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2018年7月吉日

紅麹菌の伝統発酵法における
健康成分の変化を世界で初めて解明
〜古来から伝わる赤い麹菌の活用に進展〜
-2018年6月30日 発酵と酵素の機能食品研究会 第3回 定期大会(福岡市)にて発表-

小林製薬株式会社(本社:大阪市、社長:小林章浩)は、2016年6月に紅麹事業をグンゼ株式会社から譲り受け、伝統的発酵法により製造した紅麹を用いて、BtoB事業、機能性の研究、新製品開発に取り組んでおります。今回、国内唯一の固体発酵法により生産される紅麹の発酵過程における形態・色、機能性成分、色素成分等の変化を世界で初めて解明し、2018年6月30日に福岡市で開催された「発酵と酵素の機能食品研究会 第3回 定期大会」において発表いたしました。

紅麹は米などの穀類にモナスカス属糸状菌(醸造用カビの一種)を繁殖させた鮮紅色の麹で、食用色素として広く利用されています。また、昔から油の多い中華料理のお供に欠かせない紹興酒や、沖縄で滋養食として親しまれる豆腐ようの製造に使われています。弊社では薬膳料理として長い食経験をもつ紅麹菌の伝統的固体発酵法による大量培養に世界に先駆けて成功し、その健康成分等の有用性に着目した研究を進めてまいりました。この度、43日間にわたって紅麹の発酵過程をつぶさに追いかけ、研究を進めた結果、以下の研究成果が得られました。

試験結果① 外観の変化43日かけて白い米が徐々に赤く変化していく様子を画像として収めることができました。

試験結果② 成分の変化代表的健康成分である「モナコリンK」、健康アミノ酸「GABA」、「モナスカミック酸」、健康色素成分「モナスシン」が同時に作られることが分かりました。

考察上記各種成分は常に一定量が作られているのではなく、紅麹菌が外敵に対抗したり、自身の栄養源として用いるため、作る時期・量を調整している可能性が示唆されました。

(参考図)紅麹菌の培養開始時と培養14日目の色変化

  • 培養開始時培養開始時
  • 培養14日目培養14日目

本研究成果より、全身のさまざまな健康に有益に寄与することが示唆されている紅麹菌の代謝成分の発酵における変動が明らかとなりました。弊社は今後とも、紅麹菌が持つ代謝成分、健康効果の有用研究を進め、その成果を社会に還元してまいります。

紅麹固体培養プロセスにおける有用物質生産の経時的分析

■背景
紅麹は米などの穀類にMonascus属糸状菌を繁殖させた鮮紅色の麹です。食品分野では、液体培養法で製造された紅麹色素が世界で広く利用されています。一方、中国・台湾では、伝統的な固体培養法により製造された紅麹が酒類醸造、着色着香料、滋養食・薬膳料理として利用されてきました。また、国内でも、沖縄において豆腐ようとして独自の食文化に利用されてきました。
本研究では、食品原料としての紅麹の機能性および品質確保を目的として、紅麹米の色や菌糸などの形態変化、機能性成分や色素成分などの代謝生成物の経時的分析を行いました。

■試験方法
健康食品原料として国内外で最も利用されている紅麹菌Monascus pilosusを試験に用いました。蒸気滅菌した蒸米にモナコリンKを高生産するMonascus pilosus NITE BP-412株を接種し、温度30℃、初期水分率42%で固体培養を開始しました。培養温度は初期4日間を30℃、4日目以降を22℃として計43日間培養を行い、時間経過とともにサンプリングしました。
モナコリンK、GABA、モナスカミック酸、色素成分(モナスシン、モナスシノール、ルブロパンクタミン)を分析対象としました。分析に供する培養サンプルは経時的に採取した後、メタノール抽出することで調製し、LC-MS分析に供しました。モナコリンKに関しては韓国FDA法に従い、調製・分析を実施しました。

試験結果① 外観の変化
紅麹固体発酵における形態、赤化の可視化

発酵の時間経過に伴う形態、赤化の様子

発酵の時間経過に伴う形態、赤化の様子

試験結果② 成分の変化
紅麹固体培養による代謝生成物の経時的可視化

紅麹の代表的健康成分モナコリンKの経時的可視化(含量)

紅麹の代表的健康成分モナコリンKの経時的可視化(含量)

■結果
・モナコリンKは培養経過と共に生成し、培養中期から後期にかけて蓄積していく。

機能性アミノ酸類の経時的可視化(相対含量)

機能性アミノ酸類の経時的可視化(相対含量)

■結果
・両アミノ酸とも培養経過と共に生成し、培養中期に最大濃度に達する。
・GABAは培養後期にかけて減少するが、モノスカミック酸はほぼ維持される。

色素類の経時的可視化(相対含量)

色素類の経時的可視化(相対含量)

■結果
・モナスシンとモナスシノールは培養経過と共に生成
・モナスシンは中期に最大濃度に到達後、徐々に減少、一方、モナスシノールは中期以降、維持される。
・ルブロパンクタミンは培養中期から生成し、後期に最大濃度に達し維持される。

■考察
・紅麹菌は、生育前半ではモナスカミック酸、生育後半では紅麹における代表的な健康成分であるモナコリンKを主に利用して外敵に対抗することが示唆されました。
・紅麹菌は、栄養成分が欠乏する生育後半では機能性アミノ酸のGABAを窒素源として利用することが示唆されました。
・モナスカミック酸も中期以降は若干減少するので、窒素源として利用される可能性があるものの、外敵に対抗するため、その窒素源としての利用は限られていると考えられます。

■まとめ
本研究成果より、全身のさまざまな健康に有益に寄与することが示唆されている紅麹菌の代謝成分の発酵における変動が世界で初めて明らかとなりました。これらの知見は、紅麹菌の伝統的な固体発酵法をさらに改良、発展させる端緒であり、今後のより有益な紅麹原料の開発につながる研究成果であると考えられます。

以上