ニュースリリース

ニュースレター

- News Letter -
感染症対策は『のど・鼻の加湿』がポイント!
~体の防御機能を高める“湿活”のすすめ~

感染症対策 ~日常生活の中でのこまめな対策が重要~

冬になるとインフルエンザなど様々な感染症が流行し、感染症予防について意識が高まる季節です。

厚生労働省のホームページでは、新型コロナウイルス対策として、「3密の回避」「手洗い・消毒」「マスクの着用」などの基本的な感染症対策の徹底が推奨されています。

感染症対策においては、日常生活の中でのこまめな対策が重要であるとされています。特にこれから迎える本格的な冬は、空気が冷たく、そして乾燥しています。小林製薬では、そんな冬の感染症予防に役立つ情報をお届けします。

冬の乾燥と冷気が感染症対策にあたえる影響と日常生活上のポイントとは?

乾燥や冷気が感染症対策に与える影響や日常生活の中で気をつけるポイントを、東京女子医科大学 呼吸器内科学 教授 多賀谷悦子先生にお話をうかがいました。

1.なぜ冬になると風邪や感染症が流行るのか?

日本の冬は湿度が低く、気温が低いので、インフルエンザなどのウイルスにとって好都合な環境にあります。

湿度が高いと、ウイルスは空気中の水分を含んで重くなり、地面に落ちやすく、ウイルスの生存率は低下します。このため、体内に入るウイルスは減り、感染力が低下します。

湿度が低くなり乾燥すると、空気中でウイルスが水分を含みにくいため、ウイルスが浮遊している時間が長くなります。空気中のウイルスが多い状態になり、体の中に入っていきやすくなります。

また健康な状態では、ウイルス等が侵入してきても気道上皮細胞にある線毛がウイルスを外に吐き出すように働きますが、特に喘息など気管支が弱い人では、気道上皮細胞が剥がれ落ちやすく、ウイルスを排除しにくいためウイルスが体に入り込んでしまいやすくなります。そして、冷たい空気が刺激になり、症状が悪化します。

このように、乾燥して空気中の水分が少ないことに加え、冷たい空気で気道が弱っている冬は、インフルエンザなどのウイルスの活動にとっては好都合な時期といえます。

2.ウイルスは気道から体内へ ウイルスの侵入を最前線で守る線毛の働き

2.ウイルスは気道から体内へ ウイルスの侵入を最前線で守る線毛の働き

空気中のウイルスは、呼吸時に鼻や口を通って気道上皮細胞に接着し体内に侵入していきます。

気道の上皮にある線毛は、正常に働いていれば、鼻腔や気道に付着したウイルスを線毛の上にある粘液が絡め取り、15分以内にはウイルスを体外へ排出する仕組みになっています。しかし、乾燥や冷気により気道上皮が潤いを失い荒れてしまっていると、線毛の働きが弱くなり、ウイルスを外に出せなくなってしまいます。こうして、ウイルスが気道で増殖すると、炎症を起こす物質が出てきて、咳やたんなど症状が起きてしまいます。

これは花粉などにも言えることで、線毛が正常に働くことで外に排出してくれます。しかし、気道上皮が荒れていると花粉なども体外に排出する力が弱まります。

3.正常な線毛運動のカギは「潤い」

< 気道上皮細胞の線毛 >
気道上皮細胞の線毛
<健常人>       <重症喘息>

気道に入ってきたウイルスを外に排出するためには、線毛の働きが大切であり、気道上皮細胞の線毛の上にある水分と粘液で潤っていることがとても重要です。

線毛は潤っていることで粘液がウイルスを絡めとり規則正しい動きにより、排出することができますが、粘液が乾燥してしまうと線毛がダメージを受けて動きが悪くなり、ウイルスを外に排出する作用が低下して、ウイルスが気道にくっつきやすくなってしまいます。

冬の冷たく乾燥した空気は、気道上皮細胞にダメージを与え、線毛周囲の乾燥を招きます。

冬場に運動をする方や、喉や鼻の乾燥を感じやすい方、水分補給の苦手な方(特に高齢者)は気道が荒れやすい環境になっています。

感染症予防のためには、普段から水分をとるなどして、気道を乾燥から守り、正常な線毛活動ができるよう潤った状態を保つことが大事です。

4.ウイルスの侵入を防ぐだけじゃないマスクの有用性

~気道の乾燥状態が続く就寝中は、体の外から加湿し潤いを保つ工夫を~

新しい生活様式になり、マスクの着用が日常になっています。マスクを着用することのメリットは2つあり、鼻やのどをウイルスの侵入から守り、接触感染等のリスクを軽減するといった感染予防の面に加えて、呼気から出た水分によりマスクの内側の湿度や温度が保たれるため、気道を潤った状態にすることです。

マスクの使用方法では、鼻の上部までしっかりと覆うことが重要です。鼻がマスクから出ている場合、ついついウイルスがついた手で鼻を触ってしまうと、感染源になってしまう可能性があります。また、マスク内の湿度を保つためには、気密性の高いマスクがおすすめです。

特に夜寝ている間は、水分補給も出来ないので乾燥状態が続いてしまいます。無意識のうちに口呼吸になる方もいるため、その場合はさらに乾燥してしまいます。

「のどのイガイガ」や「鼻が乾く」などの現象は気道が乾燥しているサインです。

このような乾燥における対策として、就寝前には、水やイオン飲料などを飲むこと、就寝時には、口から水分が逃げることを防ぎ、外からもうるおいを与えてあげることができる加湿タイプのマスクを着用し、体の中からも外からも気道の潤いを保つことがおすすめです。
(※糖分を含むため、糖尿の方や血圧の高い方は、イオン飲料を水で薄めて飲むことを推奨します。)

ウイルスの感染予防という観点で、気道をダメージから守り正常な線毛運動ができている状態を保つことが大事です。そのためには、気道の乾燥は大敵です。ウイルスが入らないように防御することに加えて、気道を潤す、すなわち体の中からも外からも保湿するということを心がけていただきたいと思います。

多賀谷 悦子(たがや えつこ)先生

多賀谷 悦子(たがや えつこ)先生

東京女子医科大学 呼吸器内科学 教授・講座主任
日本内科学会総合内科専門医/日本呼吸器学会専門医・指導医/日本アレルギー学会専門医・指導医
日本医師会認定産業医 Best Doctors 2018-2019, 2020-2021
専門:呼吸器内科、アレルギー、喘息、気道平滑筋トーンの調節機構、肺循環
主な研究内容:気道平滑筋の制御機構、イオンチャネル、気道モデリングの病態生理、肺循環、重症喘息、肥満喘息の病態解明、COPDにおける気道分泌の機序と治療

以上

このページを共有する
Facebook
X
LINE