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レポート

~シワ・たるみケアに新たな選択肢!~ セラミドの真皮におけるコラーゲン等の生成メカニズムを発見!

小林製薬株式会社(本社:大阪市、社長:小林章浩)は、ヒト型セラミド1,2,3(以下、「セラミド」)を用いたスキンケア技術の開発に長年取り組んできました。今回、セラミドの皮膚での作用機序について研究した結果、真皮まで浸透したセラミドが細胞を活性化させる成長因子に働きかけコラーゲン等を増加させることで、シワ・たるみを抑制するメカニズムを発見いたしました。本研究成果は2020年10月31日に横浜市で開催された「第31回 IFSCC Congress」で発表いたしました。

研究の背景

セラミドは角質細胞の間を満たす細胞間脂質の主成分であり、水分蒸散を抑えて肌の潤いを守るバリア機能物質として非常に重要な役割を果たしています。当社は、化粧品の保湿成分として知られているセラミド混合物を長年にわたり研究し、「優れた水分蒸散抑制能をもつこと*」や「肌のセラミド産生を促進する効果をもつこと**」、「肌のたるみを改善する効果をもつこと***」、「セラミド混合物とL-カルニチンを同時に肌供給することで、バリア機能構造を効率的に構築し、水分蒸散を抑制すること****」を発表して参りました。今回の研究では、「表皮を透過したセラミドの真皮内でのシワ・たるみ抑制効果」について研究いたしました。

*「第113回日本皮膚科学会総会」、
**「第34回日本美容皮膚科学会総会・学術大会」、
***「第24回国際化粧品技術者会連盟中間大会(IFSCC 2017 Conference)」、
****「第37回日本美容皮膚科学会総会・学術大会」にて発表。

結果の概要

  • 1.セラミドは表皮を透過し、真皮まで到達した。
  • 2.ヒト真皮線維芽細胞へのセラミド添加により、成長因子(FGF・TGF-β)及び細胞外マトリクス
    (コラーゲン・フィブリリン)の遺伝子発現が促進された。
  • 3.セラミド濃度上昇に伴い、成長因子(FGF・TGF-β)及び細胞外マトリクス(コラーゲン・フィブリリン)のタンパク質産生が増加し、コラーゲン線維 及び 弾性線維の形成が促進された。
  • 4.真皮内でセラミドはTGF-β1, 2を介してコラーゲンの発現を促進した。
  • 5.真皮内でセラミドはFGF2を介してフィブリリンの発現を促進した。
    ⇒ 表皮を透過したセラミドが真皮内でコラーゲンとフィブリリンを生成するメカニズムを発見!

図1:皮膚におけるセラミドの効果イメージ

皮膚におけるセラミドの効果イメージ

図2:セラミドによる細胞外マトリックス産生増加メカニズム

セラミドによる細胞外マトリックス産生増加メカニズム

本成果は、今後の小林製薬の化粧品開発に活用してまいります。

研究結果

1.セラミドは表皮を透過し、真皮まで到達した。

  1. (1)フランツセルにセットした3D表皮モデルに高濃度セラミドを塗布し、透過性を調べた。
    セラミドはジヒドロスフィンゴシンとしてHPLCで検出された。表皮モデル透過セラミド量を測定したところ40分後には真皮に到達していることが確認できた。(図3)

◆フランツセルを用いた皮膚透過性試験法

フランツセルを用いた皮膚透過性試験法

図3:表皮モデルのセラミド透過量

表皮モデルのセラミド透過量

  1. (2)フランツセルにセットしたヒト皮膚に高濃度セラミドを塗布し浸透させた後、断面が見えるよう切片にし、抗セラミド抗体で免疫染色した。その結果、セラミドが真皮内にも広く分布していることが確認できた(図4)
    ※ヒト型セラミドを高濃度で可溶化した高浸透性セラミド可溶化製剤

図4:ヒト皮膚に浸透したセラミドの分布

ヒト皮膚に浸透したセラミドの分布

ヒト皮膚に浸透したセラミドの分布

2.ヒト真皮線維芽細胞へのセラミド添加により、細胞外マトリクス(コラーゲン・フィブリリン) 及び 細胞活性成長因子(FGF・TGF-β)などの発現が促進された。(図5)

図5:セラミド添加真皮線維芽細胞のDNAマイクロアレイ

セラミド添加真皮線維芽細胞のDNAマイクロアレイ

セラミド添加真皮線維芽細胞のDNAマイクロアレイ

3.セラミド濃度上昇に伴い、成長因子(FGF・TGF-β)及びコラーゲンのタンパク質産生が増加し、コラーゲン線維 及び 弾性線維の形成が促進された。(図6、図7)

図6:セラミド添加真皮線維芽細胞の成長因子・コラーゲンの産生促進

セラミド添加真皮線維芽細胞の成長因子・コラーゲンの産生促進

図7:真皮線維芽細胞のコラーゲン線維・弾性線維の形成促進

真皮線維芽細胞のコラーゲン線維・弾性線維の形成促進

4.真皮内でセラミドはTGF-βを介してコラーゲンの発現を促進した。(図8)
5.真皮内でセラミドはFGF2を介してフィブリリンの発現を促進した。(図8)

セラミドが成長因子(TGF-β1, TGF-β2, FGF2)を介してコラーゲンやフィブリリンの発現が増加すると推測し、セラミドを添加した線維芽細胞の成長因子の遺伝子発現をsiRNAを用いてノックダウンした。

◆ノックダウン試験のイメージ

ノックダウン試験のイメージ

図8:セラミドによるコラーゲンとフィブリリンの産生促進メカニズムの解析

セラミドによるコラーゲンとフィブリリンの産生促進メカニズムの解析

【用語解説】

  1. ○ヒト型セラミド1,2,3:天然型セラミド。ヒトの皮膚に存在するものと基本的な立体構造が同じ

  2. ◯フィブリリン:皮膚真皮の弾性線維を構成する主要成分の1つ

  3. ◯ジヒドロスフィンゴシン:セラミドを構成するスフィンゴイド塩基の一つ

  4. ◯HPLC:高速液体クロマトグラフィー

  5. ◯DNAマイクロアレイ:基板上に様々なDNAの部分配列を高密度に配置し固定したもの。サンプルから調整したcDNAを基板上のDNA配列に結合させることで、細胞内で発現している遺伝子情報を網羅的に検出出来る

  6. ◯siRNA:遺伝情報を含む成分(mRNA)を分解する小さな1本鎖RNA

  7. ○ノックダウン:特定の遺伝子の発現量を減少させる実験手法

以上

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