長引く咳。こんな症状が続く場合は要注意。考えられる病名とは?
咳が長引く場合、いくつかの病気が考えられます。咳を伴う疾患は咳がどれくらいの期間続くか、咳が湿っているか乾いているかなどで特徴があります。
- 急性の咳(急性がいそう)
-
咳が長引く場合、いくつかの病気が考えられます。咳を伴う疾患は咳がどれくらいの期間続くか、咳が湿っているか乾いているかなどで特徴があります。
風邪(普通感冒)
[ 原因や要因 ]
ライノウイルスやコロナウイルスなどのウイルス感染
[ 咳の特徴 ]
初期には乾いた咳が多く、進行すると痰を伴う湿った咳に変わることがある。軽度から中等度の咳が続く。
急性気管支炎
[ 原因や要因 ]
ウイルス感染が最も多く、稀に細菌感染も。風邪から進行することが多い。
[ 咳の特徴 ]
最初は乾いた咳だが、数日後には痰を伴う湿った咳に変わる。胸の不快感や痛みを伴うことがある。
インフルエンザ
[ 原因や要因 ]
インフルエンザウイルス(A型、B型)
[ 咳の特徴 ]
乾いた激しい咳が特徴。高熱、全身の痛み、倦怠感などの全身症状と共に現れることが多い。
咽頭炎・喉頭炎
[ 原因や要因 ]
ウイルス感染(風邪ウイルスが多い)、過度の声の使用、喫煙
[ 咳の特徴 ]
乾いた咳で声がかすれる。声帯の炎症により、物を飲み込む際に強い痛みを感じる。
急性副鼻腔炎(急性鼻副鼻腔炎)
[ 原因や要因 ]
ウイルスや細菌感染、アレルギー
[ 咳の特徴 ]
鼻で生成された粘液が喉に流れ込むことが原因で、痰を伴う咳が出る。これは後鼻漏と呼ばれ、特に横になると咳が悪化することがある。
細菌性肺炎
[ 原因や要因 ]
細菌(肺炎球菌、インフルエンザ菌など)
[ 咳の特徴 ]
痰を伴う湿った咳が特徴。しばしば黄色や緑色の痰が出る。高熱、胸痛、息切れなどの症状を伴う。
気管支喘息の急性発作
[ 原因や要因 ]
アレルゲン(ダニ、花粉、ペットの毛など)、運動、感染症、ストレス
[ 咳の特徴 ]
喘鳴(ゼーゼー音)を伴う乾いた咳。夜間や早朝に悪化することが多い。呼吸困難を伴う。
- 遷延性の咳(遷延性がいそう)
-
遷延性の咳とは3〜8週間続く咳を指します。特に風邪やインフルエンザの回復期に見られることが多い感染後がいそうと呼ばれる状態は、風邪が治った後も咳が止まらない主な原因です。
感染後がいそう
[ 原因や要因 ]
風邪やインフルエンザなどのウイルス感染後に、気道が過敏な状態が続く。
[ 咳の特徴 ]
乾いた咳が主で、夜間に悪化することが多い。運動や寒暖差、埃などで悪化しやすい。
アトピーがいそう
[ 原因や要因 ]
花粉、ダニ、ペットの毛などのアレルゲン
[ 咳の特徴 ]
主に乾いた咳が特徴で鼻水、くしゃみ、目のかゆみなどのアレルギー症状を伴うことが多い。
- 慢性の咳(慢性がいそう)
-
慢性咳嗽は8週間以上続く咳を指します。この咳は、気道の慢性的な炎症や刺激によって発生することが多くなっています。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
[ 原因や要因 ]
主に喫煙、長期の有害物質曝露
[ 咳の特徴 ]
痰を伴う湿った咳が特徴。息切れや呼吸困難を伴うことが多い。
喘息
[ 原因や要因 ]
アレルゲン(ダニ、花粉、ペットの毛など)、運動、感染症、ストレス
[ 咳の特徴 ]
乾いた咳が主で、ゼーゼーとした音を伴う。夜間や早朝に悪化することが多い。
逆流性食道炎(GERD)
[ 原因や要因 ]
胃酸の逆流
[ 咳の特徴 ]
胃酸の逆流により食道の粘膜に炎症を引き起こし咳が発生する。横になると悪化する乾いた咳で胸やけ、喉の不快感など。
後鼻漏症候群
[ 原因や要因 ]
慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎
[ 咳の特徴 ]
鼻水が喉の後ろに流れ込むことで咳を引き起こし、横になると悪化することが多い。
こんな咳が出る時は病院を受診しましょう
風邪や軽い感染症による咳は一般的に数日から数週間程度で改善しますが、咳は重篤な疾患のサインの可能性があるため、以下のような咳が出る場合は早めに医療機関を受診してください。
長期に続く咳
安静にしているにも関わらず、咳が1ヶ月以上続いている場合は慢性的な疾患を発症している可能性があります。
日中も止まらない発作的な咳
朝晩だけでなく日中も咳が出続け、日常生活に支障がある場合や、一度咳が出るとしばらく止まらない場合は、肺や気道に重大な疾患が隠れている可能性があります。
痰が強く絡む咳
痰とは主に細菌やウイルスの死骸が固まったものです。感染症が治る際に痰が出るのは一般的ですが、黄色や緑色の痰がいつまでも続く、痰に血が混じっている場合はリスクの高い感染症である可能性があります。特に血が絡む場合は気管支拡張症や結核、肺がんなども疑われます。
体重減少を伴う咳
咳とともに体重減少が見られる場合には、慢性の呼吸器感染症やがんなども疑われます。速やかに医療機関を受診し、医師の診察を受けることが勧められます。
風邪が治った後の咳の対処法
咳が発生すると、その咳が原因で更に気道を痛めることになり症状が長引いてしまいます。そのため風邪が治った後も咳が続く場合、喉への刺激を避け、できるだけ咳が出ないよう対処することが大切です。
喫煙やアルコールの摂取、辛い食べ物などは、喉を刺激して咳を悪化させる可能性がありますので、これらを控えるようにしましょう。また、こまめに水分を摂取し、喉を潤すことが重要です。
室内を適度に加湿し、乾燥を防ぐことでも喉への負担を減らすことができます。風邪が治った後も外出時にはマスクを着用し、空気の悪い場所にはいかないなど喉に負担をかけないよう注意することも大切です。
また、体を健康な状態にするためには自身の免疫力が重要です。十分な睡眠と栄養バランスの取れた食事で免疫力を高めることで体の自然な治癒力をサポートします。
さらに、咳が続く場合は、医療機関を受診することも考慮してください。特に、夜間の咳で睡眠が妨げられるなど日常生活に支障をきたす場合には、医師に相談して適切な薬を処方してもらうことが重要です。漢方薬である麻杏甘石湯や麦門冬湯も、適切に使用されれば咳の症状を和らげるのに効果的です。


- <山形先生のプロフィール>
- 山形 昂(やまがた あきら)
- 2015年、京都大学医学部卒。田附興風会医学研究所北野病院で初期研修。倉敷中央病院を経て、2020年4月、京都大学大学院博士課程入学。2022年、学術振興会特別研究員(DC2)。現在はiPS細胞研究所(CiRA)で難治性呼吸器疾患の病態解明と再生医療に取り組んでいる。呼吸器専門医、気管支鏡専門医。
※弊社から山形先生に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。