お知らせ

紅麹関連製品による被害の発生状況について

2024年6月28日 15:00発表
2024年6月28日 22:00図表追加

小林製薬株式会社(本社:大阪市、社長:小林章浩)は、2024年3月22日、当社販売の紅麹関連製品にて一部の紅麹原料に当社の想定していない成分が含まれている可能性が判明したことを発表しました。お亡くなりになられた方のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆様に心からお悔やみ申し上げます。現在も入院中、治療中の方の一刻も早いご回復をお祈り申し上げます。また、お客様やお取引先様に多大なるご心配、ご迷惑をお掛けしておりますことを深くお詫び申し上げます。
当社は3月22日の発表以降、被害の発生状況についての把握に努めてまいりましたが、今般、その報告・公表のあり方を見直すべきと判断し、被害把握の最新状況につき、下記のとおりお知らせいたします。

1.3月22日の発表以降における当社取組み

当社は本件の発表以降、全社を挙げて、紅麹関連製品の使用中止の呼びかけ、自主回収を進めるとともに、想定していない成分の特定、想定していない成分を含む可能性がある製品の特定、紅麹関連製品と腎疾患等との関連性の有無の検証に取り組んでおります。
また、4月26日に発表しましたように、紅麹問題における一連の当社対応につき、取締役会が主導的に調査し、事後的検証を行う方針を決定しており、事実検証委員会による調査が鋭意進められているところであり、当社はその調査に全面的に協力しております。
これらと同時に、当社は3月22日の発表以来、被害状況の把握に努め、当社が把握している被害状況を行政当局に報告してまいりました。直近では6月26日現在の状況として、(i) 相談件数:約143,000件、(ii) 医療機関を受診した方の数:1,656名、(iii) 入院治療を要した方の数:289名、(iv) お亡くなりになった方の数:5名であることを報告し、当該報告内容は厚生労働省のウェブサイトにて公表されております。
この被害把握状況につきましては、3月22日の発表直後より、速報性を重視し、お客様やそのご家族様らからの申告内容をもとに、「当社販売の紅麹関連製品を摂取したことによって腎関連疾患を発症した可能性」を確認したケースを集計し、「転帰」(疾患の症状経過や結果を意味します)を「医療機関の受診」、「入院」、「死亡」に分類し、それぞれ上記のとおり報告してまいりました。
ただし、これまでの被害発生状況の報告は、3月22日時点、あるいはその直後に認識していた事情から導いた仮説的な前提条件、また、お客様やそのご家族様らからの初期的な申告内容をもとに分析・集計した数値によるものです。
他方で、3月22日の発表から3ヶ月を経過し、この間、厚生労働省及び国立医薬品食品衛生研究所による原因究明についての進捗が5月28日に公表されるとともに、当社におきましても、紅麹関連製品と被害発生の関連性の調査を進めることで、さまざまな事情が明らかとなってまいりました。

2.原因究明の進捗

第1に、原因究明については、厚生労働省及び国立医薬品食品衛生研究所の5月28日付・公表資料にて現時点での確認状況が説明されており、現状は以下のとおりと認識しております。

  • 被害情報のあるロットと被害情報のないロットを対照し、被害情報のあるロットにおいてのみ検出される化合物の同定を試みたところ、プベルル酸とその他2種類の化合物(化合物Y・Z)が特定されたこと
  • プベルル酸と化合物Y・Zの発生メカニズムにつき、プベルル酸は大阪・和歌山双方の工場から採取された青カビがコメ培地を栄養源として産生したこと、化合物Yは大阪・和歌山双方の工場から採取された青カビ単独では産生されないものの、紅麹菌との共培養によりモナコリンKが修飾され生成されたこと、他方で化合物Zは化合物Yと同様の機序(紅麹菌との共培養によりモナコリンKが修飾され生成されたと推論)で生成されたかが確認中であること
  • プベルル酸と化合物Y・Zの腎毒性については、プベルル酸が腎障害を引き起こすことが動物実験で確認されている一方で、化合物Y・Zについては腎毒性の有無及び寄与度について動物実験での確認が継続中であり、特に、化合物Y・Zについてそれぞれのラット90日間反復投与試験の実施が予定されていること

このように、プベルル酸による腎毒性は確認されておりますが、化合物Y・Zの毒性の有無及び寄与度を動物実験等によって検証されようとしております。その検証結果次第では、被害状況把握の方法を見直す必要もございます。

3.紅麹関連製品と被害発生の関連性についての確認状況

第2に、お客様やそのご家族様らからの被害発生のお問い合わせが多数寄せられており、当社販売の紅麹関連製品との関連性について調査を継続しております。これまで調査を進めてきたことで、次のような事情が明らかとなってまいりました。

