意外と知られていない歯ぐきに
関わる情報をご紹介します。
歯の病気は、実は最も身近な病気のひとつ。
ある調査によると、成人の約77.3%※1もの人が歯周病の疑いがあると判明しています。
これは、なにも日本だけではありません。
世界中の人々が歯周病に悩まされています。
事実、ギネスブックに“歯周病は最も患者が多い病気”と紹介され、誰もが関係のある病気と言えるでしょう。
これほど多くの人が歯周病にかかっているにも関わらず、実はほとんどの人が自覚症状がないと言われています。
その理由は、歯周病は静かなる病気“サイレントディジーズ”と呼ばれるほど、症状が気づかぬうちに、ゆっくりゆっくり進行していくからです。歯周病を自覚したときには腫れや膿み、痛みを伴う歯槽膿漏と呼ばれる状態まで進行していることも少なくありません。
厚生労働省の調査によると、50代以上の約過半数が歯槽膿漏になっている※1ことがわかっています。
歯槽膿漏は、とにかく早期対策が重要です。
歯槽膿漏の症状が進行すると、歯が抜けてしまうこともあります。そうならないために、日々しっかり歯ぐきをケアして健康な状態を保つことが大切です。
実は、体の中でもトップクラスに細菌量が多いのは口内です。種類にしてなんと約500種類の菌が住み着いています。※1
それらの菌が歯の表面に付着してできるのが歯垢(プラーク)です。歯垢は食べ物のカスの塊と誤解する方も多いですが、本当は細菌の塊。驚くことに1mgサイズの歯垢中には、1億個もの細菌が活動し、その中に歯周病菌も存在します。※2
歯垢は、歯周病菌の繁殖に絶好の環境です。歯周病菌が苦手とする酸素に触れず、繁殖に適した温度・湿度に保たれているからです。さらに食べカスは豊富な栄養分になり、わずか1日で細菌量は何倍にも増殖してしまいます。
これほど口内には細菌が住み着いていますが、実は生まれたときは口内に歯周病菌を含む細菌類は一つも存在しないことがわかっています。
人は無菌状態で生まれます。
しかし、食事でのコップ、スプーンの共用や、キスによって歯周病菌が感染して爆発的に増殖を繰り返すのです。とくに、生後19か月〜31か月前後は「感染の窓」と呼ばれ、細菌が最も感染しやすい時期。
意識的な注意が必要です。
アメリカでは歯周病の認知が進んでいて、歯周病菌がキスで感染することが広く知られています。
だからこそ、歯を守る意識が非常に高く、日々のオーラルケアをしっかりしています。
歯周病の症状が進行すると、歯槽膿漏と呼ばれる状態に移行してしまうため、手遅れになる前に早めの対策が大切です。
元々、健康な歯ぐきとはピンク色で弾力があり引き締まっています。
しかし、加齢と歯槽膿漏などによって歯ぐきの状態は悪化していきます。よく年を重ねると「歯が長く見える」ということを聞きませんか?
これは歯ぐきが下がり、痩せてしまう歯肉退縮が関係しています。
歯肉退縮とは、本来歯の中に隠れている歯の根っこが露出した状態のことです。
30代では5人に1人が、50〜60代では3人に1人が歯ぐき下がりの症状を気にしている※1ことが分かっています。
原因は、歯槽膿漏と加齢など。歯槽膿漏の原因菌は、歯ぐきを構成している成分を傷つけ、破壊します。
それに応じて、歯ぐきの面積も狭くなり、歯ぐきが下がって見えるのです。
当然、若い頃は安心です。体に備わっている抵抗力が正常に機能し、原因菌をしっかりと退治します。
しかし、加齢によって体は抵抗力のさじ加減を間違えるようになり、歯槽膿漏の原因菌だけでなく、健康な歯ぐき細胞までダメージを与えてしまいます。
たちまち歯肉退縮は加速し、「冷たいものがしみる」「細菌が歯ぐきに入りやすくなる」などの症状が現れます。 加齢による変化は諦めるしかない部分も多いです。ですが、健康な歯ぐきを保つためには日々のケアに加えて、歯槽膿漏の原因菌を殺菌することがとても重要です。
健康な歯ぐきは弾力やハリがありプルプルしています。実はそのほとんどがコラーゲンであることをご存知でしょうか。
つまり健康な歯ぐきの要はコラーゲンです。しかし、歯周病菌や加齢変化によって、コラーゲンは分解され弾力やハリが失われてしまいます。
このコラーゲンを守るため、お肌のお手入れと同じように日々の対策が、健康な歯ぐきに繋がっていくのです。
女性は歯周病にかかりやすいと言われていることをご存知でしょうか?
