人材育成

従業員とのつながり

継続的に企業価値向上を実現していくために重要なのは従業員とのつながりです。そのためには、全ての従業員に「多様性」・「自身の成長」・「安心・安全」を実感してもらい、働きがいを高めていくことが必要だと考えています。この働きがいを見える化すべく2019年より従業員意識調査を開始、中期経営計画のKPIとして設定しています。

従業員に対する基本姿勢

当社のビジネスモデルであるニッチ戦略において最も大切なことは、「社会と生活者のさまざまな声に耳を傾け、そこから多様な“あったらいいな”を見つけ、カタチにする創造力」です。これを実現できるのは、まさに「人」であり、当社に集う従業員が多様な価値観や考え方を持っていること、またそれを最大限活かすことが重要です。当社が考える多様性は、性別や国籍などの属性だけではなく、価値観や考え方、そこから出てくるアイデアなどを広く指しています。当社は、”アイデアの会社”であり、まさにこの多様な従業員から出てくるアイデアによって発展してきた会社です。アイデアの前では、性別や年齢、役割や経験などは関係ありません。一人でも多くの従業員が、自らの視点と発想を活かしきり、持てる力を存分に発揮して、多様なアイデアを生み出し、チャレンジできる、そんな会社であり続けたいと考えています。

このような想いから、会社は環境を整え、人材への投資を惜しまない姿勢を「社員への約束事」として2022年11月に明文化しました。

小林製薬グループの「社員への約束事」

小林製薬グループは、社員の多様な価値観を大切にし、自分らしさを発揮できる様々な挑戦のフィールドを提供するとともに、人財への投資を行うことで、一人ひとりの成長を全力でサポートする環境をつくります。

この環境こそが、社員の積極性を育み、並外れた顧客志向、アイデア創造力を高め、“あったらいいな”を自分らしくカタチにすることにつながると考えています。その結果、社員一人ひとりが、お客様に喜んでいただくことを通じて、充実感とともに自身の成長を実感できると信じています。

人財育成に関する基本方針

ブランドスローガンの「“あったらいいな”をカタチにする」の実践には、従業員一人ひとりが生き生きと働き、持てる能力を伸ばし、発揮していくことが前提条件になります。 従業員の価値観や行動の拠りどころとなる「行動規範」の一つにも「社員一人ひとりが主役」という項目があり、従業員の主体的な行動を奨励しています。

小林製薬グループでは、従業員がその能力を十分に発揮できるよう、人事制度や人財教育/育成の充実を図り、従業員満足度の高い経営を目指しています。

“あったらいいな”の教育体制を確立したい

「企業は人なり」という言葉があるように、企業の永続的な成長を支え、実現するのは、「人財」なくしては考えられません。「人財」となる人を開発・育成することは企業にとって最も重要な経営課題と言っても過言ではありません。この経営課題に対して人財戦略を構築し、それに基づいた教育を実施しています。また、人財戦略に基づいた教育とともに、個々の特性が活かされ、自己の成長を実感できる教育も必要です。個性が活かされ、個人が成長することこそ企業の成長につながります。
小林製薬グループでは、経営者と従業員の両方のニーズに対応し、柔軟性のある教育体制を構築し、「人財」の育成に積極的に取り組んでいます。

求める人財像

小林製薬グループが求める人財像は以下のとおりです。
これらの人財要件は、当社の経営理念やビジネスモデルを達成するために必要な要素と密接に関連しています。また、当社ではこのような人財が集まり、全員が経営者の視点を持って働く「全社員参加型経営」を目指しています。

4つの人財要件

主体性:前例にとらわれず、「自分で考え」判断できるか / チャレンジ精神:失敗を恐れず、新しいことに「チャレンジ」できるか / 関係構築力:自ら動いて周囲に働きかけ、良好な関係を構築できるか / やり遂げる力・忍耐力:打たれ強く、ねばり強い「泥臭さ」があるか

ごんたの10箇条

小林製薬にはごんたの10箇条と呼ばれる人財像があります。「ごんた」とは関西弁で「やんちゃな」という意味であり、これをまとめたものが4つの人財要件となります。

ごんたの10箇条(1)新しいものが好き(2)負けず嫌い(3)明快な自己主張(4)本音で話す(5)ねばり強い(6)行動力がある(7)仕事の虫(8)摩擦や失敗を恐れない(9)意外性がある(10)愛嬌があり人に好かれる

社員の成長支援/キャリア形成支援

経営理念の骨子である「創造と革新」を実践し、お客さまの“あったらいいな”をカタチにするためには、人財育成は最重要課題の一つです。そのために、従業員一人ひとりが持てる能力を伸ばし、自己の成長を実感できる教育が必要となります。

当社では、多様な社員がより難易度の高い業務・異なる分野の業務を遂行できるよう、知識・スキル・経験・能力の習得を支援しています。特に、社員の成長を促す上で肝となるのが、上司と部下が1on1 形式で進める「成長対話」であると考えています。上司は、部下の成長を目的に「教え・任せ・褒める」というサイクルで、個人の課題に合わせた「成長の機会」を提供しています。また、階層別・職能別の集合研修も、多岐にわたるプログラムを準備しています。