  • プベルル酸を含有する紅麹関連製品を摂取した場合、腎関連疾患を引き起こすと推定しておりましたので、これまで、当社は、紅麹関連製品による被害発生事例において腎関連疾患と診断されたケースに焦点を当ててまいりました。
  • しかし、これまでの調査により、腎関連疾患以外の疾患と診断されたケースにおいても、基礎疾患をお持ちのお客様やご高齢のお客様の体力減耗等に影響を及ぼし、間接的な機序により、入院や死亡の「転帰」(上記のとおり、疾患の症状経過や結果を意味します)に至った可能性があることが分かってまいりました。
  • このように、紅麹関連製品と入院や死亡との関連性については、入院や死亡の直接的な原因が腎関連疾患であるケース、入院や死亡の直接的な原因が腎関連疾患でなかったとしても、紅麹関連製品による被害が何らか間接的影響を及ぼしている可能性があるケースなど、さまざまなケースが存在することが明らかとなりました。
  • これらの事情を踏まえ、(i) 関連性の検証のためには、原因究明、疫学調査、ケースごとの事実関係(摂取の頻度・程度、性別・年齢等の属性、腎関連疾患の発生有無・病状、既往症、死亡・入院の直接的な原因など)の精査などの結果を踏まえ、原因物質を含有する紅麹関連製品が通院・入院・後遺障害・死亡等の被害を発生させたといえるか否か、その寄与度はいかほどかを検証しなければならないこと、(ii) これまでの被害把握状況の調査において、腎関連疾患であるか否かに焦点を当てて関連性有無を判定していたことが必ずしも実態を正確に把握するものではないことを認識するに至りました。
  • また、別の観点で、お客様やご家族様らより、当社販売の紅麹関連製品と被害発生の関連性についてのお問い合わせを受けたケースの多くにおいて、その後精査したところ、当社販売の紅麹関連製品を摂取していなかったことが判明しております。その背景としては、紅麹コレステヘルプ等を購入されていないお客様を含めた、当社の通信販売をご利用いただいている全てのお客様に紅麹コレステヘルプ等の製品回収のご案内をお送りしたことから、当社販売の紅麹関連製品を購入していなかったお客様のご遺族様からも、「亡くなった本人が通信販売でどの製品を定期購入していたかを確認したい」、「定期購入を解約したい」とのお申し出を数多く受けたためです。

これらの事情も踏まえ、今後、被害発生状況を正確に把握するためには、(i) 当社販売の紅麹関連製品を購入・摂取したことが確認できるか、(ii) 通院・入院・後遺障害・死亡等の被害発生との関連性を基礎付ける事情、あるいは関連性を否定する事情が存在するか等を精査していく必要があります。これらの精査は、被害を生じさせてしまったお客様やご遺族様への補償においても必要となります。
他方現時点では、いまだ発生機序が原因究明の途上にあり、それぞれのお問い合わせについての個別の事情確認にも時間を要することから、紅麹関連製品と通院・入院・後遺障害・死亡等の被害発生の関連性を確定することが困難です。

4.被害発生状況の把握方法の変更

3月22日の本件発表以降、当社は(i) 相談件数、(ii) 医療機関を受診した方の数、(iii) 入院治療を要した方の数、及び(iv) お亡くなりになった方の数を行政当局に報告してまいりました。
この報告においては、プベルル酸を含有する紅麹関連製品を摂取した場合、腎関連疾患を引き起こすと推定しておりましたので、通院・入院・死亡のそれぞれの「転帰」の原因が腎関連疾患と診断されているケースを報告対象とし、他の疾患と診断されているものは報告対象外としてまいりました。
しかし、上記のとおり、①原因究明においてはプベルル酸だけでなく、化合物Y・Zの可能性が認識され、それぞれの毒性評価が継続中であり、②紅麹関連製品と通院・入院・後遺障害・死亡等の被害発生の関連性検証を厳密に行うべき必要性も認識するに至っており、これまでの報告の前提を変えるべき状況となっております。
特に、上記報告対象のうち、(iv) お亡くなりになった方の数については、お問い合わせをされる方がご遺族様であることもあり、紅麹関連製品と死亡の関連性の調査・認定が当初想定していた以上に困難を極めており、現時点ではお亡くなりになった方の数を具体的かつ確定的に特定することができない状況にございます。
たとえば、従前、紅麹関連製品に起因するお亡くなりになった方の数を5事例と報告しておりましたが、その後の調査により、うち1事例は当社販売の紅麹関連製品を摂取されていなかったことが明らかとなっております。
他方で、これら以外にも、当社販売の紅麹関連製品との関連性がある死亡事例が存在する可能性もございます。
そこで今般、これらの最新事情を踏まえ、当社は被害発生の把握・報告のための方法や基準を変更すべきと考え、特に(iv) お亡くなりになった方の数につき、当面は具体的な確認結果を報告することができないことから、代わりに「死亡との関連性を調査している対象事例数」を報告・公表すべきと判断いたしました。
この方針のもと、死亡関連につき、被害発生把握の最新状況が下表のとおりであることをご報告申し上げます。