原因は、女性ホルモンの分泌量の変化にあります。
生理・思春期などで女性ホルモンの分泌量の増加が起こると、女性ホルモンを好む歯周病菌の一種が異常増殖してしまいます。※1
妊娠中は特に注意が必要です。妊娠中は高齢者同様、免疫機能が低下するため、歯周病はみるみる進行。歯槽膿漏へのリスクは増加してしまいます。※2
また、妊娠している女性が歯周病にかかっている場合、胎児に悪影響を及ぼす可能性があり、低体重児の出産の危険率が高まると言われています。
歯周病にかかってしまうと全身に悪影響を及ぼすことをご存知でしょうか。
近年の研究では、歯周病にかかった人は健常者と比べ、糖尿病リスクが約2倍※1に増幅することがわかっています。
さらに、脳梗塞だと約2.8倍。※2
心筋梗塞だと、なんと約5倍※3のリスクに跳ね上がります。
なぜ、歯の病気がこんなに恐ろしい病気を誘発してしまうのか・・・。その大きな要因と考えられているのが、歯周病菌です。
歯周病によって歯ぐきが破壊されると、そこに小さな隙間ができ、細菌の玄関になってしまいます。その玄関から、歯周病菌は大量に浸食。毛細血管を通って体中に巡ってしまい、重大な疾患を誘発してしまうと考えられています。
事実、動脈硬化をおこした歯周病菌患者の心臓血管からは、歯周病菌が見つかることは少なくありません。
軽度な歯周病ならまだしも、歯槽膿漏になってしまうと、細菌の玄関はどんどん拡大してしまうため、特に注意が必要です。
まずは、全身に細菌が広がらないように、ひきしまった健康な歯ぐきを維持して細菌の玄関をつくらないように心がけることが大切です。
近年、歯周病と機能低下の関係を追究したある実験が注目されています。
その実験はラットを用いた動物実験です。
まず、健康なラットの歯肉に歯周病の原因菌によってつくられる「酪酸」という物質を注射。
その後、経過を観察すると、記憶をつかさどる脳の部位から酸化ストレスが顕著に増加したのです。 認知機能の低下は、酸化ストレスが要因と考えられており、また歯周病が認知機能へ悪影響を及ぼす可能性があることが報告されております。※1
「酪酸」は、歯周病患者の歯周病ポケットで通常の3〜4倍も見つかっている物質。歯ぐきの手入れは、健やかな脳にとっても大切なことと言えます。
また、歯の欠損は、脳の認知機能に悪影響を与えることが報告されています。
65歳以上の健常者4425人を対象として調査を実施し、その後4年間、認知機能の状態を追跡しました。すると、年齢・疾患の有無にかかわらず、「歯がほとんどなく義歯を使用していない人」は「歯が20本以上ある人」に比べ、認知機能低下のリスクが高くなることが判明したのです。※2
さらに、歯の欠損は、認知機能の低下だけにとどまらず、見た目の変化による精神状態の悪化や、栄養失調にもつながることも懸念されています。 いつまでも健やかに暮らすためには、歯周病を悪化させず、歯を失う前に予防を心がけることが大切です。