リスクマネジメント

体制

リスクの管理

当社は、2024年12月期に発生した紅麹関連製品の回収事案(以下「本件事案」といいます)を受けて、2024年7月23日付ニュースリリース「事実検証委員会の調査報告を踏まえた取締役会の総括について」に記載のとおり、本件事案における一連の当社対応に関する調査報告書を事実検証委員会より受領し、2024年9月17日付ニュースリリース「再発防止策の策定に関するお知らせ」に記載のとおり、同報告書における指摘事項を踏まえ、再発防止策を策定しました。この再発防止策には、内部統制システムやリスクマネジメント体制の見直しに関する内容が含まれており、これに基づき、現在、改善を進めています。

具体的には、リスク管理委員会を含め関連する会議体を再整理し、2025年2月に「リスク・コンプライアンス専門委員会」を新設しました。同委員会では、従来のリスク管理委員会より開催頻度を増やし、各部門が抱えるリスク情報を集約し対応を検討することに加え、リスクの網羅的な把握と評価、対応の優先順位の検討、対策案の立案と実行に対する監督などをより強化していくこととしています。

また、同委員会での検討結果は執行役員を中心とした経営会議に上程した上で、取締役会に報告を行います。このほかに、目前で発生している顕在化したクライシスに関しては、顕在化とともに速やかに、社長を責任者とする「危機管理本部」や「品質安全緊急会議」を立ち上げ、スピーディに対応を図る体制を取っています。また、「危機管理本部」及び「品質安全緊急会議」を設置すべき情報を得た場合のほか、経営に重大な影響を与える蓋然性が高い情報を得た場合、部門長または担当役員から社長への報告、担当役員または社長から取締役会への報告を速やかに行うこととしております。