被害発生把握の最新状況

  • これまでの調査の結果、死亡が関係するお問い合わせ事例数は公表済み5事例を除くと170事例です。
  • そのうち、当社販売の紅麹関連製品を摂取していなかったことが確認された事例数は91事例です。
  • 170事例から91事例を除き、さらに調査終了している3事例(いずれも医師の診断によれば因果関係はなし)を除いた76事例につき、現在、紅麹関連製品との関連性を調査しております。
  • これらの調査継続中の76事例については、直接的な死亡原因が腎関連疾患のものもあれば、その他の疾患(癌、脳梗塞、肺炎、大動脈解離など)によるものもございます。また、プベルル酸の含有可能性を認識している特定ロットの製造時期よりも前にお亡くなりになられたケースも除外しておりません。

なお、(iv) お亡くなりになった方の数の報告に代えて、死亡との関連性を調査している対象事例数を報告する方針としたことは、被害発生の可能性が否定できないものは広範に報告・公表すべきと判断したことによるものであり、その性質上、事後に関連性が否定される事例数も相当数含まれている可能性があること、また、さらに新たな申し出によって、調査対象となる事例数が増える可能性もあることにつき、ご理解くださいますよう、宜しくお願いいたします。
また今後、(iv) お亡くなりになった方の数以外に、(ii) 医療機関を受診した方の数、及び(iii) 入院治療を要した方の数についても、調査の進捗を踏まえ、必要性と現実的可能性を考慮しながら、より精緻な把握・報告に努めてまいりたいと存じます。

5.これまで報告していたお亡くなりになった方についての事例数の訂正について

これまで当社は、紅麹関連製品によるお亡くなりになった方についての事例数を5事例と報告してまいりました。しかし、上記のとおり、うち1事例は紅麹関連製品が摂取されていなかったことが明らかとなっております。また、残りの4事例につきましても、調査を進めたところ、紅麹関連製品と死亡の関連性の度合いが事例によって異なっており、被害発生状況を正しく把握し、また、今後の補償対応において、関連性をより正確に検証すべきことを認識しております。
その方法としては、現在、臨床試験等を受託している専門機関であるCRO(Contract Research Organization)を通じた主治医様等への確認手続きなどを踏まえて、「副作用の報告ガイドライン【JCTN-有害事象ガイドライン】」に準じた分類で関連性を評価することを予定しております。これは国立がん研究センター研究開発費による研究班が作成した多施設での臨床試験の実施手順を標準化したガイドラインであり、これを参考に定め、この5分類に照らせば、現状、従前報告していたお亡くなりになった方についての事例である5事例は下表のとおりとなります。

■これまでの5事例についての確認結果

①明らかに関連あり 0
②たぶん関連あり 0
③関連ないともいえない 2
④関連なし 1
⑤関連不明 2
合計 5

(※)5事例を、①~⑤に分類したことに関するご説明

  1. ③の「関連ないともいえない」の2事例について
    ・紅麹コレステヘルプの摂取及び他の要因が複合して疾病を引き起こしたと考えられ、関連ないともいえないと主治医様の意見が示された事例
    ・紅麹コレステヘルプの摂取により入院に至ったが、それがお亡くなりになった直接的な死因ではないと主治医様の意見が示された事例
  2. ④の「関連なし」の1事例について
    ・ご家族様に購入製品を確認させていただいた結果、お亡くなりになった方は紅麹コレステヘルプ等を摂取していなかったことが後に判明した事例
  3. ⑤の「関連不明」の2事例について
    ・紅麹コレステヘルプの摂取とは別の原因でお亡くなりになっており、紅麹コレステヘルプと死亡の関連性は不明と主治医様の意見が示された事例
    ・当社が主治医面談等の同意をいただけないため、より詳しい調査ができない事例

上記のとおり、死亡との関連性の検証・認定が現時点では難しいこと、また関連性の度合いがケースによって異なることから、今後、死亡との関連性についての調査が進みました後も、お亡くなりになった方の数のみの算出とはせず、上記5分類なども参照しながら、正確な被害発生状況の把握に努めてまいります。

6.最後に

上記のとおり、当社には1,656件に及ぶ医療機関を受診した方からのお問い合わせが寄せられており、死亡関連の調査継続中の事例数は76件に及びます。このように重大な被害を生じさせてしまったこと、また当社のお客様だけでなく、広く国民の皆様方に多大なご心配をおかけしてしまったことを改めて重く受け止めており、今後、厚生労働省及び国立医薬品食品衛生研究所にて行っている原因究明に全面的に協力するとともに、被害発生状況の把握と報告、補償などに真摯に取り組んでまいります。

以上