ニュースリリース

レポート

セージエキス及びビタミンC誘導体の新規シミ抑制メカニズムを発見
~オートファジー活性に着目し、世界初のシミ対策技術に応用~

-2023年3月25日~28日 日本薬学会 第143年会にて発表-

小林製薬株式会社(本社:大阪市、社長:小林 章浩)は、学校法人近畿大学(本部:大阪府東大阪市、理事長:世耕 弘成) 薬学総合研究所 森山博由准教授との共同研究により、セージエキスにオートファジー活性促進効果があることを発見いたしました。また、セージエキス及びビタミンC誘導体(L-アスコルビン酸 2-グルコシド)は表皮細胞に作用し、メラニン産生促進因子(GM-CSF)の発現を抑制することで、色素細胞におけるメラニン産生を抑制していることを見出しました。本研究成果は、2023年3月25日~28日に札幌で開催された「日本薬学会 第143年会」にて発表いたしました。

研究結果 ダイジェスト

  1. セージエキスに、表皮細胞におけるオートファジー活性促進効果があることを発見
  2. セージエキス及びビタミンC誘導体は、表皮細胞を介してメラニン生成を抑制
  3. セージエキス及びビタミンC誘導体は、表皮細胞から放出されるメラニン産生促進因子を抑制
  4. セージエキスとビタミンC誘導体を配合したクリームは、高いシミ抑制効果を発揮

今回発見したシミ対策アプローチ

今回発見したシミ対策アプローチ

研究の背景

シミの原因であるメラニンの生成経路はとても複雑です。紫外線があたると、表皮細胞から様々な情報伝達物質が出され、メラニン生成の命令となります。命令を受け取った色素細胞はメラニンを作り、メラニン集合体(メラノソーム)として表皮細胞に渡します。渡されたメラノソームが分解または排出をされずに表皮内に蓄積することでシミとなって現れます。このようにメラニンは様々な経路を経て作られており、どこか一ヵ所を阻害してもシミを完全には抑制できません。
当社では細胞が有する不要な物質を分解する力(オートファジー活性)に着目し、2019年にビタミンC誘導体、ホオノキ抽出液、プルーン酵素分解物の3成分が表皮内に蓄積したメラノソームを分解することを発見しており、この度、シミ抑制効果をさらに強化するため、高いオートファジー活性促進効果を有する素材の探索を行いました。

※できてしまったメラニンに着目、シミへの新アプローチ ~メラニン集合体を分解する成分を発見~(小林製薬 2019年10月)
https://www.kobayashi.co.jp/corporate/news/2019/191017_02/

研究の結果

1.セージエキスに、表皮細胞におけるオートファジー活性促進効果があることを発見

今回、84種類の植物エキスの中からオートファジー活性促進作用のある素材を探索しました。その結果、セージエキスに表皮細胞におけるオートファジー活性促進効果があることを新たに発見しました(図1)。
表皮細胞のオートファジーを促すことは、表皮の生まれ変わり(表皮分化・ターンオーバー)につながるという報告があるため、セージエキスは表皮の生まれ変わりを促し、表皮細胞に溜まった過剰なメラニンを排出できる可能性があります。

図1 セージエキスのオートファジー活性促進効果

図1 セージエキスのオートファジー活性促進効果

セージのイメージ

セージのイメージ

試験方法:
表皮細胞にセージエキスを添加し、培養した。48時間後にCyto-IDでオートファジーの過程で生成される小胞を緑蛍光に染色した。青は核(DAPI)を示す。

2.セージエキス及びビタミンC誘導体は、表皮細胞を介してメラニン生成を抑制

セージエキス及びビタミンC誘導体が表皮細胞を介してメラニン生成を抑制するのか確認しました。表皮細胞にセージエキスまたはビタミンC誘導体を添加し、色素細胞と共培養することにより、色素細胞におけるメラニン生成が抑制されました(図2)。このことから、セージエキス及びビタミンC誘導体は表皮細胞においてメラニン生成に関与する命令物質の産生を抑え、メラニン生成を防いでいることが分かりました。

図2 メラニン生成抑制試験

図2 メラニン生成抑制試験

試験方法:
色素細胞をディッシュに、表皮細胞はインサートへ播種した。表皮細胞に紫外線を照射し、セージエキスまたはビタミンC誘導体を添加して、色素細胞と共培養を行った。2日後に細胞を回収して、メラニン量の測定を行った。データは4回の独立した実験から算出した平均値±SEMによってプロットした。
*P<0.05, **P<0.01(One-way ANOVA followed by Dunnett’s test)

3.セージエキス及びビタミンC誘導体は、表皮細胞から放出されるメラニン産生促進因子を抑制

セージエキスが表皮細胞を介してメラニン生成を抑制するメカニズムを特定するため、表皮細胞の遺伝子の発現量を解析しました。その結果、メラニン生成を促す因子「CSF2」の遺伝子発現量はセージエキスによって減少し、メラニン生成を抑制する因子「IL1B」の遺伝子発現量は増加していました(図3)。興味深いことに、これらの因子はビタミンC誘導体によっても発現量が調節されており、ビタミンC誘導体の新たな作用メカニズムも発見しました。

図3 メラニン生成に関わる因子の遺伝子発現量

図3 メラニン生成に関わる因子の遺伝子発現量

図3 メラニン生成に関わる因子の遺伝子発現量

試験方法:
色素細胞をディッシュに、表皮細胞はインサートへ播種した。表皮細胞に紫外線を照射し、セージエキスまたはビタミンC誘導体を添加して、色素細胞と共培養を行った。2日後に細胞を回収して、表皮細胞における遺伝子発現量を解析した。
データは4回の独立した実験から算出した平均値±SEMによってプロットした。
*P<0.05, **P<0.01, ***P<0.001, ****P<0.0001,(One-way ANOVA followed by Dunnetts test

4.セージエキスとビタミンC誘導体を配合したクリームは、高いシミ抑制効果を発揮

セージエキスとビタミンC誘導体を配合したクリームを用いて30~50代の女性の頬部のシミへの効果を確認しました。2成分を配合したクリームをシミ部位に6週間塗布し続けた結果、使用前と比較して、シミが薄くなったことが確認できました(図4)。セージエキスとビタミンC誘導体を組み合わせることが、シミ対策に有効であることが示されました。

図4 2成分配合クリームのシミへの効果

図4 2成分配合クリームのシミへの効果

セージエキスとビタミンC誘導体を配合したクリームは、高いシミ抑制効果を発揮

※出典:2023年3月25日-28日 日本薬学会 第143年会
セッション:一般演題
・タイトル:セージエキスおよびビタミンC誘導体はケラチノサイトからのGM-CSFを抑制することでメラニン産生を減少させる
 Salvia officinalis extracts suppress melanogenesis through inhibition of keratinocyte-derived growth factor GM-CSF
・後藤 彩文1、森山 麻里子1、三宅 佑有子1、吉田 郁代2、恒松 希2、久保 嘉一2、森山 博由1
1:近畿大学薬学総合研究所、2:小林製薬(株)

試験方法:
30~59歳女性(n=18)の頬シミ部2か所ならびに非シミ部にセージエキスおよびビタミンC誘導体を配合したクリームを1日2回、毎日塗布した。6週間後にVISIA evolutionで顔の写真を撮影し、メグザメーターで肌のメラニン量を測定した。データはシミ部のメラニン量から非シミ部のメラニン量を減算したもの(Δメラニン量)の平均値±SDで示す。
**P<0.01(One-way ANOVA followed by Bonferroni’s test)

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