ニュースリリース

レポート

“紅麹”は食品の美味しさ向上にも活用できる素材
~肉や魚の食感、味の特徴に及ぼす効果を解明~

-2019年5月19日 第73回 日本栄養・食糧学会大会 (静岡市)にて発表-

小林製薬株式会社(本社:大阪市、社長:小林章浩)は、2016年にグンゼ株式会社より、食品素材“紅麹”に関する研究・販売事業を譲り受けました。以来、国内唯一の伝統的発酵法により製造した“紅麹”を用いて、機能性の研究、新製品開発、BtoB事業に取り組んでおります。今回、「“紅麹”を用いて発酵した調味料の成分や味の特徴(研究成果-?)」、「“紅麹”を用いて調理した肉や魚の食感、味の特徴に及ぼす効果(研究成果-?)」を解明し、2019年5月19日に静岡市で開催された「第73回日本栄養・食糧学会大会」において発表いたしました。

“紅麹”は米などの穀類にモナスカス属糸状菌(醸造用カビの一種)を繁殖させた鮮紅色の麹で、古来より中華料理に欠かせない紹興酒や、沖縄で滋養食として親しまれている豆腐ようの製造に用いられています。弊社では紅麹菌の伝統的固体発酵法による大量培養に世界に先駆けて成功し、その健康成分等の有用性も明らかにしてまいりましたが、“紅麹”を用いた食品や料理の味の特徴に関する研究はありませんでした。この度、“紅麹”を用いて醸造した汎用調味料“紅塩麹”を用いて成分や味の解析等を行った結果、以下の研究成果が得られました。

研究成果-Ⅰ“紅麹”を混合醸造した“紅塩麹”の旨味の増強と成分分析

試験結果①“紅塩麹”の旨味増強効果→“塩麹”と比較し旨味と甘味が増加。また、酸味が減少することにより、旨味がより顕著に。

試験結果②“紅塩麹”の旨味増加に起因する成分分析→“紅麹”によるタンパク質分解酵素活性化することで、総アミノ酸量が増加。

研究成果-Ⅱ“紅塩麹”が調理食品に及ぼす効果の解明

試験結果①“紅塩麹”の肉への効果→動物性タンパクに作用し、肉を軟らかく。同時に旨味やコクが強くなることで、臭みを感じにくくなり食べやすくなる。結果、味や全体の嗜好性も向上。

試験結果②“紅塩麹”の魚肉への効果→“紅塩麹”浸漬により身のハリが強まり(繊維が長くまとまる)、旨味も増加。

試験結果③“紅塩麹”の減塩効果→強い旨味により、減塩された料理の塩味を補填。

本研究成果より、全身のさまざまな健康に有益に寄与することが示唆されている“紅麹”は、食品の美味しさを向上する素材としても活用できることが明らかとなりました。当社は今後とも、“紅麹菌”が持つ代謝成分、健康効果、“紅麹”を活用した食品の美味しさ向上の有用研究を進め、その成果を社会に還元してまいります。

研究成果-Ⅰ
“紅麹”を混合醸造した“紅塩麹”の旨味の増強と成分分析

■背景
“紅麹”は米などの穀類にモナスカス属糸状菌を繁殖させた鮮紅色の麹で、味噌、醤油、食酢、酒類等の醸造食品をはじめ、様々な食品用途に使われています。本研究は、“紅麹”と“塩麹”で混合醸造した“紅塩麹”と従来の“塩麹”との味の違いを味覚センサーを用いて分析し、その違いを生み出す成分変化を検証しました。

■試験方法
“紅塩麹”は“塩麹”の一般的なレシピである、麹と食塩と水とを混合して30℃に保温し、1日1回かき混ぜて10日から20日間継続保温する方法で作製した上で、“米麹”と“紅麹”の混合割合を変えて使用しました。出来上がった“紅塩麹”ならびに“塩麹”は味覚センサーを用い味の特徴を分析、また味の特徴に起因する成分はタンパク質分解酵素活性ならびに総アミノ酸量を測定しました。

■結果
味覚センサーによる分析結果では、“紅塩麹”は“塩麹”に比べ旨味や甘味が増加、また酸味が減少していました。成分分析では、紅麹の混合割合が多いほどタンパク質分解酵素活性が増加、塩分が少なく紅麹の培養日数が長いほど総アミノ酸量は増加していました。

  • 試験結果①“紅塩麹”の旨味増強効果

    “紅塩麹”の旨味増強効果

  • 試験結果②“紅塩麹”の旨味増加に起因する成分分析

    紅塩麹”の旨味増加に起因する成分分析 紅塩麹”の旨味増加に起因する成分分析

■考察
“紅塩麹”は“塩麹”と比較して旨味が増加し、酸味の減少により旨味がより強く引き出されていました。“紅塩麹”の旨味増加に起因する成分は、“紅麹”中のタンパク質分解酵素により生成されるアミノ酸やペプチドであると考えられ、結果的に“紅塩麹”は、“塩麹”と比較し旨味を引き立たせる効果の優れた発酵調味料であることが示されました。

研究成果-Ⅱ
“紅塩麹”が調理食品に及ぼす効果の解明

■背景
本研究は、“紅麹”と“塩麹”で混合醸造した“紅塩麹”が食品、特に動物肉や魚肉の食感、味の特徴に及ぼす効果を検証しました

■試験方法
各種動物肉を“紅塩麹”、対照として塩水、“塩麹”(いずれも塩分濃度12%)に浸漬し、24時間後に肉の中心温度が80℃となるよう加熱した試料の硬度を測定しました。また、浸漬後焼き調理した試料について、官能評価および味覚センサー測定を行いました。魚肉についても浸漬時間(96時間)以外、同じ条件にて評価しました。また、塩分9%の“紅塩麹”を用いた浸漬肉の味評価も行いました。

■結果
浸漬後牛肉の食感評価においては、“塩麹”、“紅塩麹”、いずれも塩水に比べて有意に硬度が低下し、“紅塩麹”が最も柔らかくなっていました。焼き牛肉の官能評価においては、“紅塩麹は“塩麹”に比べ旨味が強く識別され、鶏肉、豚肉を浸漬した場合でも同様の結果でした。一方、鱈を96時間浸漬後の食感の官能評価では、身のハリが強くなっていました。
また、塩分12%の“塩麹”と塩分9%の“紅塩麹”にそれぞれ浸漬させた牛肉の比較では、塩味の違いが識別されませんでした。

  • 試験結果①“紅塩麹”の動物肉への効果

    “紅塩麹”の動物肉への効果 “紅塩麹”の動物肉への効果

  • 試験結果②“紅塩麹”の魚肉への効果

    “紅塩麹”の魚肉への効果 “紅塩麹”の魚肉への効果

  • 試験結果③“紅塩麹”の減塩効果

    ““紅塩麹”の減塩効果

■考察
“紅塩麹”は動物肉の軟化効果を有し、肉軟化に伴う肉汁の増加が旨味の強さに寄与していることが考えられました。また、旨味の強化、“紅麹”そのものが持つ雑味に付随する減塩効果や白身魚の身の食感改良効果も示され、“紅麹”が食品の美味しさにも寄与できることが示されました。

■まとめ
本研究成果より、全身のさまざまな健康に有益に寄与することが示唆されている“紅麹”は、食品の美味しさを向上する素材としても寄与できることが明らかとなりました。これらの知見は、“紅麹”をさまざまな食品用途に活用するためのきっかけとなり、今後のより有益な紅麹原料の開発につながるものと考えられます。

以上

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