが下がってくると、三角スポットが広がってきます。食べカスが詰まりやすくなったら、歯垢も溜まりやすくなっているサインです。そういった方は、ぜひ歯間ブラシを使いましょう。特に、歯ぐきが弱っている人は、やさしくケアすることも忘れずに。
デンタルフロスをメインに、歯の根もとのすき間が大きい人は、歯間ブラシを併用するのがおすすめです。ご自身の歯の状況にあわせて使いわけてみてください。
歯医者さんで糸だけのデンタルフロスを勧められたことありませんか?確かに、歯のカーブに沿わせられたり、歯と歯ぐきの溝(歯周ポケット)の汚れも掻き出せたりとしっかり扱えたら最強です。ただ、扱いが難しく慣れるまで時間がかかり続けられないという方も多いんです。
また、お口に入れた糸を直接手で掴むので、歯の汚れが手についてしまったりします。洗面台に汚れが飛び散ったりもします。正直、みなさんが難しい、続けられないと思っても仕方ないかなと思います。
なので、私は、初めての方や続けられない方には、持ち手(ホルダー)付きのフロスをおすすめしています。糸の長さの調整も不要で、片手で扱えますし、感覚的に、狙った歯間にもサッと入れられるので、忙しい方や器用でない方にもぴったりです。
例えば、小林製薬の「糸ようじスルッと入るタイプ」。初めての方にオススメな、扱いやすい持ち手つきフロスです。細くてなめらかな糸が使われていて名前のとおり細いすき間にもスルッと入るので、「すき間が狭くて糸が入りにくい…」「きつい糸だと、抜くときに詰め物も一緒に取れてしまわないか心配…」「勢いよく入れて歯ぐきに刺さった。歯ぐきを傷つけたことがある…」という方にも良いかと思います。
また、扱いやすいだけじゃなく、清掃効果の面でもおすすめできます。糸がゆるく張られる工夫がされているので、糸だけのフロスみたいに歯のカーブに沿わせて歯垢をかき出しやすく、歯と歯ぐきの溝(歯周ポケット)までグイッといれるときも、やさしくフィットして安心して使えますよ。テクニック不要で行き届きにくいところまでちゃんと届くから、初めての方の毎日の歯間ケアにぴったりです。
歯間ブラシは、初めての方でも安心して使えるという点で、ゴムタイプがおすすめです。
歯間ブラシには「金属ワイヤータイプ」と「ゴムタイプ」があるんですが、金属ワイヤータイプは太さが合ってないものを使ったり、慎重に扱わないと歯や歯肉を傷つけたりすることがあります。金属臭や金属が歯にあたる感じが苦手な方もいますね。金属の見た目から「怖そう、痛そう」と感じて始める勇気がでなかったり、過去に歯肉を傷つけた経験があると、苦手意識が強くてなかなか続かない人もいます。
金属ワイヤータイプのほうが清掃効果が高い、とゴムタイプをおすすめしない歯科衛生士さんもいますが、最近の研究では、効果の面でもゴムタイプは金属ワイヤータイプと変わらないという報告があります(※1)ので、私は、初めての方でも安心して使える歯間ブラシとして、ゴムタイプをおすすめしています。
小林製薬「やわらか歯間ブラシ」は、歯と歯ぐきにやさしいゴムタイプの歯間ブラシ。金属ワイヤーのように歯や歯肉を傷つける心配がなく、気軽に毎日使えます。
歯のスキマが広がっている方や歯ぐきが下がってきて敏感になっている方にも不安なく使えると思います。ゴムが歯にしっかり密着して歯垢をしっかり取り除いてくれるのですが、キュキュっと気持ちの良い音がしますよ。
歯間ブラシは、歯間の広さによってサイズを変えなくてはいけないのですが、やわらか歯間ブラシは、ブラシの先端が細くて、根元が太い構造になっているので1本で3サイズ分の歯間の広さに対応でき、自分のサイズが分からないという人でも使い始めやすいですよ。
フロスも歯間ブラシも毎日続けていただきたいので、取り扱いがしやすくて、負担に感じないものを選んでほしいですね。
歯間ケアをするときは、デンタルフロスや歯間ブラシを使ってからいつもの歯みがき、という順番が効果的です。歯の間の汚れを落とした後に歯ブラシで磨く方が、その逆よりもより効果的に歯垢が落とせるという研究結果があります(※2)。
食べカスは、約24時間で歯垢に変わるので、歯間ケアは1日に1回できたらOK!
たとえば、「寝る前の1回!」と決めれば、ちょっと気楽に続けられそうですよね。
毎日続けることが何より大切なので、
ポイントは
の2つ。
ぜひ参考にして、自分が続けやすいアイテムを選んでみてくださいね。
あの時始めていてよかった…!と思う時が必ずくるので、まだはじめていない方は、今日からぜひ取り組んで見てください!
参考文献
1.NL Hennequin-Hoenderdos, et al. Efficacy of a rubber bristles interdental cleaner compared to an interdental brush on dental plaque, gingival bleeding and gingival abrasion: A randomized clinical trial. International Journal of Dental Hygiene, 2017,vol16:380-388
2.Fatemeh Mazhari,et al. The effect of toothbrushing and flossing sequence on interdental plaque reduction and fluoride retention: A randomized controlled clinical trial. JOURNAL OF Periodontlogy,2018,Volume89:824-832