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小林製薬の持続性抗菌剤「KOBA-GUARD」
~新事業立ち上げの裏側~
一般生活者向けに製品を販売している小林製薬が、B to B事業として手掛ける「KOBA-GUARD(コバガード)」。新規事業として立ち上げから、ビジネスとして軌道にのせるまでの裏側をご紹介します。
持続性抗菌剤「KOBA-GUARD」
■誕生秘話
「KOBA-GUARD」は、液体タイプの持続性抗菌剤で、その基礎となる技術は、アメリカの原子力潜水艦の衛生管理に活用されてきたものです。昔の潜水艦内は、水中の閉ざされた高湿環境で、カビなどの繁殖による船員への健康被害は大きな問題であったと言われています。その過酷な環境で微生物の増殖をコントロールするために生まれたのが「KOBA-GUARD」のベースとなる抗菌加工技術でした。
この抗菌加工技術について知人より紹介された小林製薬の担当者は、半信半疑のまま、よくカビが生える自宅の洗面所に塗布してみたところ、その高い効果と持続性に驚きを隠せませんでした。抗菌加工技術の効力を確信した小林製薬は、2016年に、この技術を活用した新事業の検討を開始しました。
抗菌作用による一般的な効果
①菌による臭いを防ぐ
②菌の繁殖による汚れを防ぐ
③感染症を防ぐ
④腐敗を防ぐ
■製品特長
多様な素材に抗菌効果を付与
「KOBA-GUARD」が多様な素材に加工できるのは、「シランカップリング」技術によるもの。有用成分同士がまるで手をつなぐようにくっつくため、通常では抗菌剤が付きにくい繊維や樹脂、金属など多様な素材に加工できます。

様々な細菌・カビ・ウイルスに対して効果を発揮
大腸菌(O-157)やサルモネラ菌、黄色ブドウ球菌など様々な細菌に加えて、カビやインフルエンザウイルスなどに対しても効果を発揮します。
肌着にも活用実績がある安全性
赤ちゃんの肌を想定した、薄い皮ふモデルを用いた皮ふ刺激試験でも良好な結果を示し、肌着などの直接肌に触れる製品にも使用できます。
新規事業の立ち上げの舞台裏
■新たなチャレンジ、「抗菌技術のB to B」事業
小林製薬は、一般生活者向けの製品をドラッグストアなどを通して販売する「B to C 」事業を得意としています。他方で、様々な素材を加工できる「KOBA-GUARD」は、自社製品にとどまらず、他社製品が抱える課題を解決できる可能性があることから、他社にも技術提供することで、より多くの「あったらいいなをカタチに」できるのではないかと感じました。そこで、小林製薬としてそれまでほとんど経験がなかった「 B to B 」事業に踏みこむという、新たなチャレンジが始まりました。
■「アパレル」事業との協業
初の抗菌技術のB to B事業となる「KOBA-GUARD」では、食品工場や温泉施設など様々な事業の可能性が検討されましたが、長らく暗中模索の日々が続きました。
そんな折、商社から、株式会社しまむら向けに、「KOBA-GUARDの技術を活用したアパレル製品を作りたい」というお申し出があり、アパレル業界との初タッグが決まりました。一般生活者の認知度が高い「小林製薬」というブランドと、高い効果と安全性を持つ「KOBA-GUARD」の抗菌技術を期待されてのことでした。
しかし、いざ肌着の共同開発が始まると、「うまく繊維に加工できない」「肌触りが変わる」などの課題にも直面し、試作を幾度となく繰り返す日々が待っていました。さらに、「自社が製造販売していない製品に、社名をつける」という前例のない試みに、社内外の法務手続きも困難を極めました。
協業パートナーとの二人三脚で、こうした様々な課題を乗り越え続け、提案を受けてからちょうど1年後の2018年2月に、「KOBA-GUARD」最初の活用製品として「しまむらニオわなインナー」が発売されることになりました。
「しまむら ニオわなインナー」の発売をきっかけとし、アパレル事業における「KOBA-GUARD」の活用が徐々に広がり始め、その後もタオル・ワイシャツ・インソールなど様々な製品が開発されることとなりました。
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本製品は現在、販売しておりません。
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販売終了している製品もございます。
小林製薬ならではの「価値」創造
■新たな戦略の必要性
小林製薬は、ブルーレットや消臭元、熱さまシート、アイボンなど、それまで誰も取り組んでいなかった「生活者の小さなお困りごと」を解決する製品を開発する「小さな池の大きな魚」戦略をとってきました。
しかし、すでに世の中に多くの抗菌剤が存在する中で「後発メーカー」の立場となる「KOBA-GUARD」事業では、これまでの戦略が通用しないのは明白でした。
小林製薬の抗菌剤だからこそ提供できる「価値」は何かを、改めて考える必要がありました。
「小さな池の大きな魚」戦略
小林製薬は「ニッチマーケティング」を得意とし、その戦略を「小さな池の大きな魚」と表現しています。まだ誰も見つけていないニーズを 見つけ、そのニーズを満たす製品をいち早く開発することで自ら市場(池)を開拓。
規模は小さいながらもライバルの少ない環境で圧倒的なシェア(魚)を獲得し、競合との戦いを優位に進めるという戦略です。

