ニュースリリース

レポート

“紅麹菌”による米粒内での
有用成分 生成過程の可視化に成功!
- 2019年9月17日 第71回 日本生物工学会 (岡山市) にて発表 -

小林製薬株式会社(本社:大阪市、社長:小林章浩)は、2016年にグンゼ株式会社より、食品素材“紅麹”に関する製造・販売事業を譲り受けました。以来、国内唯一の伝統的発酵法により製造した“紅麹”の機能研究、新製品開発、BtoB事業に取り組んでおります。今回弊社は、大阪大学大学院工学研究科 新間秀一准教授との研究において、“紅麹菌”が有用成分(モナコリンK)を米粒の中で「いつ」・「どこで」・「どのくらい」発酵により生成するかを世界で初めて明らかにし、2019年9月17日に岡山市で開催された「第71回 日本生物工学会大会」において発表いたしました。

“紅麹”は米などの穀類にMonascus属糸状菌を繁殖させた鮮紅色の麹で、食用色素や健康食品として広く利用されています。また、昔から油の多い中華料理に欠かせない紹興酒や、沖縄で滋養食として親しまれる豆腐ようの製造に使われています。弊社では料理として長い食経験をもつ“紅麹”の健康効果に着目し、“紅麹菌”の伝統的固体発酵法による大量培養に世界に先駆けて成功するなど、研究を進めてまいりました。この度、43日間にわたる紅麹の発酵過程を最先端の分析技術である質量顕微鏡を用い分析することで、以下の成果が得られました。

成果まとめ
  1. ?.“紅麹米”における有用成分の可視化技術の確立
  2. ?.“紅麹米”の中で有用成分が「いつ」・「どこで」・「どのくらい」作られるかを解明

図1:有用成分の醗酵期間別分布推移

図1:有用成分の醗酵期間別分布推移

本研究成果より、健康に有益に寄与することが示唆されている“紅麹”の代謝成分の発酵における変動が明らかになりました。弊社は今後とも“紅麹”が持つ有用成分、新たな健康効果の研究を進め、その成果を社会に還元してまいります。

研究成果

■ 実験手順(図2)

  1. (1) 切片製作:“紅麹米”を10%ゼラチンで固め、スライス
  2. (2) サンプル作成:分析のため紅麹米にイオン化補助剤を噴霧
  3. (3) 分析:用意したサンプルをイメージング質量顕微鏡(iMScope TRIO, 島津製作所)で分析

図2:実験手順

図2:実験手順

表1

?.“紅麹米”における有用成分の可視化技術の確立

発酵43日目の“紅麹米”に存在する有用成分(モナコリンK)の分析にあたり、固定する基材を10%ゼラチン、切片の厚みを40µmとすることでイメージング像の取得に成功した(表1)。

?.“紅麹米”の中で有用成分が「いつ」・「どこで」・「どのくらい」作られるかを解明

“紅麹”の発酵過程43日間のうち、発酵初期(1日目)、発酵中期(23日目)、発酵後期(43日目)において有用成分(モナコリンK)の分析を行った。結果として、モナコリンKが米全体において徐々に増加していくことが明らかとなった(図1)。

醗酵が進むにつれ、有用成分であるモナコリンKは内部蓄積していくことが明らかになりました。この結果から菌体をより内部に浸潤させることで、モナコリンKの生産性を向上させることができるということが考えられます。今回の発見は、今後のより有益な“紅麹”原料の開発につながる研究成果であると考えられます。

【用語解説】
○ モナコリンK:肝臓内でコレステロールを合成する酵素の働きを抑える有用成分
○ 相対強度:Day43日目のイメージング画像中のモナコリンKの強度のうち、最も大きな強度を100%として各ポイントの相対強度で比較を行った
○ イオン化補助剤:対象サンプル中の目的の化合物のイオン化効率を高める試薬
○ 質量顕微鏡:顕微鏡により観察された光学像と質量分析により測定された分子の分布を重ね合わせて解析できる分析装置

【2019年 第71回 日本生物工学会】
○演題:質量分析イメージング法を用いた紅麹における有用二次代謝物の可視化技術の確立
○南 牧歩1, 比嘉 悠貴2, 福崎 英一郎1, 新間 秀一11阪大院・工・生命先端, 2小林製薬株式会社)