~更年期脂肪を落とす鍵は「女性ホルモン」にあり~
女性ホルモンに着目した漢方薬研究で優秀発表賞を受賞!
小林製薬株式会社(本社:大阪市、社長:小林章浩)は、近畿大学 薬学総合研究所(森川敏生教授)との共同研究の下、肥満症に用いられる漢方薬「防已黄耆湯」と「大柴胡湯」に女性ホルモン様作用があることを発見し、これらの漢方が更年期女性の肥満を再現した試験で効果を発揮することを確認しました。本研究成果は2020年8月29日~30日に開催された『第37回和漢医薬学会学術大会』において発表し、「優秀発表賞」を受賞しましたのでご報告いたします。
受賞研究
「防已黄耆湯」および「大柴胡湯」の女性ホルモン調節作用
受賞の概要
女性は40歳を過ぎた頃から、それまでの年代と比べ痩せにくく、太りやすくなります。年齢とともに脂質や水分の代謝が低下すること以外に、エストロゲンなどの女性ホルモンの減少も一因とされています。漢方薬の「防已黄耆湯」と「大柴胡湯」は、更年期女性の肥満症に効果があることが確認されていますが、これまで女性ホルモンの調節作用に着目した研究はありませんでした。
本受賞は、「防已黄耆湯」と「大柴胡湯」による女性ホルモンの調節作用を発見したことと、更年期モデルマウスに対する抗肥満作用を確認したことによるものです。
研究の概要
- 1.更年期は女性ホルモン量が減少し、体重が増加しやすい。
- 2.「防已黄耆湯」と「大柴胡湯」は、女性ホルモン様作用を示す。
- 3.「防已黄耆湯」と「大柴胡湯」は、更年期の肥満を改善する。
今回の研究結果から、「防已黄耆湯」や「大柴胡湯」はホルモンバランスの乱れた体を調節することなどにより、更年期女性の肥満症の改善や健康管理に役立つものと考えられます。
受賞者
近畿大学 薬学総合研究所 羅 鳳琳、小林製薬株式会社 ヘルスケア事業部 研究開発部 橋本 統星ほか
発表タイトル:防已黄耆湯および大柴胡湯の女性ホルモン調節作用
研究結果
1.更年期は女性ホルモン量が減少し、体重が増加しやすい。(図1)
女性の更年期を再現した卵巣摘出マウスを用いて、血中の女性ホルモン量や体重変化を評価したところ、女性ホルモンの減少に伴い、体重が増加することが確認できました。

2.「防已黄耆湯」と「大柴胡湯」は、女性ホルモン様作用を示す。
エストロゲンレセプター陽性細胞MCF-7を用いた実験によって、「防已黄耆湯」と「大柴胡湯」のどちらもエストロゲン様作用(女性ホルモン様作用)を示すことが確認されました。(図2)

3.防已黄耆湯と大柴胡湯は、更年期の肥満を改善する。
女性の更年期を再現した卵巣摘出マウスに「防已黄耆湯」や「大柴胡湯」のエキスを混ぜた高カロリー食を与えたところ、体重増加や脂肪蓄積を抑制し、抗肥満効果を示すことが確認されました。

共同研究者コメント
【用語解説】
- ◯優秀発表賞:
- 本賞は、発表演題を対象に学会審査員による厳正な審査の結果、授与されるものです。また本学会において、「大柴胡湯」に含まれる生薬の中性脂肪の蓄積を抑制する成分を特定した研究成果の発表※も行い、こちらも優秀発表賞を受賞しております。
※受賞研究:オウゴンに含有されるフラボノイド成分の中性脂肪蓄積抑制作用
近畿大学 薬学総合研究所 近藤 衷、小林製薬株式会社 ヘルスケア事業部 研究開発部 赤木淳二ほか
- ◯防已黄耆湯:
-
ホルモン変化などで落ちた水分代謝を上げる漢方薬で、むくみや脂肪に有効です。
- <効能・効果>
- 体力中等度以下で、疲れやすく、汗のかきやすい傾向があるものの次の諸症:肥満に伴う関節の腫れや痛み、むくみ、多汗症、肥満症(筋肉にしまりのない、いわゆる水ぶとり)
- ◯大柴胡湯:
-
ホルモン変化などで落ちた脂質代謝を上げる漢方薬で、便秘や脂肪に有効です。
- <効能・効果>
- 体力が充実して、脇腹からみぞおちあたりにかけて苦しく、便秘の傾向があるものの次の諸症:胃炎、常習便秘、高血圧や肥満に伴う肩こり・頭痛・便秘、神経症、肥満症
- ◯エストラジオール:
- 女性ホルモンの一種で、脂質の代謝にも作用します。
- ◯エストロゲンレセプター陽性細胞:
- 女性ホルモンの一種のエストロゲンが結合する受容体を持った細胞のことです。
近畿大学 薬学総合研究所
森川敏生 教授
女性ホルモンは女性の心身の健康に影響するため、今回の研究で「大柴胡湯」と「防已黄耆湯」に女性ホルモンの働きを補う「女性ホルモン様作用」があることを発見できたのは、非常に価値のある研究成果です。
これらの漢方は更年期だけでなく、女性ホルモンのバランスが乱れる産後や閉経後などの健康管理にも役立つ可能性があります。また漢方薬は、同じ処方でも使用する生薬の見た目や刻み方、抽出の仕方によっても成分量が大きく異なるため、女性ホルモンが原因の肥満を対処するには、女性ホルモンにこだわった製法で作られた漢方薬を選ぶことも大切です。今後も女性の健康維持に役立つよう、漢方薬についてさらなる研究を行っていきます。