■協業パートナーからの気付き
活動を続ける中で気付きをいただけたのは、「い草」製品を製造販売する株式会社イケヒコ・コーポレーション(以下、イケヒコ)との協業でした。
イケヒコが長年抱える「い草」の菌に対する課題に両社で取り組むこととなりました。しかし、開発当初、思ったような結果が得られない状況が続きます。そこで、「KOBA-GUARD」の技術者は、「KOBA-GUARD」に熱を加えることで、モノとモノをつなげるシランカップリング反応が進み、「KOBA-GUARD」の有効成分がより固着するようになるのではないかという可能性を考えました。
「はたして、い草に熱をかけることが受け入れられるだろうか?」という不安を抱きつつも、イケヒコに加熱加工の提案をしたところ、い草のプロのノウハウを活用して、うまく製造工程に組み込んでもらった結果、期待通りの効果を実現することができ、「KOBA-GUARD」加工が施された「お手入れ簡単い草ラグ」が誕生しました。
小林製薬は、イケヒコとの活動を通して、世の中には多くの抗菌剤があるものの、これらを最適な条件で“使いこなす”ことにひとつの大きなハードルがあることを感じました。
小林製薬には、これまでの幅広い製品開発経験により、様々な素材への知見が蓄積されています。その知見を活かしながら、トラブルがあれば共に解決をし、最後までパートナーと伴走することが、当社の提供する価値であり、強みになることに気付いたのです。
これからの「KOBA-GUARD」

■まもる、つづく、つながる
小林製薬では、「KOBA-GUARD」のブランドスローガンに、「まもる、つづく、つながる」を掲げています。
「まもる、つづく」は「KOBA-GUARD」の持つ抗菌効果と持続性を、「つながる」はシランカップリング技術による付着性を表しています。
そして、これからも様々なパートナー企業と「つながり」ながら、公衆衛生に始まり、食品や飲料水、資源等の社会課題解決の一翼を担いたいという想いも込められています。
■さらなる「つながり」を目指して
2020年3月、小林製薬は「KOBA-GUARD」事業をきっかけに得た技術を活かして、JAXA※・日本パーカライジング株式会社とともに抗菌剤固着技術の共同研究開発を開始しました。
本研究で開発する技術を用いて、地上のお困りごとの解決に貢献するとともに、将来的には宇宙船に活用されることを夢見て、さらなる技術の進化に取り組んでまいります。
※ 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
~「KOBA-GUARD」のご活用事例~(2021年5月時点)
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婦人・紳士肌着
株式会社しまむら -
じめじめ足スッキリ5本指靴下
レンフロ・ジャパン株式会社 -
空気清浄機の加湿フィルター
ダイキン工業株式会社 -
い草ラグ
株式会社イケヒコ・コーポレーション -
電気毛布
株式会社山善 -
制菌i-shirt
はるやま商事株式会社 -
ワーキングウェア
株式会社ディック・コーポレーション
KOBA-GUARDブランドサイト

以上