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ニッチ戦略・小林製薬の「無香空間™」誕生秘話
~社内の常識に逆らい、10%のニーズに着目し大ヒット!~

  1. I.「無香空間™」開発秘話
    1.「無香空間™」のルーツ
    2.開発スタート
    3.無香で消臭
    4.こだわりを詰め込んだ完成品
  2. II.25年の歩み
    1.発売間もなく大ヒット
    2.時代の「追い風」
  3. III.これからの「無香空間™」
無香空間™

無香空間™

I.「無香空間™」開発秘話

嫌なニオイを香りでごまかさない無香タイプの消臭剤「無香空間™」が、1995年の誕生から今年で25周年を迎えました。
消臭剤といえば香りつきが常識だった中で、香りがしない「無香タイプ」を望む少数派の声に着目しニーズにこたえるという小林製薬ならではのニッチ戦略で成功した「無香空間™」のこれまでを振り返ります。

無香空間™

■1.「無香空間™」のルーツ

1975年に「サワデー」を発売し、芳香消臭剤市場でトップの地位を築きあげた小林製薬は、いわば”香りの会社”です。

芳香消臭剤市場では、世の中でどんな香りが受け入れられるかという探求がされていましたが、小林製薬の開発者は「香りが苦手な人もいるのではないか?香りがないことをよしとする人がいるのではないか?」と考えました。そこで消費者調査をしたところ、10%程度ではあるものの、香りが一切しない「無香」を望む”無香派層”の存在が確認できました。

小林製薬は「小さな池の大きな魚」を理念としたニッチマーケティングが得意な企業です。小林製薬にとって無香派層の「10%」は魅力的なニッチ市場。他社がくみ取り切れていないニーズのある市場こそ、芳香消臭剤のパイオニアとしての小林製薬が輝ける場だといっても過言ではありません。

出典:弊社「統合報告書2018年」より抜粋

出典:弊社「統合報告書2018年」より抜粋

香りのトレンドが変わりゆく中で、少数派ではあるものの、確かな「無香」へのニーズを感じ、10%の無香派層を潜在的な有望市場なのではないかと考えた小林製薬の開発者は、さっそく無香派層のための製品開発チームを結成。芳香消臭剤に香りはいらないと考える「無香派層のための消臭剤」の開発に乗り出すことになりました。

■2.開発スタート

「無香空間™」の開発が始まった1990年代は、「強い香り」が多くの生活者に支持されていました。そのため、「香りがないと使用実感が得られないのではないか?」という意見は社内に根強くあり、新製品のコンセプトを議論する開発会議で、無香タイプの消臭剤は上層部や営業現場から反対されるという大逆風での船出となりました。「香りのないものは存在感がない、存在感がないものは売れない」と無香製品に対する否定的な意見が大多数を占めていたのです。

しかし、開発品を試している中で、キャンプ用品がたくさん詰め込まれた自動車のトランクのニオイがなくなったことに驚いたある開発担当者は、「気になるニオイが消えることこそが『実感』に他ならない」と確信しました。開発チームが見つめていたのは無香派層の生活者。「香りがいらないと感じる人たちにさえ受け入れられればいい」という割り切ったニッチ戦略思考で、「無香空間™」の開発は進められていきました。

■3.無香で消臭

消臭にはさまざまな方法がありますが、最も消臭効果を実感しやすいのは香りでニオイを包み隠すマスキング手法。消臭成分と香りを組み合わせることで、消臭成分だけでは取り切れない悪臭を消すことができます。しかし、無香であることが要求される「無香空間™」では香りでマスキングすることができません。つまり、一切のごまかしが許されない厳しい条件が課されていたのです。

無香で消臭

芳香消臭剤で市場をリードする小林製薬では、当時の社長だった小林一雅から「消臭について技術を高めるべし」と、消臭を研究する専門チームが社内で結成されていました。この専門チームが蓄えてきた200種類に及ぶ消臭成分から、酸性・アルカリ性などさまざまな悪臭にバランスよく効く消臭成分が選び出され、改良を繰り返すことで、「香りでごまかさない」多種多用な悪臭に対応できる消臭液が完成しました。

