尿もれ(尿失禁)とは
尿もれ(尿漏れ)とは、自分の意思とは関係なく、尿をしたくない時や場所で尿が漏れてしまう状態を言い、これらは日常生活において不快や不自由をもたらし、生活の質 (quality of life: QOL) を低下させていきます。なお、「尿失禁」とも呼ばれます。
尿もれは、膀胱や尿道を支える骨盤底筋が弱ったり、尿道括約筋の機能が低下したり、膀胱が勝手に収縮したりすることなどが原因の一つとして挙げられますが、原因は様々であるため、自分に合った正しい対策・対処方法を知ることが重要です。
尿もれの原因
尿もれ(尿失禁)は、報告によりばらつきがありますが、一般的には女性に多く、男性の約2倍の頻度を有すると言われています。
女性の場合、加齢、分娩(出産回数、経腟分娩)、肥満/高BMI、運動(激しいスポーツ) 、便秘、アルコール摂取、喫煙、高血圧などがリスク因子として報告されています。特に分娩や肥満が重要なリスク因子として報告されています。
一方男性の場合も、さまざまな原因がありますが、前立腺肥大症などによる下部尿路閉塞(尿の通り道である尿路のどこかが詰まり、尿の流れが妨げられる状態)が一因になることがあるとされています。
尿もれの種類や具体的な症状は人によって異なり、対策方法も変わります。男女別の悩みや尿もれのタイプ別の特徴については、以下のページで詳しくご紹介しています。
尿もれの種類と症状
尿もれ(尿失禁)にはいくつかの種類があり、症状や原因によってタイプが分かれます。代表的なものは、
1.腹圧性尿失禁 = 咳や運動など「お腹に力が入ったとき」に漏れる
2.切迫性尿失禁 = 「急に強い尿意が来て」間に合わずに漏れる
3.混合性尿失禁 = その両方
という種類があり、他にも「4.溢流性尿失禁」「5.機能性尿失禁」「6.反射性尿失禁」と呼ばれるものもあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
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1. 腹圧性尿失禁
咳やくしゃみ、階段の上り下り、ジョギングなどでお腹に力(腹圧)がかかったときに、尿が漏れてしまう状態です。主な原因は2つあります。
・尿道の支えが弱くなること(出産や加齢などで骨盤底がゆるむ)
・尿道の締める力が弱くなること(手術や放射線治療、閉経後のホルモン低下などによる) -
2. 切迫性尿失禁
急に強い尿意が起こり、トイレに行く前に漏れてしまう状態です。これは膀胱の筋肉が勝手に収縮してしまう「過活動膀胱(OAB)」の症状のひとつです。原因には以下があります。
・神経の病気が関係する場合(脳卒中、パーキンソン病、脊髄損傷など)
・神経の病気がない場合(加齢、骨盤底のゆるみなど) -
3. 混合性尿失禁
「腹圧性尿失禁」と「切迫性尿失禁」の両方が合わさったものです。特に高齢の女性に多くみられます。
例えば、腹圧性尿失禁がある人は、尿道に尿が流れ込む刺激で膀胱が反応し、切迫性尿失禁も引き起こされることがあります。 -
4. 溢流性尿失禁
膀胱に尿が充満し、尿が尿道から漏れ出るのが溢流性尿失禁です。尿の排出障害が原因で、排尿筋の収縮力減弱か下部尿路閉塞のどちらかあるいは両方とされています。
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5. 機能性尿失禁
足が不自由なためトイレに行ったり、衣服を脱ぐのに時間がかかる、尿器がうまく使えない、認知症があってトイレを認識できないといった理由で、膀胱の機能とは関係なく尿失禁が生じる状態を、機能性尿失禁と呼びます。高齢者では、他のタイプの尿失禁が合併していることも多いとされています。
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6. 反射性尿失禁
肢の麻痺など明らかな脊髄の神経学的異常のある患者さんだと、なんら兆候も、尿意もなく尿が漏れることがあり、これを反射性尿失禁といいます。
骨盤底筋とは
骨盤底筋(こつばんていきん)とは、骨盤の一番下でハンモックのように広がっている筋肉の集まりです。子宮・膀胱・直腸など、お腹の中の臓器が下に落ちないように支えたり、尿道や肛門を締めたり緩めたりして、排尿・排便をコントロールしています。また、お腹や背中の筋肉と連携し、体幹の安定にも関わっている大切な筋肉です。骨盤底筋が弱る(緩む)と膀胱が垂れ下がり尿道を締めにくくなり、尿もれの原因となります。
骨盤底筋を鍛えて尿もれ対策
「骨盤底筋(こつばんていきん)」は、骨盤の底でハンモックのように臓器(膀胱・子宮・直腸など)を支え、尿道をキュッと閉じる役目も担う“見えない主役”です。
骨盤底筋群の筋力をつけ、尿道が閉じる力を強くすることで尿もれを改善します。はっきりとした効果を感じるようになるまでは2,3か月ほどかかるのが普通で、じっくりと継続して取り組む姿勢が大切です。
尿もれになぜ効果的なのか?
鍛えた骨盤底筋は、二つの面から尿もれを防ぎます。
1.物理的に“支える・閉じる”
筋線維が太くなり(筋肥大)、咳・くしゃみ等の瞬間腹圧に合わせて素早く強く締め返せるようになります。結果、尿道が開きにくくなるのです。
2.神経の“抑えるスイッチ”が働く
骨盤底筋を意識して締めると、膀胱の勝手な収縮(過活動)を反射的に抑える働きが生まれ、切迫感の波をやり過ごしやすくなります。
骨盤底筋トレーニング方法
<方法>
- 枕に頭をつけて仰向けになり、全身をリラックスさせます。
このとき、膝を立て両足は30cmほど開きます。 - 肛門と尿道(膣)を5秒間強く締め、ゆっくりと力を抜きます。
- 10秒間ほどの休憩をはさみながら、②を20回繰り返します。
- ③を1日4、5回行います。
- 携帯(スマホ)に、朝、昼、夕、寝る前など
体操時刻をアラーム設定しておくと体操の継続に役立ちます。
その他の尿もれ対策・対処法
内服薬による対処
対処の1つとして、内服薬である漢方での対処が挙げられます。漢方における尿もれは腎気が虚した状態、いわゆる「腎虚」の症状と考えられています。腎虚とは、体全体の活気や潤いが無くなった状態を指し、加齢などにより腎・泌尿器・生殖器等の活力が衰えた状態です。その際、下半身が冷えて足腰の筋力低下や倦怠感があらわれたりします。八味地黄丸は腎虚を補う代表的な薬で、特に下半身に力が入らなかったり、冷え、しびれがある方に良く効くと考えられます。
尿もれパッド
尿もれが軽い場合には尿もれパッドもおすすめしています。月経用のパッドでは吸収量が少なく、尿がにじむとべたつくので尿もれには向きません。べたつくと不快で何度もトイレに行くようになるので、症状が悪化する可能性があります。
体重を減らす
肥満は膀胱・骨盤底への負担を増やし、尿もれを悪化させます。食事・運動の行動療法で体重を落とすと、腹圧性・切迫性いずれの尿失禁も有意に減少した事例もございます。
禁煙
喫煙が重度の失禁リスクを増大させる可能性や、実験的にニコチンが膀胱収縮を引き起こすことが報告されています。喫煙者の女性は下部尿路症状が増えるとも言われておりますので、禁煙で尿もれが改善する場合もあります。

