頭痛・だるさ・めまいなどを感じる方に
「今日は頭が重い…」「雨が降る前になると、決まってズキズキ痛む…」。天気の崩れとともにやってくる、つらい頭痛やめまい。その不調は、天気の変化によって起こる「低気圧頭痛」かもしれません。
雨の多い季節は憂うつ。でも原因や対処法がよく分からず困っている、という方も多いのではないでしょうか。
今回は、「気象病・天気病外来」を開設しているせたがや内科・神経内科クリニック 院長・久手堅司先生に、低気圧頭痛の原因や予防法、つらい痛みを和らげるセルフケア等について解説していただきます。
せたがや内科・神経内科クリニック
(https://setagayanaika.com/)院長
日本内科学会・総合内科専門医、日本神経学会・神経内科専門医、日本頭痛学会・頭痛専門医。
2003年東邦大学医学部卒業。2013年に、せたがや内科・神経内科クリニック開院。「気象病・天気病外来」、「頭痛外来」、「自律神経失調症外来」などの特殊外来を立ち上げ、天候と不調の関係にフォーカスした「気象病」や「寒暖差疲労」について、テレビ・雑誌など各種メディアでも解説。著書に「気象病ハンドブック」(誠文堂新光社刊)、「自律神経 これ1冊ですべて整える」(東洋経済新報社)など。
※本記事は弊社から久手堅先生に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。
近年、気圧や気温、湿度など天気の変化によって体調が左右される「気象病(天気病)」が注目されています。代表的な症状には、首や肩のこり、めまい、耳鳴り、朝起きづらい、なんとなく体が重い、集中力が続かないといったものがあり、中でも最も多いのが「頭痛」です。
気象の変化によって起こる頭痛を「低気圧頭痛」と呼んだりしますが、医学的に低気圧頭痛という病気があるわけではなく、天候の変化というきっかけで体内のバランスが乱れ、引き起こされる頭痛のことを指します。「片頭痛」や「緊張型頭痛」などが気象の影響を受けやすく、もともと頭痛を起こしやすい体質の人が、天気の変化で発作を起こしやすくなるケースが多くみられます。
こうした症状が出る理由のひとつに、気圧の変化があります。気圧が下がる“雨の前”や“台風接近時”などに特に頭が痛むという方は、気圧の変化に敏感な体質を持っている可能性があります。
久手堅先生
私のクリニックの外来に来られる患者さんの8割程度の方が頭痛を訴えます。
特に梅雨時期や台風シーズンは増えますね。
気圧が下がると頭痛が起こる原因としては、体の複数の仕組みが影響し合っており、特に「内耳」と「自律神経」の2つが関係していると考えられます。
私たちの耳の奥にある「内耳」には、体の平衡感覚を保つ働きのほかに、外の気圧変化を感知するセンサーのような役割があります。飛行機に乗ったときに耳が詰まるような感覚を経験したことがある方も多いでしょう。それは、内耳が外気圧の変化を敏感に感じ取っているからです。
天気が崩れて周囲の気圧が下がると、内耳内の圧力が相対的に高まって膨張した状態になります。その変化が脳に伝わると、脳の血管が拡張し、周囲の神経を刺激してズキズキとした痛みを引き起こします。
もう1つの要因が「自律神経の乱れ」です。
気圧の変化は、体にとってはストレス要因の1つです。このストレスに体が対応しようとすることで、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが乱れやすくなるのです。
交感神経が優位になると血管は収縮し、副交感神経が優位になると血管は拡張します。
このバランスが乱れると、血管が急激に拡張したり収縮したりを繰り返し、その変化が神経を刺激して痛みを引き起こす原因となります。
また、自律神経が乱れると睡眠の質が低下したり、冷えや肩こり、めまいなどの症状が出やすくなったりします。これらの不調も、頭痛をさらに悪化させる要因となります。
低気圧頭痛は症状が出てから対処するだけでなく、日頃から頭痛が起きにくいように体を整えることも大切です。頭痛の悪化を招きやすい生活習慣を改善しましょう。
スマートフォンの長時間使用は、低気圧頭痛の悪化要因のひとつです。うつむいた姿勢を長く続けることで、首や肩の筋肉が緊張し、血流が滞り、頭痛が誘発されやすくなります。