■4.こだわりを詰め込んだ完成品

次に、完成した消臭液を保持する吸収体として、いったい何が最適なのかの探求が始まりました。

すでに市場にはSAP(サップ)と呼ばれる吸収体がありましたが、液体を吸収させると、ボロボロっと崩れやすく、日光を浴びると変形・変色する特徴がありました。

「無香」から連想される「透明(クリア)」のイメージにこだわる開発チームは、SAPとは別の吸収体を探すことにしました。そこで、原料メーカーに「変色しない日光に強い材料をたくさん持ってきてほしい。用途は問わないので幅広く」と依頼したところ、提案されたのはなんとトンネル工事の際に地下水を吸うための材料である「ビーズ」。思わぬ提案を受けた開発チームでしたが、透明で見た目にもきれいなビーズは、まさに無香イメージにピッタリ。実際にビーズを試験してみると、SAPと違って日光にも強く、変形したり変色したりしないことがわかりました。

SAPに比べるとコストはアップしましたが、無香タイプの消臭剤の製品イメージにぴったりということで吸収体にはビーズが選ばれることになりました。

吸収体に採用された「ビーズ」

吸収体に採用された「ビーズ」

さらにキレイな透明ビーズがよく見えるように、容器も透明であることにこだわりました。香りのない無香タイプの消臭剤ということで、存在感を主張しすぎることなく空間になじむ、紅茶の缶のような「テーブルに置かれたとしても違和感のないもの」というコンセプトで容器がデザインされました。

最後の作業はネーミング。余計な香りを使わず消臭できることを分かりやすく、力強く表現する商品名ということで「無香空間™」と名付けられました。

こうして完成した「無香空間™」の試作品を従業員に使ってもらい意見を募ったところ、「無香なので場所を選ばず使える!」と好評で、開発チームがこだわった、見た目の美しさも高い評価を得ることができました。

また、最終品パッケージに近い「無香空間™」を商品棚に置いてみると、そのシンプルさゆえに意外にも目に留まることもわかり、当初存在感を危惧していた営業現場からも「この世界観はアリ」と太鼓判を押されることになりました。

II.25年の歩み

■1.発売間もなく大ヒット

1995年4月に発売された「無香空間™」は、発売直後から予想を上回る大ヒット製品になりました。当初設定された年間売上3億円という目標はわずか4カ月で達成するほどの売れ行きでした。

発売当時の「無香空間™」

発売当時の「無香空間™」

①好調の要因「視覚的な使用実感」
「無香タイプの製品は使用実感が得られないため売れない」という定説があった中で、「無香空間™」の大ヒットに寄与したのはビーズの美しさだけでなく、その形状にもありました。消臭成分を含んだクリアなビーズは、使っていくうちに小さく、白くなります。ビーズの見た目の変化によって、視覚的に使用実感を得られることが「無香空間™」のヒットを下支えしていたのです。

使っていくうちに変化する「ビーズ」

使っていくうちに変化する「ビーズ」

②好調の要因「インパクトあるフレーズ」
コミュニケーションにも徹底的にこだわった戦略が採られたこともヒットの要因になっています。まず、香りを一切使っていないことを表現するために「香りでごまかさない」というキャッチフレーズが取り入れられました。従来までの芳香消臭剤とは全く違う無香タイプであることを際立たせるために、「香りはごまかし」といわんばかりの、芳香消臭剤のトップメーカーらしからぬ思い切った表現を採用したのです。

さらに、ニオイにアクティブに作用するような高い消臭効果をイメージしてもらうために、靴のニオイを消すための自社製品「オドイーター」でも使われている「ニオイ喰い」というインパクトのあるキャッチコピーを用いて無香派層にアプローチをしました。このキャッチコピーは「無香空間™」を象徴するフレーズとして今でもパッケージや広告で使われています。

「香りでごまかさない」&「ニオイ喰い」のフレーズ

「香りでごまかさない」&「ニオイ喰い」のフレーズ

■2.時代の「追い風」

「無香空間™」が誕生してから25年。この間に世の中の状況は大きく変化し、「無香空間™」の活躍の場は広がっています。

①「ペット飼育環境」の変化
大切な家族の一員として、室内で犬や猫などのペットを飼う人が増えました。ペットのニオイ対策へのニーズが増えています。

「ペット飼育環境」の変化

②「住宅事情」の変化
都市部を中心に、木造の住宅が減り、マンションなどの鉄筋コンクリート造の建物が増えました。住宅の気密性が高まるにつれて、家庭内にニオイがこもりやすくなっています。