教育体系図

図

選抜教育

小林製薬グループでは、早い段階から経営センスを磨き、将来の幹部候補を育成する「小林大学」と呼ばれる選抜教育を実施しています。これは、代表取締役会長の小林一雅が学長となり、主に課長クラスを対象としたジュニアコース、主に部長を対象とした「K営塾」の2コースで構成されています。「K営塾」では、会長自らが教鞭をとり、塾生と全力で向き合います。模擬経営会議などを通じて、経営者としてのものの見方、決断の下し方、そして何より、小林製薬グループのDNAを塾生に伝承しています。

OJT(On The Job Training)

小林製薬グループは、「人財の早期育成の鍵は、現場にあり」という考えのもと、若手従業員についてはOJTによる人財育成を重視しています。
小林製薬グループでは重要な経営指標として「新製品寄与率(初年度・4年間)」を掲げており、新製品開発こそが会社の成長の源泉と位置づけています。新製品開発に関連したOJTには独自の工夫を取り入れています。
製品開発に携わる者は、毎月1回、新製品アイデアを社長に対してプレゼンする機会を与えられます。社長に直接プレゼンすることで若手従業員にとって大きなモチベーションとなっています。また、アイデアが認められ、製品開発の段階に進んだ後でも、社長をトップとする「開発参与委員会」(毎月開催)で社長と頻繁にコミュニケーションを取ることになります。これらの過程で社長のみならず、同僚や上司、関係部署とも密接なやり取りを行うことになり、大きな成長機会を提供しています。
また、独自の「アイデア提案制度」も重要な人財育成のツールとなっています。小林製薬グループの従業員は、新製品アイデアもしくは業務改善アイデアを毎月1回出すことが義務づけられています(若手従業員の中には年間で100件以上のアイデアを出す者もいます)。この制度を通じて、従業員が世の中の変化の兆しやニーズを日々考える習慣がつくようになり、新製品アイデアを出す力が養われていきます。
このようなOJTの機会を活かすためには、年代や階層にかかわりなく、意思が尊重される企業風土が必要です。そのため、1995年から「さん付け呼称」を導入し、役職名での呼称を禁止して、従業員全員が一律「さん付け」で呼び合うことにしています。

理念の浸透

小林製薬グループでは、会社のあるべき姿・目指す方向を従業員が理解し実践することが何よりも重要であると考えており、理念や方針の理解と浸透のために以下の取り組みをしています。

LA&LA

会長が現場を訪問し、経営方針の理解や現場の諸問題について現場従業員と議論するLA&LA(Looking Around & Listening Around)を定期的に開催しています。
また、事業部長クラスも同様にワークショップを開催し、理念や方針の理解・浸透を進めています。

ホメホメメール

1996年に導入された「ホメホメメール」は、賞賛に値する行動をとった従業員に対して、社長が「どこが良かったのか」を具体的に書いたメールを直接従業員に送り、その仕事ぶりをたたえる制度です。
対象となる行動は、社長自身が日頃の業務の中で見つけていきます。従業員は、社長から心のこもった言葉で賞賛を受けることで、モチベーションアップにつながっています。また、その内容はグループ報でも紹介され、「主体性を持って挑戦した人は、どんどん誉める」という経営姿勢を全社に示し、現場での主体性を重視することに役立っています。

ESGや社会問題についての社内啓発

当社は、従業員のサステナビリティに対する意識を高め、行動を促すための社内ワークショップ 「サステナビリティMeetUp!」を2020年から続けています。これまでに30回以上開催し、参加者はのべ5,000名に届く勢いです。オンラインでの開催を基本とし、日本全国、さらには海外で勤務している従業員が参加しています。職位も幅広く、役員からパートで働く従業員まで同じチームでディスカッションをしています。

サステナビリティMeetUp! ロゴ

累計参加者数

累計参加者数 グラフ

これまで取り上げたテーマ

これまで取り上げたテーマ

取り上げるテーマもさまざまで、2022年6月に開催したワークショップでは、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんに共感した世界各地の若者が起こした気候変動への対策を求める運動「Fridays For Future」に参加しているメンバー3名に登壇していただきました。

2022年8月に開催したワークショップでは、キリングループとのコラボレーション企画として、両社従業員が参加し、互いに自社のサステナビリティに関する取り組みを紹介し、ディスカッションを行いました。

ワークショップ(オンライン)の様子

ワークショップ(オンライン)の様子

「サステナビリティMeetUp!」から派生して、さまざまな所属で同様の形式のワークショップが開催されることで、新しい製品のアイデアが生まれるなど、製品開発にも良い影響が生まれています。

