プラスチック使用量76%減!紆余曲折12年、「消臭元」のチャレンジ

プラスチック使用量76%減!
紆余曲折12年、「消臭元」のチャレンジ

小林製薬が2023年4月に発売した「消臭元 SAVON」が、発売から3カ月(2023年7月13日時点)で出荷個数170万個を突破しました。この数量は、当社が直近5年間で発売した芳香消臭剤の平均出荷個数と比較して約2.4倍にあたります。
※新製品(リニューアルや香りのアイテム追加品を除く)の発売から約3カ月の平均出荷個数

本製品最大の特徴は、大容量リキッドタイプの「消臭元」ブランドとして1995年の発売以来初めて、詰め替えができる仕様になっている点です。「消臭元」ならではの製品構造の特徴から、詰め替え対応品の開発ハードルが高く、なんと10年以上の歳月をかけ発売に至りました。
詰め替えがまだ浸透していない市場においてチャレンジングな取り組みとなる本製品。歴代の担当者たちが開発の経緯や工夫点、製品にかける思いについて語りました。

(左)「消臭元SAVON シャンプーしたて ほのかなブルーソープ」、(右)「消臭元SAVON 洗濯したて ふんわりフローラルソープ」の本体と詰め替え用

(左)「消臭元SAVON シャンプーしたて ほのかなブルーソープ」、
(右)「消臭元SAVON 洗濯したて ふんわりフローラルソープ」の本体と詰め替え用

よりエコな製品開発のため、リサイクルセンターにまで足を運んだ

お客さまにとっての“あったらいいな”と、環境配慮の両方をカタチにしたエコな製品をもっと増やしていきたい。この強い想いが、今回の「消臭元SAVON」開発に至った大きな動機になっています。

製品の最大の特徴は、大容量リキッドタイプの「消臭元」ブランドとして初めて、詰め替えができる新仕様を開発したところにあります。使用後に毎回捨てていた本体容器を再利用し、消臭フィルターを取り替え新しい液体を入れるだけで使える。その開発にいたる苦労や紆余曲折は後述するとして、本体容器と詰め替え用を購入・併用するだけで、プラスチック使用量を約76%減らせるエコ仕様になっているのです。
※消臭元SAVONの本体容器を買い替えて使った際のプラスチック使用量と比較

「消臭元SAVON」開発担当の一人である技術開発部の石山は、石油由来のプラスチック使用量の削減について、「抜本的に取り組む必要があった」と話します。

石山

石山

SDGsの時代の要請に加え、年に数件程度ですが、お客様から「本体容器を捨てることに罪悪感がある」、という声も上がっていたんです。開発にあたり、本体容器の材料にポリプロピレンを採用したことは大きなポイントです。ポリプロピレンは一般的に分別回収や再加工がしやすく、日用雑貨や園芸用品など、様々な用途にリサイクルが可能と言われている素材。捨てられたゴミが実際にどうやってリサイクルされていくのか、リサイクルセンターに見学しに行ったことがあり、そこでお話を聞いて、ポリプロピレンはリサイクルにまわりやすい素材であることが改めて確認できました。

さらに消臭フィルターと容器部分を分別しやすい仕様にすることで、「消臭元SAVON」はよりリサイクルと相性の良い製品となりました。

手を汚さず、直感的に詰め替えられることが大事

詰め替え対応品の必要性は認識しているものの、実際に「消臭元SAVON」はどのような仕様にしたらよいのだろうか――。開発にあたって重きを置いた製品の方向性について、技術開発部の肖(しょう)はこう話します。

肖

まず、消臭フィルターを取り替える時にお客さまの手が汚れない仕様にすることは絶対条件でした。加えて、「説明書きを読まなくても直感的に使える」「エコの観点からできるだけプラスチックを捨てない仕様にする」といった点も外さないよう、さまざまな案を検討しました。
実際の検討段階の資料。手描きの設計図や試作を繰り返しながら、イメージを具現化していった