また、近年人気のオープンな対面式キッチンの登場は、生ごみ臭や調理臭を他の部屋に広げたくないという意識を高めることにもなりました。食材や料理本来の香りの邪魔をせず、悪臭を断つ「無香空間™」がより重宝されるようになっています。

③「世帯」の変化
女性の就業率が増え、平成27年国勢調査によると夫婦共働き世帯の割合は年々増加し、全世帯の6割を超えるまでになっています。そのため、日中に換気できない、洗濯の部屋干し臭が気になる、といった新たな消臭ニーズがライフスタイルの変化に伴い発生しています。

出典:平成27年国勢調査/調査の結果 2-7 結婚 -結婚,共働きの状況は?- 総務省統計局

出典:平成27年国勢調査/調査の結果 2-7 結婚 -結婚,共働きの状況は?- 総務省統計局

時代の変化とともに無香へのニーズが広がりを見せる中で、「無香空間™」は着実に支持を集め、その存在感を高めています。

III.これからの「無香空間™」

昨今の住宅は、昔の古き良き家が減り、新しくきれいに進化した家が増えてきています。

そのきれいな家を、悪臭のない「清潔」で「シンプル」な空間に保ちたい人々も増加しています。こういった背景の中で、ニオイの気になる場所に置くことで、きちんと悪臭を消して空気をきれいにする「無香空間™」は、現代の暮らしとマッチした商品なのだと感じます。

愛用者は「無香空間™」のことを「縁の下の力持ち」という言葉で表現します。見た目は決して主張しないけれど、そこにあるだけでしっかりと嫌なニオイを消し、お部屋を快適な空間にしてくれることから、そのような表現をしてくださっています。

お客様が「無香空間™」に感じてくださっているこの価値をブレることなく守り、これからも香りでごまかさない「無香空間™」で、お客様に気持ちのいい空間を感じてもらい、快適な暮らしを提供することをお約束したいと思います。

そして、この先も「無香空間™」から、お客様の“あったらいいな”をカタチにした新製品をお届けしていきます。

山下直子

日用品事業部マーケティング部
「無香空間™」ブランドマネージャー
山下直子

-APPENDIX- 「無香空間™」の秘密

その1:香りがない強み

2000年代後半に柔軟剤などから起こった「香りブーム」は、その裏側では強い香りを不快に感じる人の存在を浮かび上がらせました。“香“害という言葉も生み出されるなど、香りが苦手な人もいることがクローズアップされています。
そのような背景もあり、多くの人が利用するオフィスや商業施設などでは、香りの好き嫌いの問題が生じない「無香空間™」が選ばれています。

また、近年多発する災害の避難所へも、「無香空間™」は支援物資として届けられています。

カーシェアリングで使用されている「無香空間™」ミスト

カーシェアリングで使用されている
「無香空間™」ミスト

ホテルで使用されている「無香空間™」ミスト

ホテルで使用されている「無香空間™」ミスト

BtoB事業の事例

その2:「大容量」&「詰め替え用」が人気

「無香空間™」は、内容量315gの「レギュラー」に加えて、容量2倍の630gの「特大」や、業務用としても用いられている大容量1800gの「ドでか」をラインナップ。大容量化を求めるお客様の声に応えています。

「大容量」&「詰め替え用」が人気

さまざまな悪臭に効果がある「無香空間™」は、お家の色々な場所で使用できます。そのため、愛用者ほど使用箇所が多く、「詰め替え用」が人気です。

使い方ワンポイント 気になるニオイの近くに設置すると効果的!

使い方ワンポイント 気になるニオイの近くに設置すると効果的!

その3:容器形状

「無香空間™」容器のスリットは、よく見ると斜めになっています。これは、空気の流れをイメージできるようにとの細かなこだわりで、開発担当者が、なんと「百葉箱」から着想を得てできあがった形状です。

容器形状

その4:売上拡大

世の中の「無香」ニーズの拡大にあわせて、「無香空間™」の売り上げは、この10年で倍増。
これからも生活者のニーズに応え続けていきます。

売上拡大

以上

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