とくに、1日4時間以上スマホやパソコンを使用する人は要注意です。1時間に1回は画面から目を離し、首・肩・背中を軽くストレッチして筋肉をほぐしましょう。スマホを見る位置を少し高くして、首が下を向きすぎないようにするだけでも負担を減らせます。
睡眠不足は、自律神経のバランスの乱れにつながり、頭痛の引き金になります。体を回復させるためのホルモン分泌や血流調整がうまくいかず、交感神経が優位な状態が続いてしまいます。
良い睡眠のためには、就寝1〜2時間前はスマートフォンやパソコンの使用を避けましょう。画面の光が脳を刺激し、眠気を遠ざけてしまいます。
また、38〜40℃のぬるめのお湯に10〜15分程度、首まで浸かる入浴も効果的。副交感神経が優位になり、リラックスした状態で眠りにつきやすくなります。
寝る時間・起きる時間を一定に保ち、体内時計のリズムを整えることも大切です。
心と体はつながっているので、精神的ストレスは体の不調につながります。過剰なストレスは首や肩の筋肉の緊張を引き起こしたり、睡眠不足の原因となって頭痛を悪化させます。
「痛みに意識が向くほど、さらに痛みを感じやすくなる」という悪循環に陥ることもありますので、不調に意識を向けすぎず、趣味や自分の好きなことに集中できる時間を作りましょう。
また、気持ちが落ち込むときには、散歩など軽い運動も効果的です。体を動かすことで血流が改善し、気分転換にもつながります。
久手堅先生
生活習慣の改善は、完璧にやろうとする必要はありません。あまり肩肘張らずに、
気楽に簡単にできることを続けることがコツです。
低気圧の影響を受けやすいのが「片頭痛」と「緊張型頭痛」です。頭痛が起こってしまったときにできる、症状別のセルフケアをご紹介します。
片頭痛という名前は「頭の片側」が痛むことに由来しますが、実際には両側の頭痛を経験する患者さんも少なくありません。「ドクドク」と脈打つような痛みが特徴で、動くと痛みが強まることもあります。吐き気を伴う強い痛みで、日常生活に支障をきたす方もいます。天候の変化を過敏に察知し、雨が降る前の気圧が下がるときに症状が出やすい頭痛です。
<対策>
緊張型頭痛も気象変化の影響を受けやすい頭痛です。締めつけられるような鈍い痛みが特徴で、多くは頭の両側に起こります。一般的に片頭痛より痛みは軽いと言われていますが、痛みが常に続き、期間も長いため、症状は決して軽いとはいえません。
<対策>
久手堅先生
低気圧頭痛などの気象病には、鎮痛薬や漢方薬を用いることもあります。
当院でも症状に応じて患者さんに漢方薬を処方しています。
低気圧頭痛は多くの場合、命にかかわるものではありませんが、中には脳や血管の病気が隠れていることもあります。
頭痛には「一次性頭痛(片頭痛・緊張型頭痛など)」と、他の病気が原因で起こる「二次性頭痛」があります。気象や気圧の変化の影響を受けやすいのは一次性頭痛ですが、天気の変化と関係なく頭痛が続く場合や、市販薬を飲んでも改善しない場合は、「頭痛外来」や「脳神経内科」「脳神経外科」を受診しましょう。原因を特定し、適切な治療を受けることが大切です。
特に、右記下記のような症状がある場合には、速やかに病院を受診してください。
こんなときは、病院へ受診を
つらい低気圧頭痛は、決して「気のせい」や「我慢するしかないもの」ではありません。その原因は、気圧の変化に対する体の自然な反応にあります。病院で検査したのに異常が見つからず、「ストレスのせい」などと言われた頭痛や体調不良も、気象との関連に注目すると原因が見えてくることがあります。
気圧予報アプリなどを活用して体調と気圧の関係を把握し、ご紹介したセルフケアや生活習慣を取り入れてみましょう。市販の鎮痛薬や漢方薬などを使用してみることも選択肢の一つです。
正しい知識と対策で、憂鬱な天気の日も少しでも快適に過ごしましょう。
参考文献
第2類医薬品
販売名:テイラック
【効能・効果】体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の症状:暑気あたり、頭痛、むくみ
5つの生薬から成る「五苓散(ごれいさん)」の
働きにより、気圧変動で
乱れた体内の水分バランスを
調整し、自律神経の乱れに作用することで
症状を改善します。
漢方独特の味やにおいが気になる方でも
服薬しやすい
錠剤タイプのお薬です。
【効能・効果】体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の症状:暑気あたり、頭痛、むくみ