キリングループとのコラボレーション企画のポスター

キリングループとのコラボレーション企画のポスター

キャリア開発支援

2022年より、キャリア開発支援に力を入れています。当社ではキャリアを「仕事のみならずプライベートも含めた生き方そのもの」と捉えています。そのため、キャリアにおいても多様性を尊重し、従業員一人ひとりが「自分のなりたい姿」に向けて主体的に成長することが理想だと考えています。このことから、会社は、一人ひとりのなりたい姿を引き出し、主体的な成長を支援する環境を整えることが必要だと考えました。この環境を「自ら育つ環境」と名付け、キャリア開発支援を推進していきます。「自ら育つ環境」は、一人ひとりがキャリアのことを考え、行動するための「4つの機会」と、最も身近な支援者となる上司との1on1形式で行われる「成長対話」によって構成されています。

キャリア開発支援のスローガンロゴ

キャリア開発支援のスローガン

「4つの機会」

考える機会

「一人ひとりの考え」がすべての出発点となります。考えるきっかけとして、キャリアの考え方に触れるワークショップや、社内にどんな仕事があるのかの情報発信に取り組んでいます。

キャリア開発ワークショップ 自身の経験の振り返りや、価値観・強みの理解を通して、キャリアを考えるワークショップです。(2023年10月開始予定)
所属紹介 会社の中にどんな部署があり、その部署のミッションや必要とされるスキル・要件などを開示します。

相談する機会

一人でキャリアを考えることが難しい時に、社内外のキャリアコンサルタントに気軽に相談できる「キャリアサポート窓口」を2023年2月より設置し、開始半年で75人の従業員が利用しています。

経験する機会

現所属で実務を通した経験を積むことをキャリアの土台としながら、中長期的なキャリアを見据えて、現所属以外での業務・活動にチャレンジできる機会を提供しています。

社内FA制度 現所属を飛び越え、異動を希望する所属に直接自己申告書を公開し、人事異動の検討を行う制度です。
社内副業 部署を異動することなく、他部署の業務を行うことができる制度です。
社外副業 社内だけでは得られない知識やスキルを獲得することで、キャリアの幅を広げ、従業員の自己実現を支援する制度です。
プロボノリーグ 他社の方々とチームを組み、実在するNPOの課題解決に取り組む「社会課題解決型プログラム」です。

学ぶ機会

OJTだけでは得られない知識やスキルを、OFF-JTで習得できる機会を充実させています。キャリアの各ステージにおいて必要な階層別研修に加え、一人ひとりのキャリア自律に向けた主体的な学びを促進するために、GLOBIS学び放題の提供や自己啓発支援制度など、個人のスキルアップを会社が支援していきます。

キャリア開発支援のコンセプト 画像

成長対話

なりたい姿へ向かうための直近の成長課題に対し、一番身近な上司が「成長対話」を通して支援する仕組みがあります。成長対話は、少なくとも四半期に1回、普段の業務の話と切り離して、部下の成長・キャリアに関連することだけを話題として行っています。これにより、自分自身ではなかなか気づけない成長のポイントを、上司が助言することにより、成長実感を生み出し、次の成長につなげる成長の好循環のサイクルを回す狙いがあります。

成長対話を通じて生まれた部下育成の好事例は、「成長発表大会」という場で管理職間に共有されます。それらの好事例を分析することにより、「成長対話サイクル」を作成しました。成長対話サイクルは個々に適した成長ができるように、上司は部下を、部下は自身を分析し、個々に適した成長のPDCAを成長対話を通じて回すモデルとなっています。

成長対話サイクル 画像
「成長発表大会」の様子

キャリア開発支援のスローガン

グローバルにおける人材開発

当社は、海外においてもパーパスを指針とし、ニッチ戦略を遂行していきます。そのためには、日本で生み出したニッチ製品を各国で販売するだけでなく、現地のニーズを捉えたアイデアを生み出し、それを現地でスピーディに製品化することが必要です。
アイデア開発においては、現地の人にしか気づけない現地のニーズが多くあるため、駐在員と現地社員がともに“あったらいいな”を発見し、駐在員が国内で培った小林流アイデア開発でカタチにしていきます。最近では、一部の現地法人においても提案制度の導入や、アイデア大会の実施、社長へのアイデアプレゼンなどの取り組みを始めています。これらの活動を通して、現地社員にも当社のノウハウを少しずつ伝承し、現地における“あったらいいな”開発を加速させていきます。

後継者育成

今後も「“あったらいいな”をカタチにする」ことを継続していくためには、当社の理念を体現し、組織を牽引する経営人材が継続的に必要です。そのため、選抜研修とタフアサインメントにより、課長層より計画的に育成を行うことで、次期経営人材が継続的に輩出される仕組みづくりに取り組んでいます。また、ダイバーシティ経営の観点から、「意思決定のダイバーシティ」の推進にも力を入れています。社外役員が過半数を占める取締役会のみならず、近年では、経営執行会議(執行役員が主な構成員)にも外部人材を招聘し、新しい風を取り入れています。女性管理職比率については長期数値目標として2025年(2026年1月末時点)16%以上を掲げ、管理職候補人材を増やすための課題設定及び施策の検討に積極的に取り組んでいきます。