取り組み

事業等のリスク
主要なリスク リスクの概要 主な対応策の実施状況
(1) 事業環境のリスク
  • お客様のニーズの急激な変化
  • 競合他社の新製品発売、得意先の統合による価格交渉力低下等の競争環境の変化
  • お客様のニーズを捉えた新製品の開発
  • 環境変化を捉えた既存品の戦略策定
  • 多種多様な製品ラインナップによる影響の低減
(2) 積極的に新製品を投入するビジネスモデルのリスク
  • 新製品の発売品目数の減少
  • 競合参入による発売時の競争激化
  • 全従業員対象の提案制度によるアイデア創出
  • 新製品ポートフォリオ活用による発売品目の確保
(3) 天候不順、気候変動による需要変動のリスク
  • 季節性の強い製品の売上減少
  • 温室効果ガス削減の潮流に伴う炭素税の負荷
  • エシカル意識の高まりによる需要低減
  • 規制強化に対応できない、温室効果ガス削減目標を達成できない場合の、レピュテーションおよび社会的信用の低下
  • 気温に左右されにくいヘルスケア領域でのカイロの製品開発
  • 各種データ活用による出荷調整
  • サステナビリティ委員会の環境推進会議による中長期のリスク対策の検討
  • 温室効果ガスに関して、製品カテゴリーごとに排出量の多い製品の削減施策を検討
  • サプライヤー様との温室効果ガス排出量削減に向けたエンゲージメント
(4) 海外事業のリスク
  • 各国の経済成長の鈍化や規制の変更による投資回収効率の低下
  • 為替レートの大幅な変動
  • 海外現地法人の社長からの状況報告
  • 段階的・合理的な投資判断と投資計画の見直しによる投資回収リスク低減
  • 主要通貨レートのモニタリング
(5) 事業買収・提携のリスク
  • 想定外の事象や環境変化による不首尾
  • のれんや無形資産の減損
  • 精緻なデュ―・ディリジェンス(買収監査)
  • 成長機会と残存リスクを議論した上での投資判断
  • 外部専門家へのヒアリングを通じた課題抽出や専門的知識の習得
(6) 人的資本確保・活用のリスク
  • 退職者の増加
  • 品質体制強化に必要な人材獲得や人材開発の遅延
  • 社長によるワークショップや従業員との1on1ミーティングなどを通した、従業員の声の受け止めと組織課題の解決
  • 品質体制強化に必要な人材の獲得を優先
  • 必要となるスキルの明確化、そのための教育プランの再設計、人事ローテーション等の人材配置方針の再設定などの人材開発に関する取り組み
(7) 製品安全性のリスク
  • 設計不良
  • 品質不良
  • 副作用報告への対応の誤り
  • 品質監査の専門部門(品質安全保証本部)によるリスク低減の取り組み
  • 紅麹事案の再発防止策を通じた、品質・安全に関する意識改革と体制強化
(8) 製品原材料調達のリスク
  • 為替相場の変動による調達コスト増大
  • 原油価格の急騰等による原材料価格の上昇
  • 原材料調達停止時の生産・流通停滞による市場への製品供給阻害
  • サプライチェーンでの環境や人権への悪影響
  • 事業継続計画(BCP)の策定
  • 売上高上位の品目を中心に、原材料を複数の取引先から購入
  • 「調達方針説明会」でのCSR調達方針の説明
  • 取引先への人権リスク評価
(9) 法的規制等のリスク
  • 法規の変更による製品の開発中止、販売中止
  • 輸出入の規制変更等による売上変動
  • 品質安全保証本部を中心とした情報収集と迅速な対応
  • 製品の開発・製造に関連する法規を専門的に扱う部門の新設
(10) 情報セキュリティ関連のリスク
  • 個人情報漏洩による補償と信用失墜
  • サイバー攻撃による企業秘密の流出と事業活動の一時中断
  • 個人情報管理台帳での管理
  • 情報セキュリティの対応レベルの評価
  • 重要なデジタルデータの遠隔地サーバでのバックアップ
(11) コンプライアンス関連のリスク
  • 当社グループ、またはその従業員による重大なコンプライアンス違反
  • 従業員および社外取引先担当者対象のコンプライアンスアンケート
  • コンプライアンス問題の専用受付窓口(従業員相談室)の設置
  • インテグリティ経営の推進
(12) 知的財産、及び訴訟関連のリスク
  • 知的財産権の管理コストの増大
  • 知的財産権に関する第三者による侵害
  • 当社の知的財産権侵害による補償と信用失墜
  • 訴訟
  • 知的財産権の侵害、非侵害のチェック
  • デジタル技術の活用による知財管理コストの抑制
  • 製品の開発段階における積極的な知的財産権の創出と戦略的出願
  • 取引開始時の契約条件の精査と明確化、取引先との丁寧な協議、法令遵守体制の強化
(13) 自然災害によるリスク
  • 自然災害発生による業務停止・遅延、資産喪失、人的被害等の発生
  • 事業継続計画(BCP)の策定
  • 南海トラフ地震を中心とした危機管理体制の構築
  • 従業員の安否確認訓練
(14) レピュテーションに関するリスク
  • 広告に関するSNS等における批判的評価
  • 品質安全保証本部による法的・倫理的視点での広告チェック
  • リスク認知時の関係部門での協議
(15) 偶発債務のリスク
  • 当社製品の回収、企業様向け紅麹原料の回収、健康被害にあわれたお客様への補償による債務の発生
  • 合理的に見積可能な範囲での引当金の計上

BCP(事業継続計画)

当社グループでは、東日本大震災の経験を踏まえ、BCP(事業継続計画)を策定しました。大規模地震、水害などの自然災害や地政学リスクの顕在化等によって予期せぬ緊急事態に遭遇した場合、重要業務に対する被害を最小限にとどめ、最低限の事業活動の継続、可能な限り短期間に復旧を行うことを目的としたものです。業務プロセスを見直し、緊急事態の際の各事業のリスクの大きさ、優先して継続・復旧すべき事業を定めています。

  • BCP(Business Continuity Plan)
    さまざまなリスクによって生じる事業活動の中断に対して、重要な業務・機能を継続する、あるいは可能な限り短時間で再開するよう事前に取り決める手順。