実際の検討段階の資料
手描きの設計図や試作を繰り返しながら、イメージを具現化していった

肖

モニター調査と試作を繰り返し、そこで上がってきた声を丁寧に拾いながら、「消臭元SAVON」の仕様を決めていきました。たとえば検討段階の仕様でモニター調査を実施していた時、一人の使用者の消臭フィルターを取り替える様子を見ると、フィルターから遠い部分を持っていたんです。お話を聞いてみると、フィルターに触れたくないので、できるだけ離れたところを持ち、取り替えていたということでした。こうした生の声や視点から何度も検討しなおし、今のSAVONの仕様を作り上げました。

12年という月日が、「看板製品に手を加える」仕事の大きさを物語る

詰め替えている様子。検討と試作を重ね、ようやく満足のいく仕様に至った

詰め替えている様子
検討と試作を重ね、ようやく満足のいく仕様に至った

そもそも「消臭元」シリーズの詰め替え対応品の開発は、2011年頃から社内でたびたび検討されてきました。しかし、ニーズやコスト、技術的ハードルの高さの問題などから、実現までにはなかなか至らず、大きな動きがあったのは2018年でした。

技術開発部の井實(いじつ)によれば、当時社内でも「プラスチック使用率の高い『消臭元』をなんとかしないと」、という機運は高まっていたそうです。また、他社のエコ製品にも刺激を受けていたと話します。

井實

井實

エコに特化した他社製品を見た時、大きな衝撃を受けたんです。“中途半端な”エコをしていないというか、環境に優しい上に優れた設計物を出されていました。非常にかっこよくて、ハイレベルな仕事をしているなと感じましたね。
ただ、実現までの道筋はなかなか見えませんでした。特に、「消臭元」の大きな特徴である「シャバシャバ」を維持しながら詰め替えもできるようにするには、消臭フィルターの出し入れが難しくなるなど、いくつもの高いハードルが存在し、最終的にこの時も開発を断念せざるを得なくなったんです。
「消臭元」の特徴である「シャバシャバ」と「香り調節」

「消臭元」の特徴である「シャバシャバ」と「香り調節」

しかし、この時は単に断念したわけではありません。その後につながる、よりエコな製品を目指す「消臭元」ブランドリニューアル方針の大枠が決まったからです。

井實

井實

現状、ファンの多い「消臭元」の現行品を詰め替え仕様に切り替えるのは難しいなと。そこで、現行品は再生プラスチックで環境対応しつつ、「シャバシャバ」といった仕様は変えずに引き続きお客様にご愛用いただく。一方、詰め替え対応品の開発はあきらめない。現行品とは別コンセプトで検討していくことになったんです。

そうして2021年、大容量リキッドタイプの「消臭元」全ラインナップで本体容器を再生プラスチックに切り替えることに成功。そしてこの度、シャバシャバはせずに詰め替え対応を優先した新仕様の「消臭元SAVON」を、現行品と併売という形で世に送り出すことに成功しました。
ここに至るまでにかかった月日は実に12年。「消臭元」という看板製品に手を加えるということは、それだけ大きな仕事でした。

「消臭元SAVON」を先駆けに、詰め替え可能な製品の普及に挑戦

今回は二本柱での展開となりましたが、将来的には全ての「消臭元」で詰め替えできる仕様に移行させることも検討しているとブランドマネージャーの米田は話します。

米田

米田

「消臭元」と一口に言ってもさまざまなラインナップがあり非常に高いハードルではありますが、環境配慮のためにもやがては全ての「消臭元」で詰め替えができるようにしていきたい気持ちがあります。「消臭元SAVON」の発売は、詰め替えがまだまだ浸透していない大容量リキッドタイプの芳香・消臭剤市場においてチャレンジングな試みなので、正直どれくらい受け入れてもらえるかわかりません。しかし、この先につなげていくためにも、「消臭元SAVON」は成功させないといけないと思っています

発売までに10年以上の月日をかけ、多くの社員たちによる試行錯誤の末に生まれた「消臭元SAVON」は、9月7日にシトラス調の香り「洗いあがり すっきりシトラスシャワーソープ」を追加発売しており、更なる勢いが期待されています。「消臭元 SAVON」は今後も、詰め替え可能な「消臭元」の足がかりとして、市場への浸透を目指していきます。

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